13.1 トラブルシューティング集
この章で学ぶこと
- GA4 でよくあるトラブルの症状と、確認すべきこと
- 症状から原因を探す「逆引き」の使い方
この章は、困ったときに引く 逆引きの資料 です。症状に近い節を開き、上から順に確認していきましょう。詳しい説明は、各項目の参照先の部・章を読み返してください。
データが表示されない
症状:レポートにまったくデータが表示されない
| 確認すること | 確認の方法 | 参照 |
|---|---|---|
| タグが設置されているか | ページのソースや、Tag Assistant で、GA4 の Google タグ(または GTM)が読み込まれているかを確認する | 第 2 部 |
| 測定 ID が正しいか | タグの測定 ID(G-XXXXXXXXXX)が、GA4 のデータストリームの測定 ID と一致しているか | 第 2 部 |
| GTM が公開されているか | GTM で設定しただけで、「公開」していないことがある | 第 9 部 |
| プロパティを間違えていないか | GA4 の画面の上部で、見ているアカウント・プロパティが正しいか | 第 2 部 |
| データの反映を待っているか | 標準レポートへの反映には、24〜48 時間かかることがある。まずリアルタイム レポートで確認する | 第 5 部 |
| 同意モードで拒否されていないか | Cookie バナーで同意する前は、計測されない設定になっていないか | 第 11 部 |
| フィルタで除外されていないか | 内部トラフィックのフィルタが、自分以外のアクセスも除外していないか | 第 2 部、第 11 部 |
症状:リアルタイムには出るが、標準レポートに出ない
- 処理の遅れ:24〜48 時間待つ
- 期間の選択:レポートの期間に、今日が含まれていない
- しきい値:ユーザー数が少なく、Google シグナルが有効な場合、データが隠されることがある(第 3 部)
症状:特定のイベントだけが表示されない
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| イベント名の表記 | 大文字・小文字、スペース、ハイフンとアンダースコアの違い(GA4 は大文字・小文字を区別する) |
| トリガーの条件 | GTM のトリガーの条件が、実際の要素と一致しているか(ID や class が変わっていないか) |
| DebugView | GTM のプレビュー モードと、GA4 の DebugView で、イベントが送られているかを確認する |
| カスタム ディメンションの登録 | パラメータの値がレポートに表示されない場合は、カスタム ディメンションに登録したか(登録より前のデータは表示されない) |
| イベントの上限 | イベント名やパラメータの数、文字数の上限を超えていないか |
数値が急に増えた・減った
数値の急な変化は、計測の問題 なのか、実際のユーザーの行動の変化 なのかを、まず切り分けます。
切り分けの手順
1. いつから変わったか(日付を特定する)
↓
2. どこで変わったか(チャネル、ページ、デバイス、地域、ホスト名で分解する)
↓
3. その日に何があったか(サイトの更新、GTM の公開、広告・メールの配信、ニュース、障害)
↓
4. 計測の問題か、行動の変化か判断する
数値が急に増えた
| 考えられる原因 | 確認すること |
|---|---|
| 二重計測 | GTM と HTML の両方に GA4 のタグがある、同じイベントを GTM と拡張計測機能の両方で送っている。セッションあたりの表示回数が急に 2 倍になっていないか |
| スパム・ボット | 特定の参照元・地域・ホスト名からのアクセスが急増していないか。エンゲージメント率が極端に低くないか |
| 社内のアクセス | テストや社内の確認のアクセスが、除外されずに入っていないか |
| 実際の増加 | 広告・メール・SNS の施策、テレビや記事での紹介、検索の順位の上昇 |
数値が急に減った
| 考えられる原因 | 確認すること |
|---|---|
| タグの削除・変更 | サイトの更新やリニューアルで、タグが消えていないか。GTM で誤った変更を公開していないか(バージョンの履歴) |
| トリガーの条件の不一致 | サンクス ページの URL、フォームやボタンの ID・class が変わっていないか |
| 同意モードの変更 | Cookie バナーの導入・変更で、同意する人が減っていないか |
| フィルタの変更 | 内部トラフィックのフィルタの条件が広すぎないか |
| 実際の減少 | 広告の停止、検索の順位の低下、季節、競合の施策、サイトの障害 |
ポイント 原因を探すときは、ホスト名、デバイス カテゴリ、ブラウザ でも分解してみましょう。「特定のブラウザだけ減った」「特定のホスト名だけ増えた」という場合は、計測の問題である可能性が高くなります。
(not set) が多い
(not set) は、そのディメンションの値が 取得できなかった ことを表します(第 4 部)。
| ディメンション | (not set) になる主な原因 | 対策 |
|---|---|---|
| ランディング ページ | セッションの最初に page_view がない(タグの発火の順番、セッションの途中でタイムアウトして再開したなど) | Google タグを Initialization のトリガーにする。ページの表示より先にイベントが送られていないか確認する |
| セッションの参照元 / メディア、チャネル | セッションの開始の情報が取れなかった。Measurement Protocol で送ったイベント | タグの設置の順番を確認する。Measurement Protocol で client_id、session_id を正しく送る |
| キャンペーン | UTM のキャンペーンが付いていない流入 | 自然検索や参照の流入では、(not set)・(organic)・(referral) になるのが普通 |
| Google 広告のキャンペーンなど | GA4 と Google 広告のリンクがない、自動タグ設定が無効、gclid がリダイレクトで消えた | リンクと自動タグ設定を確認する(第 8 部) |
| カスタム ディメンション | そのイベントに、そのパラメータが送られていない | すべてのイベントに付くわけではないパラメータは、(not set) が出るのが普通 |
| 地域 | IP アドレスから地域を判定できなかった | 改善は難しい |
| 商品名などの items | EC のイベントに items が含まれていない、項目の名前が違う | データレイヤーの形を、推奨イベントの形に合わせる(第 7 部、第 9 部) |
注意 (not set) を ゼロにする必要はありません。数%程度の (not set) は、多くのサイトで見られます。急に増えた場合や、割合が大きい場合に、原因を調べましょう。
他ツールと数値が合わない
GA4 と、ほかのツールの数値は、ほとんどの場合、完全には一致しません。数え方の違いによる差なのか、計測の問題なのかを見分けることが大切です。
よくある組み合わせと、主な原因
| 比べるツール | 主な原因 | 参照 |
|---|---|---|
| UA(ユニバーサル アナリティクス) | セッションの数え方(日付の変わり目、キャンペーンの変化)、直帰率とエンゲージメント率の定義の違い | 第 1 部、第 4 部 |
| Google 広告 | 日付の基準(クリック日と発生日)、アトリビューション、ビュースルー、対象のチャネル | 第 8 部 |
| ほかの広告媒体 | 各媒体が自社の成果として数える(重複)、ビュースルー、計測の方法 | 第 8 部 |
| Search Console | クリックとセッションの違い、Google 以外の検索エンジン、タイムゾーン | 第 8 部 |
| 基幹システム・EC の管理画面の売上 | 計測の漏れ(同意の拒否、広告ブロッカー)、キャンセル・返品、税・送料の扱い、重複の計測 | 第 7 部、第 12 部 |
| BigQuery | 推定のアルゴリズム、レポート用識別子、モデリング、しきい値 | 第 10 部 |
| Looker Studio | データソースの設定、比率の集計の方法、期間・フィルタの設定の違い | 第 10 部 |
| ほかのアクセス解析ツール | ユーザーやセッションの定義、ボットの除外、タグの発火のタイミング | — |
差を見るときの考え方
| 差の状態 | 考えられること | 対応 |
|---|---|---|
| 差が一定(例:常に 10% 程度少ない) | 数え方の違いによる、構造的な差 | 差の理由を説明できるようにして、それぞれのツールの中で推移を見る |
| 差が急に変わった | どちらかのツールの計測が変わった、壊れた | 差が変わった日に、何があったかを調べる |
| 差が非常に大きい(例:半分以下) | 計測の漏れ、二重計測、設定の誤り | タグの設置、イベントの設定、ツールの設定を確認する |
ポイント 社内で「どちらの数値が正しいのか」という議論になったら、「どちらも、それぞれの定義では正しい」ことを説明し、目的ごとに使うツールを決める ことを提案しましょう。たとえば、売上の実績は基幹システム、チャネルの比較は GA4、広告の入札の最適化は広告媒体、というように使い分けます。
調査を依頼するときのテンプレート
自分で原因がわからない場合は、社内の詳しい人や、制作会社、コンサルタントなどに調査を依頼します。次の情報を添えると、調査が早く進みます。
【症状】例:9 月 3 日から、資料請求のキーイベントが 0 件になっている
【いつから】例:2026-09-03 から(9 月 2 日までは 1 日 5〜10 件)
【どこで】例:すべてのデバイス、すべてのチャネル
【その時期の出来事】例:9 月 2 日に資料請求のフォームを改修した
【確認したこと】例:リアルタイム レポートで page_view は届いている。GTM のプレビュー モードでは、generate_lead のタグが発火しない
【見てほしいこと】例:GTM のトリガーの条件が、改修後のフォームに合っているか
【共有できる情報】GA4 のプロパティ ID、GTM のコンテナ ID、該当のページの URL
ポイント 「数値がおかしい」だけでは、調査する人は何から見ればよいかわかりません。いつから、どこで、何が 変わったのか、そして 自分で何を確認したか を伝えることが、早く解決するための近道です。
予防のための習慣
トラブルの多くは、変更のとき に起きます。次の習慣を身につけると、トラブルを減らせます。
| 習慣 | 内容 | 参照 |
|---|---|---|
| 変更を記録する | GA4 の設定の変更、GTM の公開、サイトの改修を、日付とともに記録する | 第 9 部、第 11 部 |
| 変更の前後で確認する | 変更の直後にリアルタイムと DebugView、翌日に標準レポートを確認する | 第 2 部 |
| 異常の通知を設定する | 主要なキーイベントとセッション数に、カスタム インサイトを設定する | 第 11 部 |
| 定期的に点検する | 週次・月次・四半期のチェックリストで点検する | 第 11 部 |
| 計測の設計書を最新に保つ | どのイベントを、どの条件で計測しているかを、文書にしておく | 第 1 部、第 3 部 |
まとめ
- データが表示されないときは、タグの設置・測定 ID・GTM の公開・反映の待ち時間・同意・フィルタの順に確認する
- 数値の急な変化は、日付 → 場所 → その日の出来事の順に切り分け、計測の問題か行動の変化かを判断する
- (not set) は値が取れなかったことを表し、ゼロにする必要はないが、急増や大きな割合のときは原因を調べる
- ほかのツールとの数値の差は、一定の差か、急に変わった差か、大きすぎる差かで、対応を変える
次の章では、この講座を終えたあとの学習のロードマップと、公式の資格を紹介します。