2.8 UA からの移行と並行運用

旧データの扱いと、移行時に起きやすい数値ギャップを解説します。
入門書籍換算 約 8 ページ

この章で学ぶこと

  • UA のデータの現状と、エクスポート済みのデータの活かし方
  • UA の「目標」を GA4 の「キーイベント」に置き換える方法
  • UA と GA4 の数値が一致しない理由
  • 移行が済んでいるかを確かめるチェックリスト

ポイント この章は、以前ユニバーサル アナリティクス(UA)を使っていた人や、UA 時代の資料を引き継いだ人向けです。初めて Google アナリティクスを使う人は読み飛ばしてもかまいません。

UA データのエクスポート

第 1 部で説明したとおり、UA は 2023 年 7 月(360 は 2024 年 7 月)にデータの処理を終了し、2024 年 7 月以降は管理画面や API から UA のデータにアクセスできなくなりました。つまり、今から UA のデータを取り出すことはできません。

一方で、多くの企業は UA の終了前に、過去のデータを CSV やスプレッドシート、BigQuery などに書き出しています。手元にエクスポートしたデータがある場合は、次のように活用できます。

エクスポート済みデータの活かし方

活用方法内容
長期トレンドの把握年単位のユーザー数やセッション数の推移を、参考値として残しておく
季節性の確認毎年同じ時期に起きる増減(繁忙期・閑散期)を把握する
施策の履歴過去のキャンペーンやリニューアルの効果を振り返る
目標設定の参考GA4 での KPI の目標値を決めるときの参考にする

UA と GA4 のデータを並べるときの注意

UA と GA4 のデータを 1 つのグラフにつなげて表示すると、移行の時点で数値が不自然に跳ね上がったり、下がったりして見えることがあります。これは、後で説明するように 2 つのツールで数え方が違う ためです。

  • UA と GA4 のデータは、別の系列 として扱い、同じ指標名でも直接比較しない
  • 長期トレンドは「UA 期間の推移」「GA4 期間の推移」をそれぞれ見て、傾向の変化を読む
  • 前年同月比などを計算するときは、UA と GA4 をまたがないようにする(GA4 の運用が 1 年を超えていれば、GA4 どうしで比べられる)

注意 エクスポートしたデータが手元にない場合、UA の過去データを復元する方法はありません。過去の報告書や資料に残っている数値を、参考として整理しておきましょう。

目標からキーイベントへの置き換え

UA では、成果を 目標 として設定していました。目標には、次のような種類がありました。

UA の目標タイプ内容GA4 での置き換え
到達ページ特定の URL(サンクスページなど)の表示そのページの表示でイベントを作成し、キーイベントにする
滞在時間一定時間以上の滞在原則として置き換えない(エンゲージメントの指標で代替)
ページビュー数 / スクリーンビュー数一定数以上のページ閲覧原則として置き換えない(エンゲージメントの指標で代替)
イベント特定のイベントの発生同じ行動を計測する GA4 のイベントを、キーイベントにする

到達ページの目標を置き換える手順

UA で「/contact/thanks/ の表示」を目標にしていた場合、GA4 では次のように置き換えます。

  1. 管理画面の「データの表示」→「イベント」→「イベントを作成」を開く
  2. 次の条件で新しいイベントを作成する
    • カスタム イベント名:contact_complete(例)
    • 条件 1:event_name が page_view と等しい
    • 条件 2:page_location が /contact/thanks/ を含む
  3. イベントが発生したら(データが届いたら)、「キーイベント」の画面でそのイベントをキーイベントとしてマークする

イベントの作成とキーイベントの設定については、第 7 部で詳しく説明します。

置き換えないほうがよい目標

UA では、「3 ページ以上見た」「2 分以上滞在した」といった エンゲージメント系の目標 を設定していることがよくありました。GA4 では、こうした行動は「エンゲージのあったセッション」や「エンゲージメント率」として標準で計測されるため、わざわざキーイベントにする必要はありません。

キーイベントは、事業の成果に直結する行動(購入、問い合わせ、資料請求、会員登録など)に絞って設定しましょう。キーイベントが多すぎると、「キーイベント数」の合計が何を意味するのかがわからなくなります。

数値が一致しない理由

UA と GA4 を並行して運用していた期間に、「UA と GA4 で数値が合わない」という声が多く上がりました。主な理由は次のとおりです。

指標数値がずれる主な理由
ユーザー数UA は「総ユーザー数」を主に表示し、GA4 は「アクティブ ユーザー数」を主に表示する
セッション数UA は日付が変わる時点や、参照元が変わった時点で新しいセッションを開始したが、GA4 はそうしない
直帰率定義そのものが違う(UA は 1 ページのみのセッション、GA4 はエンゲージのなかったセッション)
ページビュー数フィルタの設定や、SPA での計測方法の違いで差が出ることがある
コンバージョン数UA の目標は 1 セッションで 1 回まで、GA4 のキーイベントは発生するたびに数える(設定による)
流入元アトリビューションのモデルや、ノーリファラーの扱いが異なる

セッションの数え方の違い

特に差が出やすいのがセッション数です。UA では、次のような場合に新しいセッションが始まっていました。

  • 30 分以上操作がなかったとき(GA4 も同じ)
  • 日付が変わったとき(GA4 では変わらない)
  • 同じセッションの途中で、別の参照元(キャンペーンなど)から再び訪れたとき(GA4 では変わらない)

そのため、一般的に GA4 のセッション数は UA よりも少なくなる傾向があります。

ポイント 「どちらの数値が正しいか」を議論しても答えは出ません。大切なのは、GA4 の定義を理解したうえで、GA4 の数値の推移を新しい基準にする ことです。社内のレポートの指標の定義も、GA4 に合わせて更新しましょう。

移行チェックリスト

UA から GA4 への移行が十分に済んでいるかを、次のチェックリストで確認しましょう。UA の終了から時間がたっていても、移行時に見落とされた項目が残っていることはよくあります。

計測

  • すべてのページに GA4 のタグが設置されている
  • UA の古いタグ(analytics.js や UA- で始まるトラッキング ID)がサイトから削除されている
  • UA で計測していたイベント(ボタンのクリックなど)が、GA4 でも計測されている
  • e コマースのデータが、GA4 の推奨イベント形式で送られている

設定

  • UA の目標に相当するキーイベントが設定されている
  • データ保持期間が 14 か月になっている
  • 内部トラフィックの除外が設定されている
  • 除外する参照、クロスドメインの設定が UA と同様にされている
  • Google 広告、Search Console とリンクしている

運用

  • 社内のレポートや Looker Studio のダッシュボードが、GA4 のデータソースに切り替わっている
  • レポートで使っている指標の定義が、GA4 に合わせて更新されている
  • UA のエクスポート済みデータの保管場所が、関係者にわかるようになっている

注意 UA のタグ(analytics.js や、古い gtag.js の UA- の設定)がサイトに残っていても、データはもう処理されません。不要なリクエストを減らし、サイトの表示速度を少しでも改善するために、削除しておきましょう。

まとめ

  • UA のデータはすでにアクセスできない。エクスポート済みのデータは長期トレンドや目標設定の参考に使う
  • UA の到達ページ目標は、イベントを作成してキーイベントにすることで置き換える
  • エンゲージメント系の目標はキーイベントにせず、GA4 のエンゲージメント指標で代替する
  • UA と GA4 は数え方が違うため、数値は一致しない。GA4 の推移を新しい基準にする
  • 移行チェックリストで、計測・設定・運用の漏れがないかを確認する

これで第 2 部は終わりです。理解度クイズ で確認してみましょう。次の第 3 部では、GA4 のデータがどのような仕組みで成り立っているのか、イベント・パラメータ・ユーザー・セッションというデータモデルを詳しく学びます。