11.4 個人情報を送らないための対策
この章で学ぶこと
- GA4 に個人情報が混ざってしまう、よくあるパターン
- 送ってしまった個人情報を削除する方法
- GA4 のデータの秘匿化(リダクション)の機能
- 個人情報を送らないための社内ルールの作り方
よくある混入パターン
Google アナリティクスの利用規約では、個人を特定できる情報(PII:Personally Identifiable Information)を Google に送ることが 禁止 されています。しかし、意図しないうちに、個人情報が GA4 に送られてしまう事故は、少なくありません。
パターン 1:URL のクエリ パラメータ
最も多いのが、URL に個人情報が含まれるケースです。GA4 は、ページの URL(page_location)をそのまま記録するため、URL の中の個人情報も送られてしまいます。
フォームの送信方法が GET になっている:
https://www.example.co.jp/thanks/?name=山田太郎&email=taro@example.com&tel=09012345678
メールマガジンのリンクに、メールアドレスが含まれている:
https://www.example.co.jp/campaign/?utm_source=newsletter&email=taro@example.com
パターン 2:ページのタイトル
マイページなどで、ページのタイトルにユーザーの名前を表示していると、page_title として記録されます。
<title>山田太郎 様のマイページ | Example</title>
パターン 3:イベントのパラメータ
GTM で、フォームの入力値や、画面の表示の内容を、イベントのパラメータとして送っているケースです。
| 例 | 問題 |
|---|---|
フォームのメールアドレスの入力欄の値を、form_email として送る | メールアドレスが送られる |
| クリックされた要素のテキスト(Click Text)を送ったら、ユーザー名が含まれていた | ユーザー名が送られる |
| サイト内検索のキーワードに、ユーザーが電話番号を入力した | 検索キーワードとして、電話番号が送られる |
パターン 4:User-ID
User-ID に、メールアドレス や 電話番号 をそのまま使っているケースです。User-ID には、社内の会員 ID など、それだけでは個人を特定できない値を使う必要があります。
注意 メールアドレスを ハッシュ化(暗号学的な変換)した値であっても、GA4 の通常のパラメータや User-ID として送ることは避けましょう。Google 広告の拡張コンバージョンなど、ハッシュ化したデータを送るための専用の仕組みがある場合は、その仕組みのルールに従います。
混入を見つける方法
| 確認する場所 | 探すもの |
|---|---|
| ページとスクリーン レポート(ページ パスとクエリ) | email=、mail=、tel=、name=、@ を含む URL |
| ページのタイトル | 「様」「さん」など、名前が含まれていそうなタイトル |
| サイト内検索のキーワード | @ や、数字の羅列(電話番号) |
| カスタム ディメンションの値 | 想定外の値 |
| BigQuery | event_params の string_value に、メールアドレスの形式の値がないか(正規表現で検索) |
-- BigQuery で、メールアドレスらしき値を含むイベントを探す
SELECT event_name, param.key, param.value.string_value
FROM `project.analytics_123456789.events_*`, UNNEST(event_params) AS param
WHERE _TABLE_SUFFIX BETWEEN '20261001' AND '20261027'
AND REGEXP_CONTAINS(param.value.string_value, r'[A-Za-z0-9._%+-]+@[A-Za-z0-9.-]+\.[A-Za-z]{2,}')
LIMIT 100
データの削除リクエスト
個人情報を送ってしまったことに気づいたら、まず 送信を止める(サイトや GTM を修正する)ことが最優先です。そのうえで、GA4 に保存されたデータを 削除 します。
削除の方法
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| データ削除リクエスト | 管理画面の「データの削除リクエスト」から、期間と対象(特定のパラメータなど)を指定して、データを削除する |
| ユーザー単位の削除 | ユーザー エクスプローラ(第 6 部)や User Deletion API で、特定のユーザーのデータを削除する |
| BigQuery のデータの削除 | BigQuery に出力したデータは、GA4 の削除リクエストでは消えないため、BigQuery 側で別に削除する |
データ削除リクエストの種類
| 種類 | 削除の範囲 |
|---|---|
| すべてのイベントのすべてのパラメータを削除 | 期間内のすべてのデータ(最も範囲が広い) |
| 選択したイベントのすべてのパラメータを削除 | 指定したイベントのデータ |
| すべてのイベントの選択したパラメータを削除 | 指定したパラメータ(例:page_location) |
| 選択したイベントの選択したパラメータを削除 | 指定したイベントの、指定したパラメータ |
| 選択したユーザー プロパティを削除 | 指定したユーザー プロパティ |
削除の流れ
- 送信の原因を修正し、新しいデータに個人情報が含まれないことを確認する
- 管理画面の「データの削除リクエスト」で、期間と範囲を指定してリクエストを作る
- プロパティの ほかの管理者 にも通知され、一定の猶予期間のあとに削除が実行される(猶予期間中は取り消しできる)
- 削除が完了したことを確認する
- BigQuery などに出力したデータも、必要に応じて削除する
注意 データの削除は、元に戻せません。また、削除の範囲を広くとると、分析に必要なデータまで消えてしまいます。削除の範囲は、個人情報が含まれる期間とパラメータに、できるだけ絞りましょう。
リダクション機能
GA4 には、ウェブのデータストリームで、送られてくるデータの中の 個人情報らしき部分を、自動的に取り除く(秘匿化する)機能があります。
データの秘匿化の設定
データストリームの設定の「データの秘匿化」(リダクション)で、次の項目を設定できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メールアドレス | メールアドレスの形式の文字列を、GA4 が受け取る前に取り除く |
| クエリ パラメータ | 指定した名前のクエリ パラメータ(例:email、tel、name)の値を取り除く |
秘匿化の前:https://www.example.co.jp/thanks/?email=taro@example.com&tel=09012345678
秘匿化の後:https://www.example.co.jp/thanks/?email=(redacted)&tel=(redacted)
(クエリ パラメータに email と tel を指定した場合のイメージ)
ポイント データの秘匿化は、あくまでも 万が一のための安全網 です。すべての個人情報のパターンを取り除けるわけではありません。まずは、サイトや GTM の設定で、個人情報を 送らない ようにすることが基本です。
サイト側での対策
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| フォームの送信方法を POST にする | 入力値が URL に含まれないようにする |
| URL に個人情報を含めない | メールのリンクや、システムの画面遷移で、URL に個人情報を入れない |
| ページのタイトルに個人情報を入れない | マイページなどのタイトルは、固定の文言にする |
| GTM で送る値を確認する | フォームの入力値や、画面のテキストを、そのまま送らない |
| GTM で URL を加工する | page_location から、個人情報を含むクエリ パラメータを取り除いて送る(カスタム JavaScript の変数などを使う) |
社内ルールの作り方
個人情報の混入は、担当者 1 人の注意だけでは防ぎきれません。チームのルール として決めておきましょう。
ルールの例
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 送ってはいけない情報の一覧 | 氏名、メールアドレス、電話番号、住所、生年月日、クレジット カードの番号、ログインの ID とパスワード、自由記述の入力値 |
| 計測の設計のレビュー | 新しいイベントやパラメータを追加するときは、送る値に個人情報が含まれないかを、別の人が確認する |
| 開発者への依頼の決まり | データレイヤーの依頼書に、「個人情報を入れないこと」を必ず書く(第 9 部) |
| 定期の点検 | 月 1 回、URL やカスタム ディメンションの値に、個人情報らしきものがないかを確認する(前の章) |
| 事故のときの手順 | 見つけたら誰に報告するか、送信の停止・データの削除・社内への報告の手順と担当者 |
事故のときの手順の例
1. 見つけた人は、すぐに計測の責任者に報告する
2. 責任者は、送信を止める(GTM のタグの停止、サイトの修正の依頼)
3. 影響の範囲(期間、データの種類、件数)を調べる
4. GA4 のデータ削除リクエスト、BigQuery のデータの削除を行う
5. 社内の個人情報の担当部門に報告し、必要な対応(社外への報告など)を判断してもらう
6. 原因と再発防止策を記録し、チームで共有する
注意 個人情報の漏えいなどが起きた場合には、内容によって、個人情報保護委員会への報告や、本人への通知が必要になることがあります。判断は、社内の個人情報の担当部門や専門家と相談して行いましょう。
まとめ
- URL のクエリ パラメータ、ページのタイトル、イベントのパラメータ、User-ID は、個人情報が混ざりやすい
- レポートや BigQuery で、メールアドレスらしき値などを定期的に探す
- 混入に気づいたら、まず送信を止め、データ削除リクエストで範囲を絞って削除する(BigQuery は別に削除する)
- データの秘匿化の機能で、メールアドレスや指定したクエリ パラメータを取り除けるが、あくまでも安全網
- 送ってはいけない情報の一覧、レビュー、定期点検、事故のときの手順を、社内ルールとして決めておく
これで第 11 部は終わりです。理解度クイズ で確認してみましょう。次の第 12 部では、ここまでの知識を使って、業種ごとの活用と、改善のサイクルの回し方を学びます。