1.1 アクセス解析とは何か
この章で学ぶこと
- アクセス解析が「何のために」行われるのか
- 数値を見て終わりにしないための考え方
- 定量データと定性データの違いと使い分け
- Google アナリティクスがアクセス解析ツールの中でどんな位置にあるのか
- この講座全体の進め方
アクセス解析が答えてくれる問い
ウェブサイトを運営していると、次のような疑問が自然に湧いてきます。
- 毎月どれくらいの人がサイトを訪れているのか
- その人たちはどこから来たのか(検索、SNS、広告、メールなど)
- どのページがよく読まれ、どのページで帰ってしまうのか
- 問い合わせや購入をしてくれた人は、その前に何を見ていたのか
- 先月始めた広告やキャンペーンは本当に効果があったのか
アクセス解析とは、こうした疑問に データで答える ための取り組みです。サイトに訪れた人の行動を記録し、集計し、比較することで、「感覚」や「声の大きい人の意見」ではなく、実際に起きている事実をもとに判断できるようになります。
アクセス解析が答えられる問いは、大きく 4 つに分けられます。
| 問いの種類 | 具体例 | GA4 で主に使う機能 |
|---|---|---|
| 誰が来ているか | 新規の人が多いのか、リピーターが多いのか。スマホとパソコンのどちらが多いのか | ユーザー属性、テクノロジー、維持率 |
| どこから来ているか | 検索・SNS・広告・メールのどれが多いのか | 集客レポート |
| 何をしているか | どのページを見て、どのボタンを押しているか | エンゲージメント レポート |
| 成果につながったか | 問い合わせ・購入・会員登録は何件あったか | キーイベント、収益化レポート |
この 4 つは独立しているわけではありません。たとえば「SNS から来た人(どこから)は、スマホが多く(誰が)、記事を 1 本だけ読んで帰る傾向があり(何を)、問い合わせにはつながりにくい(成果)」というように、組み合わせて見ることで初めて意味のある発見になります。
ポイント アクセス解析は「サイトの健康診断」に似ています。体重や血圧の数値そのものよりも、「前回と比べてどう変わったか」「基準値からどれくらい離れているか」「なぜそうなったのか」を読み取ることに価値があります。
アクセス解析で答えられない問い
一方で、アクセス解析だけでは答えられない問いもあります。
- なぜその人はページを離れたのか(気持ちや理由)
- サイトを訪れていない潜在顧客は何を求めているのか
- 競合サイトのアクセス数はどれくらいか
- 特定の個人(山田さん)が何を見たのか
アクセス解析は「サイト上で起きた行動」を記録するものなので、行動の理由や、サイトの外で起きていることは直接わかりません。また、GA4 は個人を特定する用途には使えない設計になっています。これらの限界は第 3 章で詳しく扱います。
「見るだけ」で終わる解析と「動ける」解析
アクセス解析を始めた人がつまずく一番のポイントは、数値を見ること自体が目的になってしまう ことです。
毎月レポートを作り、「先月よりユーザー数が 5% 増えました」「直帰率が 2 ポイント下がりました」と報告する。しかし、それを聞いた人が「で、どうするの?」と思ってしまう——これが「見るだけ」の解析です。
「動ける」解析には、次の 3 つの要素があります。
- 目的がある:何を良くしたいのか(売上、問い合わせ数、認知など)が決まっている
- 比較がある:前月、前年同月、目標値、ほかのチャネルなど、比べる基準がある
- 次の行動がある:数値を見た結果、何を変えるのかが決まる
例として、ある BtoB 企業のサイトで考えてみましょう。
例:「見るだけ」の報告 10 月のユーザー数は 12,000 人で、前月比 8% 増でした。
例:「動ける」報告 10 月の問い合わせは 42 件で、目標の 50 件に届きませんでした。ユーザー数は前月比 8% 増えていますが、増加分の大半は SNS からの流入で、SNS 経由の問い合わせ率は検索経由の 4 分の 1 です。11 月は SNS の投稿から事例ページへの導線を追加し、問い合わせ率の改善を試します。
後者には目的(問い合わせ)、比較(目標値・チャネル間)、次の行動(導線の追加)がそろっています。この講座では、最終的にこのような報告ができるようになることを目指します。
解析の 4 ステップ
「動ける」解析は、次の 4 ステップで進めると迷いにくくなります。
- 目的と指標を決める:サイトのゴールと、それを測る数値を決める(第 6 章)
- 正しく計測する:必要なデータが正しく集まる状態をつくる(第 2〜3 部、第 9 部)
- 数値を読み解く:レポートを見て、変化や差の理由を考える(第 4〜6 部)
- 改善して検証する:施策を実行し、その結果をまた数値で確かめる(第 12 部)
多くの人は 3 から始めようとしますが、1 と 2 が不十分だと、いくらレポートを眺めても有益な発見にはつながりません。「とりあえず GA4 を入れたけれど、何を見ればいいかわからない」という状態の原因は、たいてい 1 がないことにあります。
定量データと定性データ
アクセス解析で扱うデータは、主に 定量データ です。定量データとは、数えたり測ったりできるデータのことで、ユーザー数、ページの表示回数、購入金額などが該当します。
これに対して 定性データ は、数値では表しにくい質的な情報です。アンケートの自由回答、ユーザーインタビューでの発言、問い合わせ内容、ユーザーテストでの操作の様子などがあります。
| 観点 | 定量データ | 定性データ |
|---|---|---|
| わかること | 何が、どれくらい起きたか | なぜ、どのように起きたか |
| 代表例 | GA4 のレポート、売上データ | アンケート、インタビュー、ユーザーテスト |
| 得意なこと | 全体の傾向・規模の把握、変化の検知 | 理由の理解、仮説の発見 |
| 苦手なこと | 理由の説明 | 全体への一般化 |
2 つは対立するものではなく、組み合わせて使うことで力を発揮します。
- 定量データで「料金ページで 70% の人が離脱している」とわかる
- 定性データ(ユーザーテスト)で「料金表の読み方がわからず、比較できない」という理由が見えてくる
- 料金表を改善し、再び定量データで離脱率の変化を確かめる
ポイント GA4 は「どこで何が起きているか」を見つける道具です。「なぜ起きているか」は、ヒートマップツールやアンケート、実際のユーザーの声と組み合わせて考えましょう。
Google アナリティクスの位置づけ
アクセス解析のツールは数多くありますが、その中で Google アナリティクスは最も広く使われているツールの一つです。主な理由は次のとおりです。
- 無料で使える:標準版は無料で、一般的な規模のサイトなら機能的にも十分
- Google のサービスと連携しやすい:Google 広告、Search Console、BigQuery、Looker Studio などとつながる
- 情報が多い:利用者が多いため、解説記事や事例、相談できる人が見つけやすい
- ウェブとアプリを一緒に計測できる:GA4 からはスマホアプリも同じ仕組みで計測できる
ほかのツールとの関係を整理すると、次のようになります。
| ツールの種類 | 代表例 | GA4 との関係 |
|---|---|---|
| アクセス解析 | Google アナリティクス 4、Adobe Analytics | サイト全体の行動を計測する中心のツール |
| 検索分析 | Google Search Console | 検索結果での表示・クリック・クエリを補う |
| ヒートマップ | Microsoft Clarity など | ページ内のどこが見られ、押されているかを補う |
| 広告管理画面 | Google 広告、Meta 広告など | 広告の表示・クリック・費用を補う |
| BI ツール | Looker Studio など | 複数のデータをまとめて可視化する |
| 顧客管理(CRM) | 各種 SFA / CRM | サイト外での商談・契約などを補う |
GA4 は、これらのツールの「ハブ」として使われることが多いツールです。まずは GA4 をしっかり使いこなせるようになり、必要に応じてほかのツールを組み合わせていくのが、遠回りに見えて最も確実な学び方です。
GA4 の有料版について
Google アナリティクスには、大規模サイト向けの有料版「Google アナリティクス 360」もあります。データ量の上限が大きい、サンプリングされにくい、サポートが受けられるなどの違いがありますが、基本的な考え方や画面は同じです。この講座の内容は無料版を前提にしていますが、そのまま 360 でも通用します。
この講座の進め方
この講座は、書籍 1 冊分(約 800 ページ)の内容を 13 部に分けて構成しています。
| 部 | テーマ | こんな人に |
|---|---|---|
| 第 1 部 | アクセス解析と GA4 の全体像 | すべての人がまず読む |
| 第 2 部 | 導入と初期設定 | これから GA4 を入れる人、設定を見直したい人 |
| 第 3 部 | GA4 のデータモデル | 数値の意味を根本から理解したい人 |
| 第 4 部 | 指標とディメンションの読み方 | 「この数値は何?」を解消したい人 |
| 第 5 部 | 標準レポートの使い方 | 日々の状況を把握したい人 |
| 第 6 部 | 探索レポートで深掘りする | 自分で分析したい人 |
| 第 7 部 | キーイベントと EC 計測 | 成果・売上を計測したい人 |
| 第 8 部 | 集客分析と広告連携 | 広告や SEO を担当している人 |
| 第 9 部 | Google タグ マネージャー | 計測を自分で拡張したい人 |
| 第 10 部 | BigQuery と Looker Studio | ダッシュボードや高度な分析をしたい人 |
| 第 11 部 | プライバシー・同意管理・データ品質 | 運用責任者、法務・情報システム担当 |
| 第 12 部 | 業種別の活用と改善サイクル | 成果につなげたいすべての人 |
| 付録 | トラブルシューティング・学習ロードマップ | 困ったときに |
おすすめの読み方
- まったくの初心者:第 1 部から順番に第 5 部まで読み進めるのがおすすめです。第 5 部まで読めば、GA4 の画面を見て「何が起きているか」を説明できるようになります。
- すでに GA4 を導入している人:第 1 部を流し読みしたあと、第 2 部の「必ず行う管理画面の初期設定」で設定漏れがないかを確認し、第 4 部から読み始めてもかまいません。
- 特定の課題がある人:目次から該当する章に直接進んでください。各章は前の章を読んでいなくても理解できるように書いていますが、前提となる章にはリンクを示しています。
手を動かしながら学ぶ
GA4 は、実際に画面を触りながら学ぶのが一番の近道です。自分のサイトがない場合は、Google が公開している デモアカウント を使えます。デモアカウントでは、Google のグッズを販売する EC サイト(Google Merchandise Store)の実際のデータを閲覧できるため、本講座の内容を試すのにぴったりです。
ポイント デモアカウントは「Google アナリティクス デモアカウント」で検索すると、公式ヘルプからアクセスできます。閲覧のみの権限なので、設定を壊してしまう心配はありません。
また、各部の終わりには 理解度クイズ で知識を確認できます。読了した章には「読了にする」ボタンで印を付けられるので、進み具合の管理に活用してください。
まとめ
- アクセス解析は、サイトを訪れた人の行動をデータで把握し、より良い判断をするための取り組みである
- 数値を見るだけでなく、「目的」「比較」「次の行動」がそろって初めて役に立つ
- 定量データで「何が起きたか」を、定性データで「なぜ起きたか」を捉え、組み合わせて使う
- Google アナリティクスは無料で多機能、ほかの Google サービスと連携できるアクセス解析の中心的なツールである
次の章では、現在の Google アナリティクスである GA4 が、以前のバージョン(ユニバーサル アナリティクス)からどのように変わったのかを見ていきます。