11.3 データ品質の維持

計測の抜け漏れや異常値に早く気づく仕組みを作ります。
応用書籍換算 約 10 ページ

この章で学ぶこと

  • スパムやボット、社内のアクセスを除外する方法
  • 計測の状態を定期的に点検するチェックリスト
  • 異常検知とカスタム インサイトで、変化に早く気づく方法
  • サイトのリニューアルのときに、計測を壊さないための注意点

スパムとボットの除外

GA4 のデータには、実際のユーザーではないアクセスが混ざることがあります。

不要なアクセス内容主な対策
既知のボット・スパイダー検索エンジンのクローラーなどGA4 が自動で除外する(設定は不要で、無効にもできない)
社内のアクセス自社の従業員や制作会社のアクセス内部トラフィックのデータ フィルタ(第 2 部)
開発・テストのアクセステスト環境や、開発者の確認のアクセス開発者のトラフィックのフィルタ、テスト環境と本番の測定 ID を分ける
リファラー スパム・ゴースト スパム実際にはサイトに来ていないのに、偽のデータが送られる不審な参照元やホスト名をレポートで確認し、比較やセグメントで除外する
自社の決済サービスなどからの戻り決済のあとに戻ってきたセッションが、決済サービスからの参照として記録される除外する参照のリスト(第 2 部)

不審なデータの見つけ方

確認する項目不審なデータの特徴
ホスト名自社のドメインではないホスト名(別のサイトに、自社の測定 ID が勝手に設置されている、など)
参照元聞いたことのない参照元から、急にアクセスが増えている
エンゲージメントエンゲージメント率が 0% に近い、平均エンゲージメント時間が 0 秒に近い
地域・言語普段はほとんどない国や言語からの、急なアクセスの増加
時間帯深夜などに、短い時間に集中したアクセス

ポイント 自社のドメイン以外のホスト名からのデータが見つかった場合は、探索で「ホスト名」のディメンションを使い、セグメントや比較で除外して分析しましょう。GA4 のデータ フィルタでは、内部トラフィックと開発者のトラフィック以外の条件では除外できないため、レポートの段階で除外する必要があります。

フィルタはあとから元に戻せない

内部トラフィックのフィルタを 有効 にすると、条件に一致したデータは、GA4 に保存されません。あとから「やはり社内のアクセスも見たい」と思っても、元に戻すことはできません。フィルタは、まず テスト の状態にして、「テスト データのフィルタ名」のディメンションで、どのデータが除外されるかを確認してから有効にしましょう。

定期点検のチェックリスト

計測は、サイトの更新やタグの変更によって、気づかないうちに壊れることがあります。定期的な点検 で、早く気づけるようにしましょう。

毎週の点検

  • 主なイベント(page_view、キーイベント)の数が、前週から極端に変わっていない
  • (not set) や (direct) の割合が、急に増えていない
  • リアルタイム レポートで、データが届いている
  • キーイベントが 0 件の日がない

毎月の点検

  • 新しく公開したページやフォームが、計測されている
  • 新しく始めた広告やキャンペーンの UTM が、正しく判定されている
  • カスタム ディメンションに、意図しない値(空欄、表記の揺れ)が増えていない
  • GA4 の管理画面の「お知らせ」や「設定アシスタント」に、警告が出ていない
  • GTM で、意図しない変更が公開されていない(バージョンの履歴を確認する)

四半期ごとの点検

  • GA4 と GTM のユーザーと権限を見直す(退職者、契約が終わった会社)
  • 不要なタグや、使われていないカスタム ディメンションを整理する
  • 内部トラフィックの IP アドレスが変わっていないか確認する
  • データの保持期間、Google シグナル、BigQuery のリンクなどの設定を確認する
  • プライバシー ポリシーと外部送信の公表が、実際のタグと一致しているか確認する

点検の結果を記録する

記録すること例
点検の日付と担当者2026-10-28 佐藤
見つかった問題9 月 3〜5 日、資料請求のキーイベントが 0 件
原因フォームの改修で、サンクス ページの URL が変わった
対応GTM のトリガーの条件を修正し、9 月 6 日に公開
影響9 月 3〜5 日のキーイベントは計測されていない。レポートに注記する

注意 GA4 では、過去のデータを修正したり、計測されなかったデータを後から追加したりすることは、基本的にできません。問題が起きた期間は、注釈(GA4 のレポートの注釈の機能)や作業ログに記録し、レポートを見る人に伝えられるようにしましょう。

異常検知とカスタム インサイト

GA4 には、データの 異常な変化 を自動的に見つけて知らせる機能があります。

自動のインサイト

GA4 は、機械学習を使って、データの中の 異常な変化(急な増加・減少)や、注目すべき傾向を見つけ、ホームの画面や「インサイト」の一覧に表示します。

インサイトの例内容
異常の検出「昨日、Organic Search のセッション数が、予測より 45% 少なかった」
傾向「過去 4 週間で、スマホのユーザーの割合が増えている」

カスタム インサイト

カスタム インサイト を使うと、自分で決めた条件で、変化があったときに メールで通知 を受け取れます。

例 1:キーイベントの急な減少
評価の頻度:毎日
条件:キーイベント数 が 前日比で 50% 以上減少
通知:メールで担当者に送る

例 2:ページの表示の異常
評価の頻度:毎日
条件:表示回数 に 異常がある(GA4 の異常検知を使う)
セグメント:すべてのユーザー
設定内容
評価の頻度毎時(ウェブのみ)、毎日、毎週、毎月
セグメント対象(すべてのユーザー、国、デバイスなど)
指標と条件「異常がある」「〜を上回る」「〜を下回る」「〜% 以上増加・減少」
通知メールアドレスを指定して通知する

ポイント 最初は、最も重要なキーイベント と 全体のセッション数 の 2 つについて、カスタム インサイトを設定しておくのがおすすめです。通知が多すぎると、見なくなってしまうので、本当に対応が必要な変化だけを通知するようにしましょう。

リニューアル時の注意

サイトのリニューアル(デザインの変更、CMS の移行、URL の変更など)は、計測が壊れやすい タイミングです。

よくある問題

問題原因
計測が止まる新しいテンプレートに、GTM や GA4 のコードを入れ忘れた
キーイベントが 0 件になるサンクス ページの URL や、フォームの ID・class が変わり、トリガーの条件に一致しなくなった
クリックの計測が止まるボタンの ID や class が変わった
二重計測新しいテンプレートと GTM の両方に、GA4 のタグが入った
流入元が (direct) に変わるリダイレクトで UTM や gclid が消えた
ページ別の比較ができないURL の構造が変わり、リニューアルの前と後で、同じページが別の URL になった

リニューアルの前・当日・後にすること

時期すること
前現在の計測の一覧(イベント、トリガーの条件、キーイベント)を作る。新旧の URL の対応表を作る。テスト環境で計測を確認する
当日公開の直後に、リアルタイム レポートと DebugView で、主なイベントとキーイベントを確認する
後(1 週間)毎日、主なイベントの数を前週と比べる。(not set)、(direct) の割合を確認する
後(1 か月)リニューアルの前後で、主な指標を比べる。注釈に、リニューアルの日を記録する

注意 リニューアルのプロジェクトでは、計測のことが後回しになりがちです。要件の段階から計測の担当者が参加 し、「計測の確認」を公開の条件(チェックリスト)に入れてもらいましょう。

よくある質問

Q. ボットのアクセスが除外されていないように見えます。

A. GA4 が自動で除外するのは、業界で知られているボットやスパイダーです。新しいボットや、普通のブラウザのふりをするボットは、除外されないことがあります。この章の「不審なデータの見つけ方」で特徴を確認し、セグメントや比較で除外して分析しましょう。ボットのアクセスが非常に多い場合は、サイト側(サーバーやセキュリティのサービス)での対策も検討します。

Q. 点検のチェックリストを続けるのが大変です。

A. 最初から全部の項目を点検しようとせず、キーイベントの数 と 全体のセッション数 の 2 つだけでも、毎週確認する習慣を作りましょう。カスタム インサイトで自動の通知を設定すれば、異常がない週は、通知を確認するだけで済みます。慣れてきたら、項目を増やしていきます。

Q. カスタム インサイトの通知が多すぎます。

A. 条件が敏感すぎる可能性があります。「前日比で 20% 減少」のような条件は、曜日の変動だけで通知されることがあります。週単位の評価にする、変化の割合を大きくする、重要な指標だけに絞る、などで調整しましょう。

Q. リニューアルで URL が変わったページを、前後で比べるにはどうすればよいですか。

A. 新旧の URL の対応表を作り、探索や Looker Studio で、旧 URL と新 URL を同じページとしてまとめて集計します。Looker Studio の計算フィールド(CASE 文)を使うと、旧 URL を新 URL に置き換えて表示できます(第 10 部)。また、content_group のパラメータでページの種類を送っておくと、URL が変わってもページの種類ごとの比較がしやすくなります。

実践ワーク

自社のプロパティで、データ品質の「健康診断」をしてみましょう。

  1. 探索で、ディメンションに「ホスト名」を追加し、過去 3 か月のセッション数を表示する。自社のドメイン以外のホスト名がないか確認する
  2. ディメンションを「セッションの参照元」にして、知らない参照元から急にアクセスが増えていないか確認する
  3. 日別のキーイベント数を表示し、0 件の日や、急に増減した日がないか確認する
  4. 主要なキーイベントについて、カスタム インサイトを 1 つ設定する
  5. 結果を、この章の「点検の結果を記録する」の形で記録する

問題が見つからなかった場合も、「点検したが問題なし」と記録しておくことが大切です。あとで問題が見つかったとき、いつまでは正常だったかを判断する材料になります。

まとめ

  • 既知のボットは自動で除外され、社内のアクセスはデータ フィルタで、スパムはレポートの段階で除外する
  • データ フィルタは、有効にすると元に戻せないので、テストの状態で確認してから有効にする
  • 毎週・毎月・四半期ごとのチェックリストで、計測の状態を定期的に点検し、結果を記録する
  • カスタム インサイトで、キーイベントの急な減少などを、メールで通知してもらう
  • サイトのリニューアルでは、事前の計測の一覧、当日の確認、公開後の比較で、計測が壊れないようにする

次の章では、URL やイベントに個人情報が混ざってしまう事故を防ぐ方法を学びます。