4.5 収益とコンバージョンの指標
この章で学ぶこと
- キーイベント数の意味と数え方
- セッションのキーイベント率とユーザーのキーイベント率
- 総収益と購入による収益の違い
- ARPU と ARPPU で 1 人あたりの価値を測る方法
- LTV(顧客生涯価値)の考え方
キーイベント数
キーイベント は、ビジネスの成果として重要なイベントのことです。2024 年に名称が変わるまでは「コンバージョン」と呼ばれていました。キーイベントの設定方法は第 7 部で扱うので、ここでは指標としての読み方を学びます。
キーイベント数 は、キーイベントとして設定したイベントが発生した回数です。
キーイベントの数え方
キーイベントは、既定では 発生するたびに 1 回 として数えられます。たとえば、同じセッションの中で資料を 3 回ダウンロードし、file_download をキーイベントにしている場合、キーイベント数は 3 になります。
キーイベントごとに、カウント方法 を次の 2 つから選べます。
| カウント方法 | 数え方 | 向いているキーイベント |
|---|---|---|
| イベントごとに 1 回 | 発生するたびに数える | 購入(1 セッションで複数回購入しても、それぞれが成果) |
| セッションごとに 1 回 | 1 セッションで何回発生しても 1 回と数える | 問い合わせ、資料請求(同じ人が二重送信しても 1 件と数えたい) |
ポイント UA の「目標」は、1 セッションにつき 1 回しか数えない仕様でした。UA の目標完了数と比べたい場合は、キーイベントのカウント方法を「セッションごとに 1 回」にすると、数え方が近くなります。
複数のキーイベントの合計に注意
「キーイベント数」の合計は、設定したすべてのキーイベントの回数を足したものです。たとえば、「資料請求」と「問い合わせ」と「メルマガ登録」の 3 つをキーイベントにしている場合、合計のキーイベント数は 3 つの合計になります。
成果の重みが違うキーイベントを合計しても、意味のある数値にはなりません。レポートでは、キーイベントを 1 つずつ選んで 見るようにしましょう。多くのレポートでは、指標の「キーイベント」の横にあるプルダウンから、特定のキーイベントを選べます。
セッションのキーイベント率
キーイベントの数だけでなく、率 も重要な指標です。GA4 には 2 種類のキーイベント率があります。
| 指標 | 計算 | 意味 |
|---|---|---|
| セッションのキーイベント率 | キーイベントが発生したセッション数 ÷ セッション数 | 訪問のうち、何%が成果につながったか |
| ユーザーのキーイベント率 | キーイベントが発生したユーザー数 ÷ アクティブ ユーザー数 | ユーザーのうち、何%が成果につながったか |
例)
セッション数 = 10,000、キーイベントが発生したセッション = 200
→ セッションのキーイベント率 = 2.0%
アクティブ ユーザー数 = 6,000、キーイベントが発生したユーザー = 180
→ ユーザーのキーイベント率 = 3.0%
どちらの率を使うか
| 目的 | 使う指標 |
|---|---|
| 訪問ごとの成果の効率(広告やランディング ページの評価) | セッションのキーイベント率 |
| ユーザーが最終的に成果に至った割合(検討期間の長い商材の評価) | ユーザーのキーイベント率 |
BtoB の製品や高額な商品のように、何度も訪れてから成果に至るサイトでは、セッションのキーイベント率は低めに、ユーザーのキーイベント率は高めに出る傾向があります。
業界の平均と比べない
「キーイベント率は何%なら良いのか」という質問はよくありますが、業種、商材の価格、キーイベントの定義、流入の構成によって大きく変わるため、一般的な平均値と比べてもあまり意味はありません。自社の過去の値、チャネル間、ランディング ページ間 で比べることが大切です。
総収益と購入による収益
e コマースを計測しているサイトやアプリでは、収益に関する指標が使えます。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| 購入による収益 | ウェブやアプリでの購入(purchase など)による収益 |
| アプリ内購入による収益 | アプリ内課金(in_app_purchase)による収益 |
| 広告収益 | アプリに表示した広告による収益(AdMob などとの連携が必要) |
| 総収益 | 購入、定期購入、アプリ内購入、広告による収益の合計(返金を差し引いた値) |
| 平均購入収益額 | 購入 1 回あたりの平均の収益(客単価に近い指標) |
| 購入者数 | 期間内に 1 回以上購入したユーザーの数 |
| 初回購入者数 | 期間内に初めて購入したユーザーの数 |
ウェブの EC サイトであれば、「総収益」と「購入による収益」はほぼ同じになります。アプリで課金や広告収益がある場合は、両者が異なります。
収益は「参考値」と考える
第 1 部でも説明したとおり、GA4 の収益は、計測できなかった購入や、キャンセル・返品の反映漏れなどで、基幹システムの売上と一致しない のが普通です。
| ずれの原因 | 内容 |
|---|---|
| 計測漏れ | 広告ブロッカー、同意の拒否、購入完了ページの読み込み前の離脱など |
| 重複計測 | 購入完了ページの再読み込みで purchase が 2 回送られる(transaction_id で重複を防ぐ) |
| キャンセル・返品 | refund イベントを送っていない |
| 税・送料の扱い | value に税や送料を含めるかどうかが、基幹システムと異なる |
| タイムゾーン | 日付の区切りが異なる |
GA4 の収益は、「どのチャネルや商品が売上につながっているか」を比較するために使い、正式な売上の報告には基幹システムの数値を使いましょう。
ARPU と ARPPU
1 人のユーザーがどれくらいの収益をもたらしているかを見る指標として、ARPU と ARPPU があります。
| 指標 | 正式名称 | 計算 | 意味 |
|---|---|---|---|
| ARPU | Average Revenue Per User | 総収益 ÷ アクティブ ユーザー数 | ユーザー 1 人あたりの平均収益 |
| ARPPU | Average Revenue Per Paying User | 総収益 ÷ 購入者数 | 購入したユーザー 1 人あたりの平均収益 |
例)
総収益 = 3,000,000 円
アクティブ ユーザー数 = 20,000 人
購入者数 = 500 人
ARPU = 3,000,000 ÷ 20,000 = 150 円
ARPPU = 3,000,000 ÷ 500 = 6,000 円
GA4 では、「アクティブ ユーザーあたりの平均収益」(ARPU)や「購入ユーザーあたりの平均収益」(ARPPU)として、レポートや探索で使えます。
ARPU と ARPPU の読み方
- ARPU が上がった:購入する人が増えたか、購入する人の購入額が増えた
- ARPPU が上がった:購入する人 1 人あたりの購入額が増えた(まとめ買い、高額商品の購入など)
- ARPU は横ばいで ARPPU が上がった:購入する人の割合は減ったが、1 人あたりの購入額は増えた
ARPU と ARPPU を一緒に見ると、売上の変化が「購入者の割合」と「購入者 1 人あたりの額」のどちらによるものかがわかります。
LTV の考え方
LTV(Lifetime Value、顧客生涯価値)は、1 人のユーザーが、サイトやサービスを利用し始めてから利用しなくなるまでの間に、どれだけの収益をもたらすかを表す考え方です。
たとえば、初回の購入額が同じ 3,000 円でも、その後 1 年間に何度も購入してくれる人と、1 回で終わる人とでは、事業にとっての価値が大きく異なります。
GA4 での LTV
GA4 では、次のような方法で LTV に関するデータを見られます。
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| ユーザー獲得レポートの「LTV」関連の指標 | 獲得したチャネルごとの、ユーザー 1 人あたりの累積収益 |
| 維持率レポートの LTV グラフ | 新規ユーザーの、獲得後の日数に応じた平均 LTV の推移 |
| 探索の「ユーザー生涯価値」 | 獲得チャネルや獲得時期ごとの LTV を自由に比較 |
| 予測指標「予測収益」 | 過去のデータから、今後 28 日間の収益を予測(一定のデータ量が必要) |
LTV を活用する場面
- 広告の評価:初回の購入だけでなく、長期的な収益で広告チャネルを評価する。「初回の CPA は高いが、LTV が高いチャネル」に予算を寄せる判断ができる
- リピート施策の評価:メルマガや会員プログラムが、LTV を高めているかを確認する
- 獲得コストの上限の設定:LTV をもとに、1 人の顧客を獲得するためにかけてよい費用(許容 CPA)を決める
注意 GA4 の LTV は、GA4 で識別できる範囲(同じブラウザ、または User-ID でつながる範囲)のユーザーの累積値です。Cookie の制限などで同じ人が別のユーザーとして数えられると、LTV は実際より低く出ます。会員の LTV を正確に知りたい場合は、基幹システムや CRM のデータとあわせて考えましょう。
よくある質問
Q. 「キーイベント」と「コンバージョン」は、同じものですか。
A. GA4 では、以前「コンバージョン」と呼ばれていたものが、現在は「キーイベント」という名前になっています。Google 広告では、引き続き「コンバージョン」という言葉が使われ、GA4 のキーイベントを Google 広告にインポートしたものがコンバージョンとして扱われます(第 8 部)。社内では、どちらの意味で使っているかをそろえておきましょう。
Q. セッションのキーイベント率と、ユーザーのキーイベント率は、どちらを見るべきですか。
A. 1 回の訪問で成果に至りやすいか(広告のランディング ページの評価など)を見たいなら セッション の率、検討期間が長く、何度か訪れて成果に至る商材なら ユーザー の率が向いています。報告では、どちらの率かを明記しましょう。
Q. ARPU が下がったのは、悪いことですか。
A. 必ずしも悪いとは限りません。新しい集客で、まだ購入していない新規ユーザーが大きく増えると、ユーザーあたりの収益(ARPU)は一時的に下がります。ARPPU(購入したユーザーあたりの収益)や、購入したユーザーの数とあわせて見て、何が変わったのかを確認しましょう。
実践ワーク
先月の自社の数値で、次の表を埋めてみましょう。
| 指標 | 先月 | 前年同月 | 変化 |
|---|---|---|---|
| キーイベント数 | |||
| セッションのキーイベント率 | |||
| 総収益(EC の場合) | |||
| ARPU | |||
| ARPPU |
変化が大きい指標について、「分子(キーイベントや収益)が変わったのか」「分母(セッションやユーザー)が変わったのか」を分けて考えると、変化の理由が見えやすくなります(この部の第 9 章)。
まとめ
- キーイベント数は成果の回数で、カウント方法は「イベントごと」と「セッションごと」から選べる
- 重みの違うキーイベントを合計せず、1 つずつ選んで見る
- セッションのキーイベント率は訪問の効率を、ユーザーのキーイベント率は人の割合を表す
- GA4 の収益は基幹システムと一致しないのが普通で、比較のための参考値として使う
- ARPU と ARPPU で売上の変化の理由を分解し、LTV で長期的な価値を評価する
次の章では、ユーザーがどこから来たのかを表す、流入元のディメンションを詳しく見ていきます。