12.2 レポーティングと社内への伝え方

数値を「行動につながる報告」に変えます。
応用書籍換算 約 10 ページ

この章で学ぶこと

  • 月次レポートの基本の型
  • 結論から書く、伝わる報告の書き方
  • 伝えたい内容に合ったグラフの選び方
  • 経営層への報告のポイント

月次レポートの型

アクセス解析の結果は、多くの場合、月次レポート として社内に共有されます。毎月同じ 型 で作ると、作る手間が減り、読む人も前の月と比べやすくなります。

月次レポートの構成の例

順番項目内容
1今月のまとめ結論を 3 行程度で(良かったこと、課題、次の行動)
2KGI・KPI の実績目標値、実績、目標比、前月比、前年同月比
3変化の要因数値が大きく変わった理由(チャネル、ページ、施策など)
4施策の結果今月実施した施策と、その効果
5課題と次の行動来月に行うこと、担当者、期限
6補足計測の変更・不具合、指標の定義、詳細なデータ

「今月のまとめ」の例

【今月のまとめ】
・問い合わせ数は 152 件(目標比 101%、前年同月比 +18%)で、目標を達成しました
・増加の主な要因は、9 月に公開した比較記事 3 本からの問い合わせ(計 21 件)です
・一方、スマホのフォームの完了率が 38% と低く(パソコンは 62%)、来月はスマホのフォームの改善に取り組みます

(数値は例)

ポイント 月次レポートは「数値の一覧」ではなく、「数値から何がわかり、次に何をするか」を伝える文書 です。読む人が、まとめの部分だけを読んでも、状況と次の行動がわかるようにしましょう。

結論から書く

忙しい人ほど、報告の 最初の数行 しか読みません。報告は、結論から書く のが基本です。

結論から書く構成(PREP)

順番内容例
Point(結論)最も伝えたいこと「比較記事からの問い合わせが増えており、比較記事を追加で 3 本作ることを提案します」
Reason(理由)結論の根拠「9 月に公開した比較記事 3 本から、1 か月で 21 件の問い合わせがありました」
Example(具体例・データ)根拠を裏付けるデータ「比較記事の問い合わせ率は 2.4% で、ブログ全体の平均 0.8% の 3 倍です」
Point(結論の繰り返し)結論と、求める行動「来月、比較記事を 3 本追加する予算と体制の承認をお願いします」

「事実」「解釈」「提案」を分ける

報告では、事実(データで確認できたこと)、解釈(事実から考えたこと)、提案(次にすべきこと)を、はっきり分けて書きましょう。

種類例
事実スマホのフォームの完了率は 38%、パソコンは 62% だった
解釈スマホでは、入力項目が多く、入力しにくいことが原因と考えられる(フォームの項目ごとの離脱のデータより)
提案スマホのフォームの項目を減らし、住所の自動入力を導入する

注意 「〜と思われる」「〜の可能性がある」といった解釈を、事実のように書くと、間違った判断につながります。逆に、事実だけを並べて解釈や提案がないと、読む人は「それで、どうすればいいのか」がわかりません。

数値の書き方

ポイント悪い例良い例
比べる基準を付ける問い合わせ数は 152 件問い合わせ数は 152 件(目標比 101%、前年同月比 +18%)
率と件数の両方を書く問い合わせ率が 50% 増加問い合わせ率が 0.8% から 1.2% に増加(件数は 100 件 → 152 件)
単位をそろえる2.4% と 0.0082.4% と 0.8%
「ポイント」と「%」を区別する1.2% から 1.6% に、0.4% 増加1.2% から 1.6% に、0.4 ポイント増加(33% 増加)
桁を読みやすく12345671,234,567(約 123 万)

グラフの選び方

グラフは、何を伝えたいか によって選びます。

伝えたいこと向いているグラフ例
推移(時間による変化)折れ線グラフ月別の問い合わせ数の推移
項目どうしの比較棒グラフ(横棒)チャネル別のキーイベント数
構成比(項目が少ない)円グラフ、100% 積み上げ棒グラフデバイスの割合
構成比の推移積み上げ棒グラフ、100% 積み上げ棒グラフ月別のチャネルの構成比の推移
2 つの指標の関係散布図ページ別の表示回数とエンゲージメント率
段階ごとの減少ファネル グラフ(横棒)商品の閲覧 → カート → 購入
目標に対する達成度ブレット チャート、進捗のバー問い合わせ数の目標の達成率

グラフを伝わりやすくするポイント

  • グラフのタイトルに結論を書く:「チャネル別のキーイベント数」ではなく、「Organic Search が全体の 45% を占める」
  • 強調したい部分だけに色を付ける:ほかの項目はグレーにする
  • 項目は大きい順に並べる:棒グラフの項目は、値の大きい順に並べる(時系列や順番に意味がある場合を除く)
  • 軸を 0 から始める:棒グラフの軸を途中から始めると、差が実際より大きく見える
  • 3D のグラフを使わない:見た目は目立つが、値が読み取りにくい

ポイント 1 つのグラフで伝えることは、1 つ に絞りましょう。複数のことを伝えたい場合は、グラフを分けたほうが伝わります。

経営層への報告

経営層への報告では、担当者どうしの報告とは違う工夫が必要です。

経営層が知りたいこと

知りたいこと報告の内容
事業の目標に対して順調か売上・リード数など、KGI の達成状況
投資に見合う効果があるか広告費やサイトの改修費に対する成果(ROAS、CPA、ROI)
何を判断すればよいか承認してほしいこと(予算、体制、方針)
リスクはないか目標の未達の見込み、競合の動き、法規制の影響

報告のポイント

ポイント内容
ウェブ解析の専門用語を避ける「エンゲージメント率」「セッション」ではなく、「興味を持って見てくれた人の割合」「訪問数」など、ビジネスの言葉で説明する
ビジネスの数値と結びつける「問い合わせが 20 件増えた」だけでなく、「成約率から見込むと、売上で約 800 万円の増加が期待できる」
判断してほしいことを明確に報告の最初に、「本日は、〇〇の承認をお願いしたい」と伝える
選択肢を示す提案は 1 つだけでなく、複数の選択肢(例:A 案、B 案、現状維持)と、それぞれの効果・費用・リスクを示す
1 枚にまとめる詳細は補足の資料に回し、本体は 1 枚(または数枚)にまとめる

1 枚の報告の例

【ウェブ経由の問い合わせ 2026 年 9 月】

■ 結論
問い合わせ数は目標を達成(152 件、目標比 101%)。
比較記事が好調なため、比較記事の追加制作(30 万円)の承認をお願いします。

■ 実績
問い合わせ数 152 件(目標 150 件、前年同月比 +18%)
うち成約見込み(営業の評価 A・B)64 件(前年同月比 +25%)

■ 要因
9 月公開の比較記事 3 本から 21 件。問い合わせの質も高い(成約見込みの割合 57%)

■ 提案
比較記事を 3 本追加(制作費 30 万円)→ 月 15〜20 件の問い合わせの増加を見込む

■ 課題
スマホのフォームの完了率が低い(38%)。来月、改善を実施(社内対応、費用なし)

(数値は例)

注意 経営層への報告で、数値を 良く見せようとして、都合の良い期間や指標だけを選ぶのは避けましょう。悪い数値も正直に報告し、その原因と対策を示すほうが、長期的な信頼につながります。

よくある質問

Q. 月次レポートを作るのに、毎月丸 1 日かかってしまいます。

A. 時間がかかる作業の多くは、数値を集める 作業です。数値の集計は、Looker Studio のダッシュボードや、BigQuery のスケジュールされたクエリで自動化し(第 10 部)、人は「今月のまとめ」と「要因の説明」を書くことに時間を使いましょう。型を決めておけば、毎月同じ場所の数値を確認するだけで済むようになります。

Q. 数値が悪い月の報告は、どう書けばよいですか。

A. 悪い数値ほど、最初に、はっきり 書きましょう。そのうえで、「原因の分析」「すでに行った対応」「来月の対策」をセットで示します。原因がまだわからない場合は、「〇〇と△△の可能性を調べており、□日までに報告します」と、調査の計画を書きます。悪い数値を後ろのページに隠すと、あとで気づかれたときに信頼を失います。

Q. 報告を読んでもらえません。

A. 読む人が知りたいことと、報告の内容がずれている可能性があります。報告の相手に、「この報告で、何がわかるとうれしいか」を一度聞いてみましょう。また、メールやチャットで送る場合は、本文に結論の 3 行 を書き、詳細は添付やリンクにするだけで、読まれる割合は大きく変わります。

Q. 専門用語をどこまで使ってよいですか。

A. 読む人が ふだん使っている言葉 に合わせます。社内で「CV」という言葉が定着しているなら使って構いませんが、GA4 の「キーイベント」のように新しい用語を使う場合は、最初に一度説明を添えましょう。用語の定義をレポートの末尾にまとめておくのも有効です。

実践ワーク

先月の自社のサイトの数値をもとに、次の形式で「今月のまとめ」を 3 行で書いてみましょう。

【今月のまとめ】
・(結論)主な KPI が、目標や前年に対してどうだったか
・(要因)変化の主な理由は何か(データの根拠を 1 つ添える)
・(次の行動)来月、何をするか(誰が、いつまでに)

書いたら、次の点を見直します。

  1. 数値に、比べる基準(目標、前年同月など)が付いているか
  2. 事実と解釈が混ざっていないか(「〜と考えられる」と書くべきところを、断定していないか)
  3. 次の行動が具体的か(「改善する」ではなく、「スマホのフォームの項目を 12 個から 6 個に減らす」)
  4. GA4 を知らない人が読んでも、意味がわかるか

可能なら、同僚に読んでもらい、「この 3 行で何がわかったか」を言ってもらいましょう。自分が伝えたかったことと同じなら、伝わる報告になっています。

まとめ

  • 月次レポートは、まとめ・実績・要因・施策の結果・次の行動・補足の型で、毎月同じ構成で作る
  • 報告は結論から書き、事実・解釈・提案を分ける。数値には比べる基準を付け、ポイントと % を区別する
  • グラフは伝えたいことに合わせて選び、タイトルに結論を書き、強調したい部分だけに色を付ける
  • 経営層には、専門用語を避け、ビジネスの数値と結びつけ、判断してほしいことと選択肢を明確に示す

次の章からは、業種ごとに、GA4 の具体的な活用のシナリオを紹介します。最初は EC サイトです。