1.4 アカウント・プロパティ・データストリームの構造
この章で学ぶこと
- GA4 の 3 階層(アカウント・プロパティ・データストリーム)の全体像
- アカウントをどの単位で作るべきか
- プロパティをどの単位で作るべきか
- データストリームの役割と種類
- 会社や代理店での典型的な運用パターン
3 階層の全体像
GA4 の管理画面は、次の 3 つの階層で構成されています。
Google アカウント(ログインする人)
└─ アナリティクス アカウント(会社・組織の単位)
└─ プロパティ(レポートを見る単位)
├─ データストリーム(ウェブ)
├─ データストリーム(iOS アプリ)
└─ データストリーム(Android アプリ)
| 階層 | 役割 | たとえるなら | 主な設定 |
|---|---|---|---|
| アカウント | 組織の単位。複数のプロパティを束ねる | 会社 | アカウント名、データ共有設定、アカウントの権限 |
| プロパティ | データを保存し、レポートを表示する単位 | 事業やサービス | タイムゾーン、通貨、データ保持、キーイベント、カスタム定義、各種リンク |
| データストリーム | プロパティにデータを送る入口 | 店舗の入口 | 測定 ID、拡張計測機能、タグの設定 |
いちばん上にある「Google アカウント」は、GA4 にログインするための個人のアカウント(Gmail のアドレスなど)です。GA4 の階層そのものではありませんが、誰がどの階層にアクセスできるかは、この Google アカウントに対して権限を付与することで管理します。
ポイント レポートを見るときに意識するのは「プロパティ」です。画面左上のプロパティ名の部分をクリックすると、アクセスできるアカウントとプロパティの一覧が表示され、切り替えられます。
UA との違い:ビューがなくなった
UA では「アカウント → プロパティ → ビュー」という 3 階層でした。ビューでは、フィルタで特定のデータだけを残したり、目標を設定したりしていました。
GA4 にはビューがありません。代わりに、データストリームという階層が加わりました。
| UA | GA4 | 備考 |
|---|---|---|
| アカウント | アカウント | 役割はほぼ同じ |
| プロパティ | プロパティ | GA4 は複数のサイト・アプリを含められる |
| ビュー | (なし) | フィルタはデータフィルタやレポートのフィルタで代替 |
| (なし) | データストリーム | データの入口 |
UA で「全データ用」「社内アクセス除外用」「テスト用」などのビューを使い分けていた人は、GA4 では次のように対応します。
- 社内アクセスの除外:プロパティのデータフィルタで設定する
- 特定のディレクトリだけを見る:レポートのフィルタや比較、探索のセグメントを使う
- テスト用:テスト専用のプロパティを別に作る
アカウントの単位の決め方
アカウントは、データを所有する組織の単位 で作るのが基本です。多くの場合、「1 つの会社 = 1 つのアカウント」と考えてかまいません。
基本は「会社ごとに 1 アカウント」
たとえば、株式会社 A がコーポレートサイト、EC サイト、採用サイトを運営している場合、アカウントは「株式会社 A」の 1 つにまとめ、その中に各サイトのプロパティを作ります。
アカウント: 株式会社 A
├─ プロパティ: コーポレートサイト
├─ プロパティ: EC サイト(ウェブ + アプリ)
└─ プロパティ: 採用サイト
アカウントを分けるべきケース
次のような場合は、アカウントを分けることを検討します。
- データの所有者が異なる:グループ会社で、それぞれが独立してサイトを運営し、データを管理している
- 権限を完全に分けたい:A 事業の担当者に B 事業のデータを一切見せたくない
- 事業の売却や分社化の可能性がある:将来、プロパティごと別の組織に渡す可能性がある
なお、プロパティは別のアカウントに移動することもできますが、手間がかかるため、最初の設計で決めておくのが理想です。
注意 制作会社や広告代理店が、自社のアカウントの中にクライアントのプロパティを作ってしまうケースがあります。この場合、契約終了時にクライアントがデータを引き継げなくなるトラブルが起こりがちです。アカウントはデータの所有者(クライアント企業)が作成し、代理店には権限を付与する のが正しい運用です。
プロパティの単位の決め方
プロパティは、一緒に分析したいデータの単位 で作ります。レポートはプロパティごとに表示されるため、「同じレポートで合計や比較をしたいもの」を一つのプロパティにまとめるのが基本の考え方です。
1 つのプロパティにまとめるケース
- 同じサービスのウェブサイトとアプリ(例:EC サイトと EC アプリ)
- ドメインは違うが、ユーザーが行き来する一連のサイト(例:製品サイトと、別ドメインの申し込みフォーム)
- 国や言語ごとのサイトで、合算した数値を見たいもの
プロパティを分けるケース
- ターゲットや目的がまったく異なるサイト(例:コーポレートサイトと、一般消費者向けのブランドサイト)
- ユーザーが行き来しない、独立したサービス
- テスト環境(本番のデータに混ざらないよう、テスト専用のプロパティを用意する)
| 判断の観点 | 1 つにまとめる | 分ける |
|---|---|---|
| ユーザーの重なり | 同じ人が行き来する | ほぼ重ならない |
| 分析の目的 | 合計・比較・回遊を見たい | それぞれ別の KPI で見る |
| 担当者 | 同じチームが見る | 別のチームが見る |
| 設定(キーイベントなど) | 共通化できる | 大きく異なる |
迷ったときの考え方
プロパティの分け方に迷ったら、「ユーザーがサイト間を移動したとき、それを一連の行動として見たいか」を考えてみてください。見たいのであれば、1 つのプロパティにまとめ、クロスドメイン測定(第 2 部)を設定します。見る必要がないのであれば、分けておいたほうがレポートがシンプルになり、権限の管理もしやすくなります。
ポイント 無料版の GA4 では、1 つのアカウントに作成できるプロパティの数に上限があります(執筆時点で 2,000)。通常の運用で上限に達することはまずないので、必要に応じて遠慮なく分けてかまいません。
プロパティで設定する主な項目
プロパティでは、レポートの数値に直接影響する重要な設定を行います。主なものを紹介します(詳細は第 2 部)。
- タイムゾーンと通貨:日付の区切りと売上の表示通貨。日本向けサイトなら「日本」と「日本円」
- データ保持期間:探索レポートで使える期間。既定の 2 か月から 14 か月に延長するのが一般的
- データフィルタ:内部トラフィックや開発者のトラフィックを除外する
- キーイベント:成果となるイベントの指定
- カスタム定義:カスタム ディメンションとカスタム指標の登録
- サービスとのリンク:Google 広告、Search Console、BigQuery などとの連携
データストリームとは
データストリームは、ウェブサイトやアプリから、プロパティにデータを送るための入口 です。プロパティを作っただけではデータは届かず、データストリームを作成し、そのデータストリームの情報(測定 ID など)を使ってサイトやアプリにタグを設置することで、初めてデータが集まり始めます。
データストリームの種類
| 種類 | 識別子 | 導入方法 |
|---|---|---|
| ウェブ | 測定 ID(G-XXXXXXXXXX) | Google タグを設置する(直接、または GTM 経由) |
| iOS アプリ | Firebase アプリ ID | Firebase SDK を組み込む |
| Android アプリ | Firebase アプリ ID | Firebase SDK を組み込む |
ウェブ データストリームの測定 ID は、G- で始まる英数字です。UA では UA- で始まるトラッキング ID を使っていましたが、GA4 では測定 ID を使います。
1 つのサイトに 1 つのウェブ データストリーム
ウェブ データストリームは、原則として 1 つのプロパティに 1 つ にするのが推奨されています。複数のドメインを 1 つのプロパティで計測したい場合でも、データストリームを増やすのではなく、同じ測定 ID のタグを各ドメインに設置し、クロスドメイン測定を設定します。
ウェブ データストリームを複数作ると、次のような問題が起こります。
- レポート上で同じ人が別々のユーザーとして数えられることがある
- データストリームごとに拡張計測機能や除外設定をそろえる必要があり、管理が煩雑になる
データストリームで設定する主な項目
- 拡張計測機能:スクロールや離脱クリックなどの自動計測のオン・オフ
- Google タグの設定:クロスドメイン測定、内部トラフィックの定義、除外する参照、セッションのタイムアウトなど
- Measurement Protocol API シークレット:サーバーからデータを送るための鍵
注意 「内部トラフィックの定義」はデータストリーム側(Google タグの設定)で行い、実際に除外する「データフィルタ」はプロパティ側で有効にします。設定場所が分かれているので、どちらか一方だけ設定して除外されていない、というミスがよく起こります(第 2 部)。
組織での運用パターン
最後に、実際の組織でよく見られる運用パターンを紹介します。
パターン 1:中小企業の単一サイト
アカウント: 株式会社 B
└─ プロパティ: 株式会社 B 公式サイト
└─ ウェブ データストリーム: www.example.co.jp
最もシンプルな構成です。多くの中小企業や個人のサイトはこの形で十分です。
パターン 2:ウェブとアプリを持つ EC 事業
アカウント: 株式会社 C
├─ プロパティ: C ショップ(本番)
│ ├─ ウェブ データストリーム: shop.example.com
│ ├─ iOS データストリーム
│ └─ Android データストリーム
└─ プロパティ: C ショップ(テスト)
└─ ウェブ データストリーム: stg.shop.example.com
ウェブとアプリを 1 つのプロパティにまとめ、売上を合算・比較できるようにしています。テスト環境は別のプロパティにして、本番データを汚さないようにしています。
パターン 3:複数ブランドを持つ企業
アカウント: 株式会社 D
├─ プロパティ: コーポレートサイト
├─ プロパティ: ブランド X(ブランドサイト + 通販)
├─ プロパティ: ブランド Y(ブランドサイト)
└─ プロパティ: 採用サイト
ブランドごとにターゲットや KPI が異なるため、プロパティを分けています。ブランド X のサイトと通販サイトは、ユーザーが行き来するので 1 つのプロパティにまとめ、クロスドメイン測定を設定しています。
パターン 4:代理店がクライアントを支援する場合
アカウント: クライアント E 社(E 社が所有)
└─ プロパティ: E 社サイト
├─ 権限: E 社の担当者(管理者)
└─ 権限: 代理店の担当者(編集者)
アカウントはクライアントが所有し、代理店の担当者には必要な権限だけを付与します。契約終了時は、代理店の権限を削除するだけでデータはクライアントの手元に残ります。
まとめ
- GA4 は「アカウント → プロパティ → データストリーム」の 3 階層で構成される
- アカウントはデータを所有する組織の単位で作り、基本は「会社ごとに 1 つ」
- プロパティは「一緒に分析したいデータ」の単位で作り、レポートや主要な設定はプロパティごとに行う
- データストリームはデータの入口で、ウェブは原則 1 プロパティに 1 つ
- アカウントは必ずデータの所有者が作成し、外部パートナーには権限を付与する
次の章では、実際に GA4 の画面を開き、メニューの構成やレポート画面の共通パーツなど、画面の歩き方を学びます。