10.1 Looker Studio の基本
この章で学ぶこと
- Looker Studio でできること
- GA4 をデータソースとして接続する方法
- グラフと表の作り方
- フィルタと期間のコントロールで、見る人が条件を切り替えられるようにする方法
- レポートの共有と権限の設定
Looker Studio とは
Looker Studio(ルッカー スタジオ、旧称:Google データポータル)は、さまざまなデータをグラフや表にまとめて、ダッシュボード や レポート を作れる Google の無料ツールです。
GA4 の画面との違い
| 比べる点 | GA4 のレポート・探索 | Looker Studio |
|---|---|---|
| 主な目的 | 分析する(深掘りする) | 伝える(定点で見る、共有する) |
| 見た目の自由度 | 決まった形式 | グラフの種類、色、配置を自由に決められる |
| 複数のデータの組み合わせ | GA4 のデータのみ | GA4、Google 広告、Search Console、スプレッドシート、BigQuery などを 1 つのレポートに並べられる |
| 共有 | GA4 の権限を持つ人だけ | GA4 の権限がない人にも、レポートだけを共有できる |
| 操作の難しさ | GA4 の知識が必要 | 見る人は、ウェブページのように見るだけ |
よく使われる場面
- 経営層や他部署向けの 月次レポート
- 担当者が毎朝見る KPI のダッシュボード
- 広告代理店からクライアントへの 運用レポート
- 複数のサイトや、ウェブと広告のデータをまとめた 横断のレポート
GA4 データソースの接続
Looker Studio でデータを表示するには、まず データソース を接続します。
接続の手順
- Looker Studio(lookerstudio.google.com)を開き、「空のレポート」を作る
- 「データのレポートへの追加」の画面で、Google アナリティクス のコネクタを選ぶ
- アカウント → プロパティ(GA4)を選ぶ
- 「追加」を押す
接続すると、GA4 のディメンションと指標が、Looker Studio のフィールドとして使えるようになります。
データソースの設定のポイント
| 設定 | 内容 |
|---|---|
| データの認証情報 | 「オーナーの認証情報」にすると、レポートを見る人が GA4 の権限を持っていなくても、データを表示できる。「閲覧者の認証情報」にすると、見る人の GA4 の権限でデータを取得する |
| データの更新頻度 | データをどのくらいの間隔で取り直すか(キャッシュの期間) |
| フィールドの追加 | 計算フィールド(既存のフィールドから計算した値)を追加できる |
注意 Looker Studio の GA4 コネクタは、GA4 の Data API を使ってデータを取得しています。そのため、GA4 の画面と同様に、しきい値 や データのサンプリング、API の 割り当て(クォータ) の制限があります。アクセスの多いレポートや、複雑なグラフをたくさん並べたレポートでは、「割り当てを超えました」というエラーが出ることがあります。
ほかのデータソースも追加する
1 つのレポートに、複数のデータソースを追加できます。
| データソース | 用途の例 |
|---|---|
| Google 広告 | 広告の費用、クリック、コンバージョン |
| Search Console | 検索の表示回数、クリック数、クエリ |
| Google スプレッドシート | 目標値、他媒体の広告費、売上の実績 |
| BigQuery | GA4 の生データの集計結果(この部の第 5 章) |
グラフと表の作成
よく使うグラフ
| グラフ | 向いている用途 | 例 |
|---|---|---|
| スコアカード | 1 つの数値を大きく見せる | 今月のユーザー数、キーイベント数 |
| 時系列グラフ | 数値の推移 | 日別のセッション数 |
| 棒グラフ | 項目どうしの比較 | チャネル別のキーイベント数 |
| 表 | 詳細な数値の一覧 | ページ別の表示回数、エンゲージメント率 |
| 円グラフ・ドーナツ グラフ | 構成比(項目が少ない場合) | デバイス カテゴリの割合 |
| 地図 | 地域ごとの比較 | 都道府県別のユーザー数 |
| ピボット テーブル | 2 つのディメンションの掛け合わせ | チャネル × デバイスのキーイベント数 |
グラフを追加する手順
- 上部のメニューの「グラフを追加」から、グラフの種類を選ぶ
- キャンバス(レポートの画面)の上に配置する
- 右側の「設定」タブで、ディメンション と 指標 を選ぶ
- 「スタイル」タブで、色や表示の形式を整える
スコアカードで前期間と比べる
スコアカードでは、「比較期間」を設定すると、前の期間(前月・前年同月など)との 増減 を表示できます。
ユーザー数
12,450
▲ 8.2%(前月比)
計算フィールド
既存のフィールドから、新しい指標を作れます。
例)キーイベント率(セッション単位)
キーイベント数 / セッション数
例)チャネルを大きく 3 つにまとめる
CASE
WHEN セッションのデフォルト チャネル グループ IN ("Paid Search", "Paid Social", "Display") THEN "広告"
WHEN セッションのデフォルト チャネル グループ IN ("Organic Search", "Organic Social") THEN "自然流入"
ELSE "その他"
END
ポイント 比率の指標(エンゲージメント率など)は、Looker Studio で行ごとの値を 合計・平均 すると、正しい値になりません。比率は、分子と分母をそれぞれ合計してから割る(計算フィールドで「合計 ÷ 合計」にする)か、GA4 の比率の指標をそのまま使いましょう。
フィルタと期間コントロール
レポートを見る人が、自分で条件を切り替えられるようにするには、コントロール を追加します。
期間設定コントロール
「コントロールを追加」→「期間設定」を配置すると、見る人がカレンダーから期間を選べるようになります。
| 設定 | 内容 |
|---|---|
| デフォルトの期間 | 「過去 28 日間」「先月」「今月(今日まで)」など、レポートを開いたときの期間 |
| 適用範囲 | 同じページのすべてのグラフに適用される(グループ化で範囲を限定できる) |
プルダウン リスト(フィルタ コントロール)
「コントロールを追加」→「プルダウン リスト」を配置し、ディメンション(例:デバイス カテゴリ、チャネル)を選ぶと、見る人がその値で絞り込めるようになります。
フィルタ
グラフやページに フィルタ を設定すると、常に特定の条件のデータだけを表示できます。
例)「ブログのページだけ」のフィルタ
包含 ページ パス 正規表現に一致 ^/blog/
| 範囲 | 設定する場所 |
|---|---|
| 1 つのグラフ | グラフの「設定」→「フィルタ」 |
| ページ全体 | 「ページ」→「現在のページの設定」→「フィルタ」 |
| レポート全体 | 「ファイル」→「レポートの設定」→「フィルタ」 |
共有と権限
Looker Studio のレポートは、Google ドキュメントなどと同じように 共有 できます。
共有の方法
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| ユーザーを指定して共有 | メールアドレスを指定して、「閲覧者」または「編集者」の権限を与える |
| リンクで共有 | リンクを知っている人(組織内、または全員)が見られるようにする |
| 定期配信 | 決まった日時に、レポートを PDF にしてメールで送る |
| 埋め込み | 社内のポータルなどに、レポートを埋め込む |
共有するときの注意
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| データの認証情報 | 「オーナーの認証情報」のデータソースは、レポートを見られる人なら誰でもデータを見られる。共有の範囲を必要な人に限る |
| リンクでの公開 | 「リンクを知っている全員」にすると、社外の人もデータを見られる。売上などの機密のデータを含むレポートでは避ける |
| 編集者の権限 | 編集者は、グラフを変えたり、データソースのフィールドを使って別のデータを表示したりできる。編集者の権限は必要な人だけに |
| データソースの所有者 | データソースの所有者が退職してアカウントが削除されると、レポートが表示できなくなることがある。組織の共有アカウントや、チームの管理者がデータソースを所有するようにする |
注意 GA4 の権限を持たない人にレポートを共有するということは、GA4 のデータの一部を、その人に見せる ということです。どのデータを、誰に見せてよいかを、社内のルールとして決めておきましょう。
よくある質問
Q. Looker Studio の数値が、GA4 の画面の数値と少し違います。
A. 主な原因は次のとおりです。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 期間 | Looker Studio の期間の設定と、GA4 の画面の期間が違う(「過去 28 日間」に今日を含むかどうか、など) |
| 指標の選び方 | 「ユーザー」と「アクティブ ユーザー」、「キーイベント」とイベント別のキーイベントなど、似た名前の別の指標を選んでいる |
| 集計の方法 | 比率の指標を行ごとに合計・平均している |
| フィルタ | グラフ、ページ、レポートのいずれかに、気づかないフィルタが付いている |
| しきい値 | ユーザー数の少ない行が、しきい値で隠されている |
Q. 「割り当てを超えました」というエラーが出て、グラフが表示されません。
A. GA4 の Data API の割り当て(一定の時間に使える量)を超えたことを示しています。グラフの数を減らす、ページを分ける、データの更新頻度を長くする(キャッシュを使う)、などで改善することがあります。多くの人が見るレポートや、複雑なグラフが多いレポートでは、BigQuery の集計テーブルを使う方法も検討しましょう(この部の第 5 章)。
Q. 複数の GA4 プロパティのデータを、1 つのグラフで合計できますか。
A. プロパティごとにデータソースを追加し、データの統合(ブレンド)を使うと、日付などをキーにして並べたり合計したりできます。ただし、ユーザー数は、プロパティをまたいだ重複を除けないため、単純に合計すると実際より多くなる点に注意しましょう。
Q. テンプレートを使ってもよいですか。
A. Looker Studio には、Google やほかのユーザーが作った テンプレート があります。最初の一歩としては便利ですが、自社の KPI に合わせて、不要なグラフを削り、必要な指標を足すことが大切です(次の章)。
実践ワーク
次の構成で、1 ページの簡単なレポートを作ってみましょう。
- 空のレポートを作り、自社の GA4 プロパティをデータソースとして追加する
- 上段に、スコアカードを 4 つ置く(ユーザー数、セッション数、エンゲージメント率、キーイベント数)。比較期間を「前の期間」にする
- 中段に、日別のセッション数の時系列グラフを置く
- 下段に、チャネル別のセッション数とキーイベント数の表を置く
- 右上に、期間設定コントロールと、デバイス カテゴリのプルダウン リストを置く
- レポートを閲覧者の権限で同僚に共有し、「見てわかるか」を聞く
作ったレポートを、GA4 の画面の同じ期間の数値と見比べ、違いがあれば、上の「よくある質問」の原因を確認しましょう。
まとめ
- Looker Studio は、GA4 や広告、スプレッドシートなどのデータを組み合わせて、伝えるためのダッシュボードを作れる無料ツール
- GA4 のコネクタでデータソースを接続する。Data API の割り当てやしきい値の制限がある
- スコアカード、時系列グラフ、棒グラフ、表などを、目的に合わせて使い分ける
- 期間設定やプルダウン リストのコントロールで、見る人が条件を切り替えられるようにする
- 共有するときは、データの認証情報、共有の範囲、データソースの所有者に注意する
次の章では、見る人が行動につなげられる、伝わるダッシュボードの設計の考え方を学びます。