3.3 ユーザーの識別
この章で学ぶこと
- Cookie とクライアント ID による基本的なユーザーの識別
- User-ID によるログイン ユーザーの識別
- Google シグナルによる識別の補完
- 「ブレンド」「計測」「デバイスベース」というレポート用識別子の違い
- 自社に合ったレポート用識別子の選び方
Cookie とクライアント ID
GA4 がユーザーを見分けるための最も基本的な仕組みは、ブラウザの Cookie です。
ユーザーが初めてサイトを訪れると、Google タグはランダムな値を生成し、_ga という名前のファーストパーティ Cookie としてブラウザに保存します。
Cookie 名: _ga
値: GA1.1.1234567890.1730000000
└─ クライアント ID(ランダムな数値 + 初回訪問の時刻)
有効期限: 最後の訪問から最長 2 年(既定)
この値を クライアント ID と呼びます。同じブラウザで再びサイトを訪れると、Cookie に保存されたクライアント ID が読み取られ、「前にも来たことのあるユーザー」として識別されます。
アプリの場合は、Cookie の代わりに アプリ インスタンス ID という、アプリのインストールごとに生成される識別子が使われます。
クライアント ID の限界
クライアント ID は「ブラウザ」を識別するもので、「人」を識別するものではありません。そのため、次のような場合に、実際の人数とずれが生じます。
| 状況 | GA4 での扱い | ずれの方向 |
|---|---|---|
| 同じ人がパソコンとスマホで訪れる | 2 人 | 実際より多い |
| 同じ人が Chrome と Safari を使い分ける | 2 人 | 実際より多い |
| Cookie を削除した、シークレット モードで訪れた | 新しいユーザー | 実際より多い |
| Safari などで Cookie の保存期間が短く制限された | 期間を過ぎると新しいユーザー | 実際より多い |
| 家族で 1 台のパソコンを共有している | 1 人 | 実際より少ない |
全体としては、GA4 のユーザー数は実際の人数より多めに出る ことが一般的です。特に、ブラウザによる Cookie の制限の影響で、リピーターが新規ユーザーとして数えられやすくなっています。
ポイント GA4 の
_gaCookie は、サイト自身のドメインで保存される ファーストパーティ Cookie です。広告などで問題視されている「サードパーティ Cookie」の廃止の影響は、直接は受けません。ただし、ブラウザの追跡防止機能はファーストパーティ Cookie にも制限をかけることがあります。
User-ID
User-ID は、サイトやアプリにログインしたユーザーに対して、自社が割り当てた識別子を GA4 に送る仕組みです(第 2 部でも少し紹介しました)。
// ログイン後のページで送る例
gtag('config', 'G-XXXXXXXXXX', {
user_id: 'u_8f3a2b1c',
});
User-ID を送ると、GA4 はクライアント ID よりも User-ID を優先してユーザーを識別します。その結果、同じ会員が複数のデバイスやブラウザを使っても、ログインしていれば同じユーザーとして扱われます。
月曜: スマホの Safari でログインして商品を閲覧(User-ID = u_8f3a2b1c)
水曜: 会社のパソコンの Chrome でログインして比較(User-ID = u_8f3a2b1c)
金曜: 自宅のパソコンの Chrome でログインして購入(User-ID = u_8f3a2b1c)
→ 1 人のユーザーの行動として集計される
User-ID の設計で決めること
| 決めること | 推奨 |
|---|---|
| どの値を使うか | 会員番号など、変わらない内部の ID。メールアドレスは使わない |
| 値を加工するか | ハッシュ化するなど、推測しにくい形にする |
| いつ送るか | ログインしている間のすべてのイベントで送る |
| ログアウト時 | 送らない(user_id を null にする) |
| ログイン前の行動 | 同じセッション内であれば、ログイン前の行動も同じユーザーに紐づけられることがある |
注意 GA4 の利用規約では、個人を特定できる情報(PII)の送信が禁止されています。メールアドレスや電話番号を User-ID に使うことは、ハッシュ化した場合も含めて避けるのが安全です。社内でしか意味を持たない会員番号などを使いましょう。
Google シグナル
Google シグナル は、Google アカウントにログインしていて、「広告のカスタマイズ」を有効にしているユーザーの情報を、GA4 で活用する仕組みです。
Google シグナルを有効にすると、次のようなことが可能になります。
- 年齢、性別、インタレスト(興味・関心)などのユーザー属性のレポート
- GA4 のオーディエンスを使った Google 広告のリマーケティングの対象の拡大
- デバイスをまたいだ行動の把握の補完(仕様は変更されてきているため、最新の公式ヘルプを確認)
ただし、Google シグナルで識別できるのは、Google アカウントにログインしていて広告のカスタマイズを許可しているユーザーだけです。すべてのユーザーが対象になるわけではありません。
デバイスベースとブレンド
GA4 では、ユーザーを識別するための情報が複数あります。そこで、レポートでユーザーを数えるときにどの情報を使うか を、レポート用識別子(レポート ID)として選べるようになっています。
設定は、管理画面の「プロパティの設定」→「データの表示」→「レポート用識別子」で行います。
| レポート用識別子 | 使う情報(優先順) | 特徴 |
|---|---|---|
| ブレンド | User-ID → デバイス ID(クライアント ID)→ モデリング | 最も多くの情報を使ってユーザーを識別する |
| 計測 | User-ID → デバイス ID | モデリング(推計)を使わない |
| デバイスベース | デバイス ID のみ | User-ID も使わない、最もシンプルな方式 |
「モデリング」とは、同意モード(第 11 部)でアナリティクスの Cookie の利用を拒否したユーザーの行動を、同意したユーザーのデータから推計して補う仕組みです。
レポート用識別子の変更は過去にも反映される
レポート用識別子は、GA4 の設定の中では珍しく、変更すると過去のデータにも反映 されます。データの収集方法を変えるのではなく、集計のしかたを変える設定だからです。そのため、試しに切り替えて数値の違いを見比べることもできます。
レポート用識別子の選び方
どのレポート用識別子を選ぶべきかは、サイトの状況によって異なります。
| サイトの状況 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| ログイン機能がなく、同意モードも使っていない | デバイスベース(どれを選んでもほぼ同じ) | User-ID もモデリングも使われないため |
| 会員のログインが多く、クロスデバイスの行動を見たい | 計測 または ブレンド | User-ID でデバイスをまたいで識別できる |
| 同意モードを使っており、拒否されたユーザーの分も推計で補いたい | ブレンド | モデリングで補完できる |
| 推計値を含めず、実際に計測した値だけで判断したい | 計測 | モデリングを使わない |
| しきい値によるデータの非表示をできるだけ避けたい | デバイスベース | しきい値が適用されにくい |
ポイント 迷った場合は、まず既定の「ブレンド」のまま運用し、「しきい値でデータが表示されない」「数値の根拠を説明しにくい」などの問題が出たら、「計測」や「デバイスベース」を検討するとよいでしょう。どの識別子を使っているかは、社内のレポートにも明記しておきましょう。
ユーザー数は「目安」として扱う
ここまで見てきたように、GA4 のユーザー数は、識別の方法によって変わる「推定値」です。どの方法を選んでも、実際の人数と完全に一致することはありません。
だからこそ、ユーザー数を扱うときは次の点を意識しましょう。
- 同じ識別方法で、期間やチャネルを比較する
- 識別方法を変えたときは、その前後で数値を比較しない(または注記する)
- 「人数」よりも、「キーイベント率」や「1 人あたりのセッション数」などの比率を重視する
よくある質問
Q. User-ID を送り始めると、過去のデータも同じユーザーとしてまとめられますか。
A. User-ID は、送り始めた あと のデータで使われます。ログインする前に同じブラウザで行った行動が、同じセッションの中であれば、ログイン後の User-ID と結びつけられる場合がありますが、User-ID を送り始める前の古いデータが、さかのぼってまとめられるわけではありません。
Q. ログアウトしたときは、User-ID をどうすればよいですか。
A. ログアウトしたら、User-ID を 送らない(空にする)ようにしましょう。共用のパソコンなどで、ログアウトしたあとも前のユーザーの User-ID が送られ続けると、別の人の行動が同じユーザーとして記録されてしまいます。
Q. レポート用識別子を変えると、データは変わりますか。
A. レポート用識別子は、データの見せ方 の設定です。計測したデータそのものは変わらず、変更すると、過去のデータも新しい設定でレポートに表示されます。そのため、いつでも切り替えて比べられます。ただし、社内の資料の数値と、画面の数値が合わなくなることがあるので、普段使う設定を決めておきましょう。
Q. Cookie の有効期間は、どのくらいですか。
A. GA4 の _ga Cookie は、既定では一定の期間(2 年)有効で、訪問のたびに延長されます。ただし、ブラウザのトラッキング防止の機能(Safari の ITP など)によって、スクリプトで設定された Cookie の有効期間が短く制限されることがあります。そのため、実際には、期間をおいて再訪問したユーザーが、新規ユーザーとして数えられることがあります。
実践ワーク
自社のプロパティで、ユーザーの識別の設定を確認し、次の表を埋めてみましょう。
| 確認する項目 | 現在の状態 | メモ |
|---|---|---|
| User-ID を送っているか | 送っている場合、ログアウト時の扱い | |
| User-ID の値の形式 | メールアドレスなどの個人情報を使っていないか | |
| Google シグナル | 有効 / 無効 | |
| レポート用識別子 | ブレンド / 観測 / デバイスベース |
確認したら、レポート用識別子を一時的に切り替えて、同じ期間のアクティブ ユーザー数を比べてみましょう。
| レポート用識別子 | アクティブ ユーザー数 |
|---|---|
| ブレンド | |
| 観測 | |
| デバイスベース |
差が大きい場合は、User-ID や Google シグナル、モデリングの影響が大きいことを示しています。社内の報告では、どの設定の数値かを明記しましょう。
まとめ
- GA4 は基本的に、ブラウザの
_gaCookie に保存されたクライアント ID でユーザーを識別する - クライアント ID はブラウザ単位の識別なので、GA4 のユーザー数は実際の人数より多めに出やすい
- User-ID を送ると、ログインしたユーザーをデバイスをまたいで識別できる
- レポート用識別子「ブレンド」「計測」「デバイスベース」で、レポートでのユーザーの数え方を選べる
- レポート用識別子の変更は過去のデータにも反映される
次の章では、GA4 におけるセッションの始まりと終わり、そして UA との数え方の違いを詳しく見ていきます。