2.5 ユーザー権限と組織での管理
この章で学ぶこと
- GA4 の 5 つの役割(権限)の違い
- 費用や収益のデータを見せないようにする「データ制限」
- 制作会社や広告代理店に権限を渡すときの注意点
- 退職や異動のときに行う権限の棚卸し
- 誰がいつ何を変更したかを確認する方法
5 つの役割の違い
GA4 では、Google アカウントごとに 役割(ロール)を割り当てて、できる操作を制限します。役割は、アカウント単位またはプロパティ単位で付与できます。
| 役割 | できること | 向いている人 |
|---|---|---|
| 管理者 | すべての操作(ユーザー権限の管理を含む) | GA4 の運用責任者(2〜3 人) |
| 編集者 | 設定の変更(権限の管理以外) | 計測の設定を担当する人 |
| マーケティング担当者 | オーディエンス、キーイベント、アトリビューションなどマーケティング関連の設定 | 広告運用の担当者 |
| アナリスト | 探索レポートの作成・共有、レポートの閲覧 | 分析担当者 |
| 閲覧者 | レポートの閲覧 | レポートを見るだけの人、経営層 |
役割は上にいくほど強く、上位の役割は下位の役割の権限をすべて含みます。たとえば編集者は、マーケティング担当者・アナリスト・閲覧者ができることもすべてできます。
ポイント 権限は「必要最小限」が原則です。「とりあえず全員管理者」にしてしまうと、誤って重要な設定を変えたり、データフィルタを有効にしてデータを失ったりする事故が起こりやすくなります。
アカウント単位とプロパティ単位
権限は、アカウントとプロパティのどちらにも付与できます。
- アカウントに付与:そのアカウントの中のすべてのプロパティに、同じ権限が適用される
- プロパティに付与:そのプロパティだけに権限が適用される
たとえば、「コーポレートサイトの担当者には、コーポレートサイトのプロパティだけを見せたい」という場合は、プロパティ単位で付与します。アカウント単位とプロパティ単位の両方に付与されている場合は、強いほうの権限が適用されます。
権限を追加する手順
- 管理画面の「アカウントのアクセス管理」または「プロパティのアクセス管理」を開く
- 右上の「+」→「ユーザーを追加」を選ぶ
- 追加する人の Google アカウントのメールアドレスを入力する
- 「新しいユーザーにメールで通知する」を必要に応じてオンにする
- 役割を選び、必要ならデータ制限を設定する
- 「追加」を押す
データ制限(費用・収益)
役割とは別に、データ制限 を設定すると、特定の種類の指標をその人に見せないようにできます。
| データ制限 | 見えなくなる指標の例 |
|---|---|
| 費用指標なし | 広告費用、クリック単価、ROAS など費用に関する指標 |
| 収益指標なし | 購入による収益、総収益、平均購入収益など売上に関する指標 |
たとえば、外部のコンテンツ制作会社にはページの閲覧状況は見てほしいが、売上の金額は見せたくない、という場合に「収益指標なし」を設定します。
注意 データ制限がかかった人は、制限された指標を使う探索レポートやオーディエンスの作成もできなくなります。分析を依頼する相手には、必要な指標が見られるかを事前に確認しましょう。
外部パートナーへの権限付与
制作会社や広告代理店、コンサルタントなどの外部パートナーと一緒に GA4 を運用することはよくあります。その場合は、次の原則を守りましょう。
原則 1:アカウントは自社で持つ
第 1 部でも説明したとおり、GA4 のアカウントは データの所有者である自社 が作成します。外部パートナーのアカウントの中に自社のプロパティがあると、契約が終わったときにデータの移管で揉める原因になります。
原則 2:個人のアカウントに、必要な権限だけ付与する
外部パートナーには、担当者ごとの Google アカウントに、作業に必要な役割だけを付与します。
| 作業内容 | 付与する役割の目安 |
|---|---|
| レポートを見て分析・提案する | アナリスト |
| 広告運用のためにオーディエンスやキーイベントを管理する | マーケティング担当者 |
| タグや計測の設定を代行する | 編集者 |
| 権限の管理まで任せる | 原則として付与しない |
原則 3:契約期間と連動させる
外部パートナーの権限は、契約の開始と終了に合わせて付与・削除します。権限の一覧を管理するシートに、付与した日と理由、契約の終了予定日を記録しておくと、削除漏れを防げます。
ポイント 外部パートナーが GA4 だけでなく GTM や Google 広告も扱う場合は、それぞれのツールで権限を管理する必要があります。GA4 の権限を削除しても、GTM の権限が残っていればタグを変更できてしまうので、まとめて棚卸ししましょう。
退職・異動時の棚卸し
社員の退職や異動、外部パートナーとの契約終了のたびに、GA4 の権限を見直す必要があります。しかし実際には、権限の削除が忘れられ、何年も前に退職した人が管理者のまま残っている、ということも珍しくありません。
定期的な棚卸しの手順
半年に 1 回など、定期的に次の作業を行いましょう。
- アカウントとプロパティのアクセス管理の画面で、権限を持つ人の一覧を確認する
- 退職者、異動者、契約が終わった外部パートナーがいないかを確認する
- 役割が業務内容に対して強すぎないかを確認する
- 不要な権限を削除し、強すぎる権限を引き下げる
- 管理者が 2 人以上いることを確認する
- 権限の管理シートを更新する
Google Workspace のアカウントの場合
会社の Google Workspace のアカウントで権限を付与している場合、退職者のアカウントが削除されると、GA4 の権限も事実上使えなくなります。一方、個人の Gmail アカウントで付与している場合は、退職後もその人が GA4 にアクセスできてしまいます。社員には、できるだけ会社のアカウントで権限を付与しましょう。
変更履歴の確認
「いつの間にか設定が変わっていた」「誰がこのフィルタを有効にしたのか」といった疑問を調べるには、変更履歴 を使います。
確認手順
- 管理画面の「アカウントの設定」→「アカウントの変更履歴」、または「プロパティの設定」→「プロパティの変更履歴」を開く
- 期間や変更した人で絞り込む
- 変更内容(何が、どの値からどの値に変わったか)を確認する
変更履歴には、権限の追加・削除、データストリームやデータフィルタの変更、キーイベントの追加など、主な設定の変更が記録されます。
ポイント 数値が急に変わったときは、まず変更履歴を確認するのが調査の近道です。「データフィルタが有効になった日」「キーイベントの設定が変わった日」と数値の変化が一致していれば、原因はほぼ特定できます。
よくある質問
Q. 権限は、アカウントとプロパティのどちらで付与すればよいですか。
A. 付与した権限は、下の階層にも引き継がれます。アカウントで付与すると、そのアカウントのすべてのプロパティに権限が及びます。特定のサイトだけを見てほしい人には、プロパティ で付与しましょう。アカウントの管理者は、少数の責任者に限ります。
Q. 外部の会社の担当者に、会社のメールアドレス以外で権限を付与してもよいですか。
A. 権限は、Google アカウントのメールアドレスに付与します。外部の会社の担当者が、個人の Gmail のアドレスで権限を求めることもありますが、担当者が退職したときに、権限が残り続ける原因になります。できるだけ、相手の会社の組織のアカウントで付与し、契約の終了時に削除する手順を決めておきましょう。
Q. 誰に、どの権限を付与しているかがわからなくなりました。
A. 管理画面の「アクセス管理」で、アカウントとプロパティのそれぞれのユーザーの一覧を確認できます。一覧をスプレッドシートに書き写し、「所属」「役割」「付与した理由」「付与した日」を記録して、四半期ごとに見直す運用にしましょう。
Q. 変更履歴には、どのくらい前の記録が残りますか。
A. 変更履歴には、一定の期間の設定の変更が記録されます。長期間の記録が必要な場合は、重要な変更を、作業ログなど社内の記録にも残しておきましょう。
実践ワーク
自社の GA4 の権限の「棚卸し」をしてみましょう。
| ユーザー(メールアドレス) | 所属 | 範囲(アカウント / プロパティ) | 役割 | データ制限 | 必要か |
|---|---|---|---|---|---|
一覧を作ったら、次の点を確認します。
- 管理者は 2 人以上いるか(1 人だけだと、その人がいなくなったときに管理できなくなる)
- 退職者や、契約が終わった外部の会社のアカウントが残っていないか
- 必要以上に強い権限(閲覧だけでよい人に編集者の権限など)を付与していないか
- 費用や収益のデータを見せるべきでない人に、データ制限を設定しているか
見直しの結果、権限を変更・削除したら、変更履歴で正しく反映されたことを確認し、棚卸しの日付を記録しておきましょう。
まとめ
- GA4 の役割は「管理者」「編集者」「マーケティング担当者」「アナリスト」「閲覧者」の 5 つで、必要最小限を付与する
- 権限はアカウント単位とプロパティ単位で付与でき、データ制限で費用や収益の指標を隠せる
- 外部パートナーには、自社のアカウントの中で、担当者ごとに必要な役割だけを付与する
- 半年に 1 回など定期的に権限を棚卸しし、管理者が 2 人以上いることを確認する
- 設定の変化は変更履歴で確認できる
次の章では、タグを設置したあとに、データが正しく取れているかを確認する方法を学びます。