1.2 GA4 の誕生とユニバーサル アナリティクスとの違い
この章で学ぶこと
- ユニバーサル アナリティクス(UA)から GA4 へ移行した経緯
- 「セッション中心」から「イベント中心」へという考え方の転換
- ウェブとアプリを一つのプロパティで計測できる意味
- 直帰率に代わる「エンゲージメント」という考え方
- 機械学習とプライバシーへの配慮が設計に組み込まれた理由
UA の終了と GA4 への移行
Google アナリティクスは 2005 年に登場して以来、何度か大きな世代交代をしてきました。
| 世代 | 名称 | 主な時期 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 第 1 世代 | Urchin / 旧 Google アナリティクス | 2005 年〜 | Urchin 社の買収をもとにした初期版 |
| 第 2 世代 | 従来の Google アナリティクス(ga.js) | 2007 年〜 | 非同期タグの導入 |
| 第 3 世代 | ユニバーサル アナリティクス(analytics.js) | 2012 年〜 | セッションとページビュー中心の計測 |
| 第 4 世代 | Google アナリティクス 4 | 2020 年〜 | イベント中心、ウェブとアプリの統合 |
GA4 は 2020 年 10 月に正式に公開されました。その後 Google は、2023 年 7 月 1 日に無料版の UA(有料版の 360 は 2024 年 7 月 1 日)でデータの処理を終了し、2024 年 7 月にはそれまでの UA のデータにもアクセスできなくなりました。現在 Google アナリティクスといえば GA4 のことを指します。
なぜ Google は、広く使われていた UA を終了してまで GA4 に切り替えたのでしょうか。背景には、ウェブを取り巻く環境の大きな変化があります。
- スマホアプリの普及:ユーザーはウェブサイトだけでなく、アプリでもサービスを利用するようになった。UA はウェブ中心の設計で、アプリとの統合が苦手だった
- ユーザー行動の多様化:1 つのページで動画を見る、スクロールして読む、ボタンを押すなど、「ページを移動しない行動」が増えた
- プライバシー保護の強化:GDPR などの法規制や、ブラウザによる Cookie の制限が強まり、従来どおりにデータを集めることが難しくなった
- 機械学習の発展:欠けたデータを推計したり、将来の行動を予測したりする技術が実用レベルになった
GA4 は、こうした変化に対応するために ゼロから設計し直された ツールです。そのため、UA を使っていた人ほど「同じ名前なのに中身がまったく違う」と戸惑うことになりました。
ポイント GA4 は UA の「新しいバージョン」ではなく、「新しい考え方で作られた別のツール」と捉えると理解しやすくなります。UA の知識に引きずられず、まっさらな気持ちで学ぶのがおすすめです。
セッション中心からイベント中心へ
GA4 と UA の最も大きな違いは、データの扱い方にあります。
UA のデータモデル
UA では、データは セッション を中心に組み立てられていました。セッションとは、ユーザーがサイトに訪れてから離れるまでの一連の訪問のことです。1 つのセッションの中に、ページビュー、イベント、トランザクション(購入)などの「ヒット」が入っている、という構造です。
ユーザー
└─ セッション
├─ ページビュー(ヒットタイプ: pageview)
├─ イベント(ヒットタイプ: event / カテゴリ・アクション・ラベル)
└─ トランザクション(ヒットタイプ: transaction)
ヒットには種類(ヒットタイプ)があり、それぞれ持てる情報が決まっていました。たとえばイベントは「カテゴリ」「アクション」「ラベル」「値」という 4 つの項目を持つ、という固定された形でした。
GA4 のデータモデル
GA4 では、すべてのデータが イベント として記録されます。ページの表示も page_view という名前のイベントであり、購入も purchase というイベントです。そしてイベントには、パラメータ と呼ばれる追加情報を自由に付けられます。
ユーザー
└─ イベント
├─ page_view(page_location, page_title, …)
├─ scroll(percent_scrolled, …)
├─ click(link_url, outbound, …)
└─ purchase(transaction_id, value, currency, items, …)
セッションの概念がなくなったわけではありません。GA4 にもセッションはありますが、session_start というイベントとセッション ID のパラメータによって、イベントをまとめるための単位として後から計算されるもの に変わりました。
この違いをたとえるなら、次のようになります。
- UA は「来店記録」をつけるノートで、来店ごとに何を買ったかを書き込む
- GA4 は「行動ログ」をつけるノートで、一つひとつの行動を時刻とともに書き込み、あとから来店単位に区切ることもできる
イベント中心になったことで、次のようなメリットがあります。
- ページ遷移をしない行動(スクロール、動画再生、ボタンのクリック)も、ページビューと同じように扱える
- ウェブとアプリで同じ形式のデータを使える
- パラメータを自由に設計できるため、ビジネスに合わせた計測がしやすい
一方で、UA に慣れた人にとっては「カテゴリ・アクション・ラベルがない」「セッション数が UA と合わない」といった戸惑いの原因にもなっています。データモデルについては第 3 部で詳しく解説します。
ウェブとアプリの統合計測
GA4 の正式名称は、かつて「アプリ + ウェブ プロパティ」と呼ばれていました。この名前のとおり、GA4 は ウェブサイトとスマホアプリを一つのプロパティで計測する ことを前提に作られています。
UA では、アプリを計測するには別の仕組み(Firebase 向け Google アナリティクス)を使う必要があり、ウェブのデータとアプリのデータを同じレポートで並べて見ることは困難でした。
GA4 では、一つのプロパティの中に複数の データストリーム を作れます。
| データストリームの種類 | 対象 | 導入方法 |
|---|---|---|
| ウェブ | ウェブサイト | Google タグ(gtag.js)または Google タグ マネージャー |
| iOS アプリ | iPhone / iPad アプリ | Firebase SDK |
| Android アプリ | Android アプリ | Firebase SDK |
たとえば、EC サイトと EC アプリの両方を運営している企業であれば、一つのプロパティでウェブとアプリの売上を合計したり、比較したりできます。さらに User-ID を使えば、「アプリで商品を見て、パソコンのウェブで購入した」といったデバイスをまたぐ行動も、同じ人の行動として把握できる可能性があります。
注意 アプリを持っていない場合でも、GA4 は問題なく使えます。ウェブ データストリームだけのプロパティが、実際には最も一般的な使い方です。
直帰率からエンゲージメントへ
UA で最もよく見られていた指標の一つが 直帰率 です。UA の直帰率は「1 ページだけ見て離脱したセッションの割合」で、直帰率が高いページは「すぐに帰られてしまう、質の低いページ」と考えられがちでした。
しかし、この指標には大きな問題がありました。たとえば、ブログ記事を 10 分かけてじっくり読み、満足して帰った人も、1 ページしか見ていなければ「直帰」になってしまいます。問い合わせ先の電話番号を調べに来て、すぐに目的を果たした人も同様です。
GA4 では、この問題を解決するために エンゲージメント という考え方が導入されました。GA4 では、次のいずれかを満たすセッションを「エンゲージのあったセッション」とします。
- 10 秒以上継続した(秒数は設定で変更可能)
- キーイベントが 1 回以上発生した
- 2 回以上のページビュー(アプリではスクリーンビュー)が発生した
そして、全セッションに占めるエンゲージのあったセッションの割合を エンゲージメント率 と呼びます。GA4 にも直帰率はありますが、その定義は「エンゲージのなかったセッションの割合」、つまり「100% − エンゲージメント率」に変わりました。
| 指標 | UA の定義 | GA4 の定義 |
|---|---|---|
| 直帰率 | 1 ページだけ閲覧して終わったセッションの割合 | エンゲージのなかったセッションの割合 |
| 滞在時間 | 次のページを開くまでの時間から計算(最後のページは 0 秒) | ページが画面の前面に表示されていた時間を計測 |
UA では最後に見たページの滞在時間を計測できなかったため、1 ページだけ見たセッションの滞在時間は 0 秒として扱われていました。GA4 では、ブラウザのタブが前面に表示されている時間を直接計測するため、実態に近い数値になっています。
エンゲージメントの指標については、第 4 部で詳しく解説します。
機械学習とプライバシー重視の設計
GA4 のもう一つの特徴は、機械学習 と プライバシー保護 が設計の段階から組み込まれていることです。
プライバシー保護への対応
近年、個人のデータの扱いに関するルールは世界的に厳しくなっています。EU の GDPR、米国カリフォルニア州の CCPA、日本の改正個人情報保護法や改正電気通信事業法など、ウェブサイトがユーザーのデータを集めるときのルールは年々変化しています。
また、Safari の ITP(Intelligent Tracking Prevention)のように、ブラウザ自体が Cookie の保存期間を制限する仕組みも広がりました。
GA4 では、これらの変化に対応するために次のような仕組みが用意されています。
- IP アドレスを保存しない:GA4 では IP アドレスはログに記録・保存されない
- 同意モード:Cookie 利用の同意状況に応じて、タグの動作を調整できる
- データ保持期間の設定:ユーザー単位の詳細データの保存期間を、最大 14 か月(無料版)に制限している
- データ削除リクエスト:誤って収集したデータを削除できる
- しきい値:少人数のデータから個人が推測されないよう、一部の数値を非表示にする
機械学習による補完と予測
Cookie の制限や同意の拒否によって、すべてのユーザーの行動を完全に計測することは、もはや不可能になりつつあります。GA4 は、この「欠けたデータ」を機械学習で補う方向に舵を切りました。
- 行動モデリング:同意モードで計測を拒否したユーザーの行動を、同意したユーザーのデータから推計する
- 予測指標:購入の可能性、離脱の可能性、予測収益などを算出する
- データドリブン アトリビューション:キーイベントへの各チャネルの貢献度を機械学習で割り振る
- インサイト:数値の異常な変化を自動で検知して知らせる
ポイント GA4 の数値は「すべての行動を数えた結果」ではなく、「計測できた行動と、統計的な推計を組み合わせた結果」になりつつあります。数値を 1 件単位の正確さで捉えるより、傾向や変化を読むことを意識しましょう。
UA と GA4 の違い早見表
最後に、UA と GA4 の主な違いを表にまとめます。UA を使っていた人は、この表で頭を切り替えておきましょう。
| 項目 | UA | GA4 |
|---|---|---|
| データの単位 | セッションとヒット | イベントとパラメータ |
| 計測対象 | 主にウェブ | ウェブとアプリ |
| 管理階層 | アカウント → プロパティ → ビュー | アカウント → プロパティ → データストリーム |
| 成果の設定 | 目標(最大 20 個) | キーイベント |
| 主な品質指標 | 直帰率、平均セッション時間 | エンゲージメント率、平均エンゲージメント時間 |
| イベントの構造 | カテゴリ / アクション / ラベル / 値 | イベント名 + 任意のパラメータ |
| 自由な分析 | カスタム レポート | 探索レポート |
| 生データの出力 | 360 のみ BigQuery 連携 | 無料版でも BigQuery 連携が可能 |
| IP アドレス | 保存(匿名化オプションあり) | 保存しない |
特に「ビューがなくなった」点は、UA からの移行で混乱しやすいポイントです。UA ではビューを使ってフィルタをかけたデータを分けていましたが、GA4 ではプロパティ全体でデータを持ち、レポートのフィルタや比較、データフィルタ(内部トラフィックの除外など)で同じことを実現します。
まとめ
- GA4 は、アプリの普及・行動の多様化・プライバシー規制・機械学習の発展を背景に、ゼロから設計し直されたツールである
- データはすべてイベントとパラメータで表現され、セッションはイベントをまとめる単位として計算される
- 一つのプロパティでウェブとアプリをまとめて計測できる
- 直帰率に代わって、エンゲージメント率や平均エンゲージメント時間が重視される
- プライバシー保護と機械学習による補完が設計に組み込まれている
次の章では、GA4 で「わかること」と「わからないこと」を整理し、GA4 に過度な期待や誤解を持たないための土台をつくります。