3.5 カスタム ディメンションとカスタム指標
この章で学ぶこと
- カスタム ディメンションとカスタム指標を登録する理由
- イベント スコープのカスタム ディメンションの登録
- ユーザー スコープのカスタム ディメンションの登録
- アイテム スコープのカスタム ディメンションの登録
- 登録数の上限と、何を優先して登録すべきか
登録が必要な理由
第 2 章で、カスタム パラメータは「送っただけでは標準レポートや探索で使えない」と説明しました。GA4 は、送られてきたすべてのパラメータをレポート用に集計しているわけではなく、登録されたものだけ を分析軸や数値として使えるようにしています。
| 登録の種類 | 使い道 | 例 |
|---|---|---|
| カスタム ディメンション | 分析の切り口(文字列の値)として使う | 記事カテゴリ、著者、ボタン名、会員ランク |
| カスタム指標 | 数値として合計・平均を計算する | 記事の文字数、獲得ポイント、動画の再生秒数 |
たとえば、cta_click イベントに cta_name パラメータを付けて送っている場合、cta_name をカスタム ディメンションに登録すると、探索レポートで「ボタン名ごとのクリック数」を表示できるようになります。
登録の画面
カスタム ディメンションとカスタム指標の登録は、管理画面の「プロパティの設定」→「データの表示」→「カスタム定義」で行います。
画面には「カスタム ディメンション」「カスタム指標」「計算指標」のタブがあり、それぞれ「カスタム ディメンションを作成」などのボタンから登録します。
注意 登録した時点以降のデータにしか反映されません。また、登録してからレポートにデータが表示されるまでには、最大で 24〜48 時間かかることがあります。パラメータの実装と同時に登録しておくのが理想です。
イベント スコープの登録
最もよく使うのが、イベント スコープ のカスタム ディメンションです。イベントに付けたパラメータを、そのイベントの属性として扱います。
登録手順
- 「カスタム定義」→「カスタム ディメンションを作成」を押す
- 次の項目を入力する
- ディメンション名:レポートに表示される名前(例:「CTA 名」)
- 範囲(スコープ):「イベント」
- 説明:任意(例:「cta_click イベントのボタン識別子」)
- イベント パラメータ:送っているパラメータ名(例:
cta_name)
- 「保存」を押す
ディメンション名は日本語でもかまいません。社内の誰が見てもわかる名前にしましょう。イベント パラメータの名前は、送っているパラメータ名と大文字・小文字まで完全に一致 させる必要があります。
よく登録するイベント スコープのディメンション
| ディメンション名の例 | パラメータ | 送っているイベント |
|---|---|---|
| リンク先 URL | link_url | click、file_download(拡張計測機能) |
| ファイル名 | file_name | file_download(拡張計測機能) |
| 動画タイトル | video_title | video_start など(拡張計測機能) |
| 検索キーワード | search_term | view_search_results(拡張計測機能) |
| フォーム名 | form_name | form_start、form_submit(拡張計測機能)や独自のイベント |
| 記事カテゴリ | article_category | page_view(独自に追加) |
| CTA 名 | cta_name | cta_click(独自のイベント) |
ポイント 拡張計測機能のパラメータの多くは、標準のディメンションとして最初から用意されているものもあります(「リンク先 URL」「ファイル名」など)。カスタム ディメンションを作る前に、探索レポートのディメンションの一覧で、同じものがすでにないかを検索してみましょう。
ユーザー スコープの登録
ユーザー スコープ のカスタム ディメンションは、ユーザー プロパティ(第 2 章)を分析軸として使うためのものです。
登録手順
- 「カスタム ディメンションを作成」を押す
- 範囲(スコープ)で「ユーザー」を選ぶ
- ユーザー プロパティ:送っているユーザー プロパティ名(例:
member_rank)を入力する - ディメンション名(例:「会員ランク」)を入力して保存する
ユーザー スコープのディメンションは、そのユーザーの すべてのイベント に適用されます。たとえば、「会員ランク」をディメンションにして「表示回数」を見ると、ゴールド会員が見たページの総数、シルバー会員が見たページの総数、といった集計ができます。
注意 ユーザー プロパティの値が途中で変わった場合(シルバー → ゴールドなど)、レポート上でどちらの値で集計されるかは、イベントが発生した時点の値によって決まります。会員ランクの変化を分析したい場合は、値の変化のタイミングを意識しましょう。
アイテム スコープの登録
アイテム スコープ のカスタム ディメンションは、e コマースのイベント(view_item、add_to_cart、purchase など)の items 配列の中に、独自のパラメータを追加した場合に使います。
gtag('event', 'purchase', {
transaction_id: 'T-20261028-0012',
value: 5980,
currency: 'JPY',
items: [
{
item_id: 'SKU-001',
item_name: 'オーガニック T シャツ',
item_category: 'トップス',
price: 2990,
quantity: 2,
item_material: 'organic_cotton', // 独自のアイテム パラメータ
},
],
});
この例の item_material をアイテム スコープのカスタム ディメンションに登録すると、「素材別の売上」を分析できるようになります。
item_name、item_category、item_brand などの標準のアイテム パラメータは、最初からディメンションとして用意されているので、登録の必要はありません。
カスタム指標
カスタム指標 は、数値のパラメータを合計や平均で集計するためのものです。
登録手順
- 「カスタム指標」タブ →「カスタム指標を作成」を押す
- 次の項目を入力する
- 指標名:例「獲得ポイント」
- 範囲:「イベント」(アイテム スコープを選べる場合もある)
- イベント パラメータ:例
points_earned - 測定単位:「標準」「通貨」「距離」「時間」から選ぶ
- 「保存」を押す
計算指標
カスタム定義には、既存の指標を組み合わせて新しい指標を作る 計算指標 もあります。たとえば、「キーイベント数 ÷ アクティブ ユーザー数」で「ユーザーあたりのキーイベント数」を作る、といった使い方ができます。計算指標は過去のデータにも適用されます。
上限と設計の優先順位
カスタム ディメンションとカスタム指標には、登録できる数の上限があります(執筆時点の無料版)。
| 種類 | 上限 |
|---|---|
| イベント スコープのカスタム ディメンション | 50 個 |
| ユーザー スコープのカスタム ディメンション | 25 個 |
| アイテム スコープのカスタム ディメンション | 10 個 |
| カスタム指標 | 50 個 |
| 計算指標 | 5 個 |
上限に達すると、不要なものを アーカイブ(削除)しない限り新しく登録できません。アーカイブしたディメンションは元に戻せず、同じパラメータを再登録しても、それまでのデータは使えなくなります。
何を優先して登録するか
上限を意識して、次の順番で優先順位を付けましょう。
- KPI の分析に直接使うもの:問い合わせフォームの種類、CTA の種類など
- 頻繁に分析する切り口:記事カテゴリ、会員ランクなど
- 改善のヒントになるもの:ボタンの位置、表示したタブなど
登録してはいけないもの
次のようなパラメータは、カスタム ディメンションとして登録するのに向きません。
- 値の種類が非常に多いもの:タイムスタンプ、セッション ID、ユーザーごとの ID など。値の種類が多すぎると、レポートで「(other)」にまとめられてしまう(第 6 章)
- 個人を特定できるもの:メールアドレス、氏名など。そもそも送ってはいけない
ポイント 値の種類が多いデータを分析したい場合は、BigQuery へのエクスポート(第 10 部)を使えば、カスタム ディメンションに登録しなくてもすべてのパラメータを分析できます。
よくある質問
Q. カスタム ディメンションを登録したのに、レポートに値が表示されません。
A. カスタム ディメンションは、登録したあと に収集されたデータから表示されます。登録より前のデータには、さかのぼって値が入りません。また、登録してからレポートに反映されるまで、最大で 24〜48 時間かかることがあります。登録の前に、DebugView でパラメータが送られていることを確認しておきましょう。
Q. パラメータ名を間違えて登録してしまいました。
A. 登録したカスタム ディメンションの パラメータ名は変更できません。正しいパラメータ名で新しく登録し、間違えたものは アーカイブ します。アーカイブしたカスタム ディメンションの枠は、すぐには再利用できない場合があるので、登録の前にパラメータ名をよく確認しましょう。
Q. どのパラメータを、カスタム ディメンションに登録すべきですか。
A. レポートや探索で、そのパラメータの値ごとに数値を見たいかどうか で判断します。たとえば、問い合わせの種類ごとの件数を見たいなら inquiry_type を登録します。BigQuery でだけ使うパラメータは、登録しなくても BigQuery には出力されます。枠には上限があるので、優先順位を付けて登録しましょう。
Q. ユーザー スコープとイベント スコープの、どちらで登録すべきか迷います。
A. 値が ユーザーの属性(会員のランク、ログインの状態など)で、そのユーザーのすべての行動に関係するならユーザー スコープ、値が その行動だけ に関係する(クリックしたボタンの名前など)ならイベント スコープです。
実践ワーク
自社で計測しているイベントのパラメータを書き出し、カスタム ディメンションの登録計画を作りましょう。
| パラメータ名 | 送っているイベント | スコープ | レポートで見たいか | 登録の優先度 |
|---|---|---|---|---|
inquiry_type | generate_lead | イベント | 見たい | 高 |
member_rank | (ユーザー プロパティ) | ユーザー | 見たい | 中 |
| (自社のパラメータを書き足す) |
優先度の高いものから登録し、登録した日を記録しておきましょう。登録の数が上限に近づいてきたら、使われていないカスタム ディメンションをアーカイブするかどうかを見直します。
まとめ
- カスタム パラメータは、カスタム ディメンションやカスタム指標に登録して初めてレポートで使える
- スコープには「イベント」「ユーザー」「アイテム」があり、送っているデータの種類に合わせて選ぶ
- 登録は、登録した時点以降のデータにしか反映されない
- 登録数には上限があるため、KPI の分析に使うものから優先して登録する
- 値の種類が非常に多いものや、個人を特定できるものは登録しない
次の章では、データが収集されてからレポートに表示されるまでの流れと、しきい値・サンプリング・(other) 行など、数値の見え方に影響する処理を学びます。