2.4 必ず行う管理画面の初期設定
この章で学ぶこと
- データ保持期間を 14 か月に延長する理由と手順
- 社内からのアクセス(内部トラフィック)を除外する方法
- 決済サービスなどの不要な参照を除外する方法
- 複数のドメインをまたぐサイトのクロスドメイン設定
- Google シグナルを有効にするかどうかの判断
ポイント この章の設定の多くは、設定した時点以降のデータにしか反映されません。タグを設置したら、できるだけ早く済ませましょう。
データ保持期間を 14 か月にする
GA4 では、ユーザーやイベント単位の詳細なデータを保存しておく期間(データ保持期間)が決められています。無料版の既定値は 2 か月 です。
データ保持期間が影響する範囲
データ保持期間を過ぎたデータは、探索レポート で使えなくなります。一方、標準レポートは集計済みのデータを使っているため、保持期間の影響を受けません。
| レポート | 保持期間の影響 |
|---|---|
| 標準レポート(集客、エンゲージメントなど) | 受けない(長期間のデータを表示できる) |
| 探索レポート(自由形式、ファネルなど) | 受ける(保持期間より前のデータは使えない) |
既定の 2 か月のままだと、「去年の同じ時期とファネルを比べたい」「半年前に獲得したユーザーの行動を探索で見たい」といった分析ができません。
設定手順
- 管理画面の「プロパティの設定」→「データの収集と修正」→「データ保持」を開く
- 「イベントデータの保持」を「14 か月」に変更する
- 「新しいアクティビティのユーザーデータのリセット」はオンのままにする
- 「保存」を押す
「新しいアクティビティのユーザーデータのリセット」がオンになっていると、ユーザーが新しく訪問するたびに、そのユーザーのデータの保持期間が延長されます。
注意 有料版の GA4 360 では最大 50 か月まで延長できますが、無料版の上限は 14 か月です。14 か月より前のデータを詳細に分析したい場合は、BigQuery へのエクスポート(第 10 部)を設定しておくと、期限なくデータを保存できます。
内部トラフィックの除外
社員や制作会社のアクセスは、サイトの改善には関係のないデータです。特にアクセス数が少ないサイトでは、社内の人が毎日ページを確認するだけで、数値が大きくゆがんでしまいます。
GA4 では、IP アドレスを使って 内部トラフィック を定義し、データフィルタ で除外します。設定は 2 段階に分かれているので、両方行う必要があります。
手順 1:内部トラフィックを定義する(データストリーム側)
- 管理画面の「データストリーム」→ 対象のウェブ ストリームを開く
- 「タグ設定を行う」→「設定」の「すべて表示」→「内部トラフィックの定義」を開く
- 「作成」を押し、次のように入力する
- ルール名:例「本社オフィス」
traffic_typeの値:internal(既定のまま)- IP アドレスのマッチタイプ:「IP アドレスが次と等しい」など
- 値:オフィスのグローバル IP アドレス
- 「作成」を押す
オフィスのグローバル IP アドレスは、社内ネットワークの管理者に確認するか、社内のパソコンで「IP アドレス 確認」と検索して調べられます。
手順 2:データフィルタを有効にする(プロパティ側)
- 管理画面の「プロパティの設定」→「データの収集と修正」→「データフィルタ」を開く
- 既定で作られている「Internal Traffic」フィルタを開く
- フィルタの状態を「テスト」から「有効」に変更して保存する
データフィルタには 3 つの状態があります。
| 状態 | 動作 |
|---|---|
| テスト | データは除外されないが、「テストデータのフィルタ名」ディメンションで識別できる |
| 有効 | 条件に合うデータが 完全に除外 される(元に戻せない) |
| 無効 | フィルタは適用されない |
注意 「有効」にしたフィルタで除外されたデータは、あとから復元できません。いきなり有効にするのが不安な場合は、まず「テスト」の状態で数日運用し、探索レポートで「テストデータのフィルタ名」が
Internal Trafficのデータが社内のアクセスだけになっているかを確認してから有効にしましょう。
在宅勤務などで IP アドレスが固定できない場合
在宅勤務やモバイル回線からのアクセスは、IP アドレスが変わるため IP アドレスでは除外できません。その場合は、次のような方法を検討します。
- 社内の人に、ブラウザの拡張機能(Google アナリティクス オプトアウト アドオン)を入れてもらう
- GTM で、社内の人だけが持つ Cookie を判定し、
traffic_typeパラメータを付けて送る(第 9 部)
不要な参照の除外
参照(リファラー)とは、ユーザーがどのサイトから来たかを示す情報です。外部のサイトから来たユーザーは、そのサイトのドメインが参照元として記録されます。
ところが、決済の途中で外部のサービスを経由するサイトでは、困った問題が起こります。
自社サイトの購入画面 → 外部の決済サービス(example-pay.com)→ 自社サイトの購入完了画面
この流れでは、購入完了画面に戻ってきたとき、参照元が example-pay.com として記録されることがあります。その結果、本当は広告や検索から来たユーザーの購入が、「決済サービスからの流入」による成果のように見えてしまいます。
設定手順
- 「データストリーム」→ 対象のウェブ ストリーム →「タグ設定を行う」→「除外する参照のリスト」を開く
- 「条件を追加」を押し、マッチタイプ「参照ドメインが次と一致」で、決済サービスのドメイン(例:
example-pay.com)を入力する - 「保存」を押す
除外を検討すべき主なドメインは次のとおりです。
- 外部の決済サービス(クレジットカード決済、後払い決済、ID 決済など)
- 外部の予約・申し込みシステムから戻ってくる場合のドメイン
- 会員ログインに使う外部の認証サービス
クロスドメイン設定
自社のサイトが複数のドメインに分かれている場合、何も設定しないと、ドメインをまたいだ時点で 別のユーザー・別のセッション として計測されてしまいます。
www.example.co.jp(製品サイト)→ form.example-cart.jp(申し込みフォーム)
この例では、製品サイトから申し込みフォームに移ったユーザーが、フォーム側では「www.example.co.jp から来た新しいユーザー」として扱われます。これでは、製品サイトにどこから来た人が申し込んだのかがわからなくなります。
仕組み
クロスドメイン測定 を設定すると、ドメインをまたぐリンクのクリック時に、URL に _gl というパラメータが付与されます。移動先のドメインのタグがこのパラメータを読み取り、同じユーザー・同じセッションとして計測を続けます。
https://form.example-cart.jp/apply?_gl=1*abc123*_ga*MTIzNDU2...
設定手順
- 両方のドメインに、同じ測定 ID のタグを設置する
- 「データストリーム」→ 対象のウェブ ストリーム →「タグ設定を行う」→「ドメインの設定」を開く
- 「条件を追加」で、計測対象のドメイン(
example.co.jpとexample-cart.jp)を両方追加する - 「保存」を押す
注意 サブドメイン(
www.example.co.jpとshop.example.co.jpなど)の間の移動は、同じ測定 ID のタグを設置していれば、クロスドメインの設定をしなくても同じユーザーとして計測されます。クロスドメイン設定が必要なのは、example.co.jpとexample-cart.jpのように ドメインそのものが異なる場合 です。
Google シグナルの有効化判断
Google シグナル は、Google アカウントにログインしていて、広告のカスタマイズを許可しているユーザーの情報を活用する機能です。有効にすると、次のようなことができるようになります。
- 年齢、性別、インタレスト(興味・関心)のデータがレポートに表示される
- デバイスをまたいだ行動の把握の精度が上がる
- GA4 のオーディエンスを Google 広告のリマーケティングに使える範囲が広がる
有効にする前に考えること
一方で、Google シグナルを有効にすると次のような影響もあります。
- しきい値が適用されることがある:個人が推測されないよう、ユーザー数が少ない行のデータが非表示になることがある(特にユーザー属性のレポート。適用条件は仕様変更で緩和されてきているので、最新の公式ヘルプも確認する)
- プライバシー ポリシーへの記載が必要:Google シグナルを使っていることをユーザーに知らせる必要がある
| 判断の観点 | 有効にする | 無効のままにする |
|---|---|---|
| 年齢・性別などの属性を分析したい | ○ | |
| Google 広告でリマーケティングをする | ○ | |
| アクセス数が少なく、しきい値でデータが欠けると困る | ○ | |
| 社内の規定で外部へのデータ提供を制限している | ○ |
設定手順
- 管理画面の「プロパティの設定」→「データの収集と修正」→「データの収集」を開く
- 「Google シグナルのデータ収集を有効にする」をオンにする
- 必要に応じて、地域ごとの設定や、広告のカスタマイズの許可を確認する
ポイント 現在の GA4 では、レポートで使うユーザーの識別方法(レポート用識別子)を「ブレンド」「計測」「デバイスベース」から選べます。Google シグナルを有効にしたまま、レポートでは「デバイスベース」を選んでしきい値の影響を減らす、という使い方もできます(第 3 部)。
よくある質問
Q. データの保持期間を 14 か月にすると、標準レポートでも 14 か月より前のデータが見られなくなりますか。
A. いいえ。データの保持期間は、主に 探索 などで使う、ユーザー単位・イベント単位の詳細なデータの保存期間です。標準レポートの集計されたデータは、保持期間の設定とは別に保存されるため、14 か月より前のデータも表示できます。長期間の詳細な分析が必要な場合は、BigQuery エクスポートを検討しましょう(第 10 部)。
Q. 在宅勤務の社員のアクセスも除外したいのですが、IP アドレスがばらばらです。
A. 自宅の IP アドレスは、人ごとに違い、変わることも多いため、IP アドレスでの除外は難しくなります。代わりに、社員にブラウザの拡張機能や、社内用の特別なパラメータ付きの URL を使ってもらい、GTM で traffic_type パラメータを付ける、などの方法があります。完璧な除外は難しいので、「社員のアクセスの影響が大きいページ(社内向けのお知らせなど)は、分析から外す」といった運用でも補いましょう。
Q. クロスドメインの設定をしたのに、ドメインをまたぐとセッションが切れます。
A. 次の点を確認しましょう。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| ドメインの登録 | 両方のドメインが、Google タグの設定の「ドメインの設定」に登録されているか |
| 同じ測定 ID | 両方のサイトで、同じ GA4 の測定 ID が使われているか |
_gl パラメータ | ドメインをまたぐリンクをクリックしたとき、遷移先の URL に _gl パラメータが付いているか |
| リダイレクト | 遷移先でリダイレクトがあり、_gl パラメータが消えていないか |
| フォームの送信 | フォームの送信でドメインをまたぐ場合、送信の方法によってはパラメータが付かないことがある |
Q. Google シグナルを有効にしたら、レポートの数値が見えにくくなりました。
A. Google シグナルを有効にすると、ユーザー数の少ない行で しきい値 が適用されやすくなることがあります(第 3 部)。レポート用識別子を「デバイスベース」に切り替えると、しきい値の影響が小さくなる場合があります。目的に応じて使い分けましょう。
実践ワーク
自社のプロパティで、この章の初期設定を確認し、次の表を埋めてみましょう。
| 設定 | 現在の値 | あるべき値 | 対応 |
|---|---|---|---|
| データの保持期間 | 14 か月 | ||
| 内部トラフィックの定義(IP アドレス) | 自社のオフィスの IP | ||
| 内部トラフィックのデータ フィルタの状態 | 有効(テストで確認済み) | ||
| 除外する参照のリスト | 決済サービスなどのドメイン | ||
| クロスドメインの設定 | 自社が運営する別ドメイン | ||
| Google シグナル | 自社の方針で判断 |
「現在の値」と「あるべき値」が違う項目は、この章の手順で設定を変更し、変更した日を作業ログに記録しておきましょう。
まとめ
- データ保持期間は既定の 2 か月から 14 か月に延長する。標準レポートには影響しないが探索レポートに影響する
- 内部トラフィックは「データストリームで定義」と「データフィルタで有効化」の 2 段階で除外する
- 外部の決済サービスなどのドメインは、除外する参照のリストに登録する
- ドメインそのものが異なる複数のサイトは、クロスドメイン測定で同じユーザーとして計測する
- Google シグナルは、属性分析や広告活用の必要性と、しきい値やプライバシーへの影響を比べて判断する
次の章では、GA4 を組織で安全に運用するための、ユーザー権限の考え方と管理方法を学びます。