1.3 GA4 でわかること・わからないこと
この章で学ぶこと
- GA4 で把握できる 4 つの領域
- GA4 で個人を特定する分析ができない理由
- GA4 の数値が 100% 正確にはならない理由
- ほかのツールと組み合わせて使う考え方
- 初心者が抱きがちな誤解とその答え
GA4 で把握できる 4 つの領域
第 1 章で、アクセス解析が答えられる問いを「誰が」「どこから」「何を」「成果につながったか」の 4 つに分けました。GA4 では、これらがそれぞれ次のようなデータとして手に入ります。
1. ユーザー(誰が来ているか)
- ユーザー数(アクティブ ユーザー、新規ユーザー、リピーター)
- 地域(国、都道府県、市区町村)、言語
- デバイス(パソコン、スマホ、タブレット)、OS、ブラウザ、画面の解像度
- 年齢、性別、興味・関心(Google シグナルを有効にした場合など、一定の条件下)
- 初めて訪れた日、何回目の訪問か
2. 集客(どこから来ているか)
- 参照元(google、yahoo、facebook.com など)とメディア(organic、cpc、referral など)
- チャネル(自然検索、有料検索、SNS、メール、ノーリファラーなど)
- キャンペーン名(UTM パラメータで指定した場合)
- Google 広告のキャンペーンやキーワード(Google 広告と連携した場合)
- Google 検索のクエリ(Search Console と連携した場合)
3. 行動(何をしているか)
- 表示されたページ、スクリーン(アプリの画面)とその回数
- 最初に見たページ(ランディング ページ)
- スクロール、外部リンクのクリック、ファイルのダウンロード、動画の再生など
- サイト内検索のキーワード
- エンゲージメント時間(ページが画面の前面に表示されていた時間)
4. 成果(成果につながったか)
- キーイベント(問い合わせ、会員登録、資料請求など)の件数と発生率
- 購入件数、売上金額、商品ごとの売上(e コマース計測を実装した場合)
- アプリ内課金、広告収益(アプリの場合)
- 成果につながったチャネルの貢献度(アトリビューション)
重要なのは、1 と 2 の多くは導入するだけで自動的に取れる のに対して、3 の一部と 4 は自分で設定や実装をしないと取れない ということです。たとえば「問い合わせフォームの送信」は、GA4 にとっては単なるページの表示やクリックにすぎません。どれが成果なのかを GA4 に教えるのは、私たちの仕事です。
| 区分 | 導入するだけで取れる | 設定や実装が必要 |
|---|---|---|
| ユーザー | ユーザー数、地域、デバイス | 年齢・性別(Google シグナルの有効化)、会員属性(ユーザー プロパティ) |
| 集客 | 参照元、メディア、チャネル | キャンペーン(UTM)、広告詳細(広告連携)、検索クエリ(Search Console 連携) |
| 行動 | ページ表示、スクロール、離脱クリックなど | ボタンのクリック、フォーム操作の詳細など |
| 成果 | — | キーイベントの設定、e コマース計測 |
個人を特定する分析はできない
GA4 を使い始めた人からよく出る質問に、「〇〇さんがどのページを見たのか知りたい」「問い合わせてきた会社が、どのページを見てから問い合わせたのか知りたい」というものがあります。
結論から言うと、GA4 では特定の個人を識別して分析することはできませんし、してはいけません。
利用規約での禁止
Google アナリティクスの利用規約では、個人を特定できる情報(PII:Personally Identifiable Information)を Google に送信することが禁止されています。PII には、氏名、メールアドレス、電話番号、住所などが含まれます。
うっかりやってしまいがちなのが、URL にメールアドレスなどが含まれるケースです。
https://example.com/thanks?email=taro@example.com
このような URL のページを GA4 で計測すると、ページの URL として PII が GA4 に送信されてしまいます。フォームの設計やパラメータの扱いには注意が必要です(第 11 部で詳しく解説します)。
GA4 が持っている「ユーザー」の正体
では、GA4 のレポートに出てくる「ユーザー」とは何なのでしょうか。GA4 は基本的に、ブラウザの Cookie に保存された ランダムな識別子(クライアント ID) でユーザーを区別しています。
_ga = GA1.1.1234567890.1730000000
この識別子は「このブラウザは前にも来たことがある」ことを示すだけで、それが誰なのかという情報は含まれていません。そのため、次のような現象が起こります。
- 同じ人がパソコンとスマホで訪れると、2 人のユーザーとして数えられる
- 同じパソコンを家族で共有していると、1 人のユーザーとして数えられる
- Cookie を削除したり、シークレット モードで訪れたりすると、新しいユーザーとして数えられる
つまり GA4 の「ユーザー数」は、厳密には「人の数」ではなく「ブラウザやアプリの数に近いもの」です。User-ID や Google シグナルを使うと、デバイスをまたいだ同一人物の推定精度を高められますが、それでも個人を特定する仕組みではありません(第 3 部で詳しく解説します)。
ポイント 「誰が」を知りたいときは、GA4 ではなく CRM(顧客管理システム)や MA(マーケティング オートメーション)ツールの役割です。GA4 は「どんな傾向の人たちが」「どのように」行動しているかを見るツールだと割り切りましょう。
データが 100% 正確ではない理由
GA4 の数値は、サイトに訪れたすべての人の、すべての行動を正確に記録したものではありません。主な理由は次のとおりです。
| 原因 | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 広告ブロッカー | ブラウザの拡張機能などで GA4 のタグがブロックされる | 計測されないユーザーが出る |
| Cookie の同意拒否 | Cookie バナーで拒否されると、計測が制限される | 計測されない、または推計値になる |
| ブラウザの追跡防止機能 | Safari の ITP などで Cookie の保存期間が短くなる | リピーターが新規ユーザーとして数えられる |
| JavaScript の無効化 | ブラウザで JavaScript を無効にしている | 計測されない |
| タグの読み込み前の離脱 | タグが動く前にページを閉じる | 計測されない |
| しきい値 | 少人数のデータが非表示になる | レポートの一部が表示されない |
| サンプリング | 大量データの一部から推計する | 探索レポートで推計値になることがある |
| ボット | 一部のボットは除外しきれない | 不自然な数値が混ざることがある |
これらを踏まえると、GA4 の数値は「真の値」から数%〜数十%ずれていることもある、と考えておくのが現実的です。特に、広告ブロッカーの利用率が高い技術系のサイトや、Cookie 同意を厳格に取っているサイトでは、その差が大きくなります。
数値が正確でなくても役に立つ理由
「正確でないなら意味がないのでは?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。アクセス解析で大切なのは、多くの場合 絶対値よりも相対値(比較や変化) だからです。
- 先月と比べて増えたか、減ったか
- チャネル A とチャネル B では、どちらの成果率が高いか
- 改善前と改善後で、離脱率は下がったか
計測できない割合が大きく変わらない限り、こうした比較は十分に意味を持ちます。体重計が 500g ずれていても、毎日同じ体重計で測っていれば、増えたか減ったかはわかるのと同じです。
注意 一方で、売上金額や注文件数のように「正確な数字」が必要なものは、GA4 ではなく基幹システムや EC の管理画面の数値を正としましょう。GA4 の売上は、あくまでサイト上の行動と結びつけて分析するための参考値です。
ほかのツールと組み合わせる発想
GA4 だけで、サイトに関するすべての疑問に答えられるわけではありません。GA4 の弱いところは、ほかのツールで補うのが効率的です。
| 知りたいこと | GA4 で足りない点 | 補うツール |
|---|---|---|
| どんなキーワードで検索されたか | 検索クエリはほぼ取得できない | Google Search Console |
| ページのどこがよく見られているか | ページ内の位置はわからない | ヒートマップツール(Microsoft Clarity など) |
| なぜ離脱したのか | 理由はわからない | アンケート、ユーザーテスト |
| 広告がどれだけ表示されたか | 表示回数や費用は持っていない | 各広告媒体の管理画面 |
| 問い合わせ後に受注したか | サイト外のことはわからない | CRM / SFA |
| 競合サイトと比べてどうか | 自社サイトのデータしかない | 市場調査ツール、業界統計 |
このうち Search Console、Google 広告、BigQuery、Looker Studio は、GA4 と直接連携できる Google のツールです。本講座でも第 8 部と第 10 部で詳しく扱います。
よくある誤解 Q&A
最後に、GA4 の初心者が抱きがちな誤解を Q&A 形式で整理します。
Q1. GA4 を入れれば、自動的にサイトが改善されますか?
いいえ。GA4 はデータを集めて見せてくれるだけで、改善策を考えて実行するのは人間です。ただし、GA4 の「インサイト」機能は、数値の異常な変化を自動で知らせてくれるので、気づきのきっかけにはなります。
Q2. GA4 と各広告媒体の管理画面で、コンバージョン数が一致しません。どちらかが間違っていますか?
どちらも間違っていない可能性が高いです。数え方(アトリビューションの考え方、計測する期間、クリックだけでなく広告を表示しただけの人を含めるかなど)が違うため、一致しないのが普通です。それぞれの数え方を理解したうえで、目的に応じて使い分けます(第 8 部)。
Q3. 過去のデータをさかのぼって見ることはできますか?
GA4 を導入する前のデータは見られません。また、標準レポートの集計データは長期間残りますが、探索レポートで使える詳細なデータは、データ保持期間(既定 2 か月、最大 14 か月)を過ぎると使えなくなります。導入したらすぐに保持期間を 14 か月に設定しましょう(第 2 部)。
Q4. 設定を変えたら、過去のデータにも反映されますか?
ほとんどの設定は、変更した時点以降のデータ にのみ反映されます。たとえば、内部トラフィックの除外、キーイベントの設定、カスタム ディメンションの登録などは、過去にさかのぼって適用されません。だからこそ、計測設計と初期設定は早めに済ませることが重要です。
Q5. ユーザー数が UA より少なく(多く)なりました。どちらが正しいのですか?
UA と GA4 ではユーザー数やセッション数の定義が異なるため、一致しないのが普通です。「どちらが正しい」ではなく、「GA4 ではこの定義で数える」と理解し、今後は GA4 の数値の推移を基準にしていきましょう。
Q6. アクセス数は多いほど良いのですか?
必ずしもそうではありません。サイトの目的に合わない人がいくら来ても、成果にはつながりません。たとえば、BtoB の製品サイトに学生が大量に訪れても、問い合わせは増えないでしょう。「量」だけでなく「質」(エンゲージメントやキーイベント率)をあわせて見ることが大切です。
まとめ
- GA4 でわかるのは「ユーザー」「集客」「行動」「成果」の 4 領域で、成果は自分で設定しないと計測できない
- GA4 は個人を特定する分析はできず、PII を送ることは規約で禁止されている
- GA4 の数値は 100% 正確ではないが、比較や変化を見るには十分役に立つ
- GA4 の苦手な部分は、Search Console やヒートマップ、CRM などで補う
- 多くの設定は過去にさかのぼって反映されないため、早めの設計と設定が重要
次の章では、GA4 の管理画面を理解するうえで欠かせない、アカウント・プロパティ・データストリームという 3 つの階層について学びます。