5.5 収益化レポート
この章で学ぶこと
- 収益化の概要レポートで売上の全体像をつかむ方法
- e コマース購入数レポートで商品ごとの動きを見る方法
- アプリ内購入と広告収益のレポート
- ユーザーの購入経路レポートで購入までの離脱を見る方法
ポイント 収益化レポートにデータが表示されるのは、e コマースのイベント(
view_item、add_to_cart、purchaseなど)を計測している場合や、アプリの課金・広告収益を計測している場合です。e コマースの計測の実装方法は第 7 部で扱います。まだ実装していない場合は、この章で「どんなレポートが見られるようになるか」を確認しておきましょう。
収益化の概要
「レポート」→「ライフサイクル」→「収益化」→「概要」には、売上に関する主要なカードが並んでいます。
| カード | 内容 |
|---|---|
| 総収益、購入による収益 | 期間内の収益とその推移 |
| 総購入者数、初回購入者数 | 購入したユーザーの数と、初めて購入したユーザーの数 |
| ユーザーあたりの平均購入収益額 | ARPU に近い指標 |
| アイテム名別の購入されたアイテム | よく売れている商品 |
| アイテム リスト名別のアイテム | 商品一覧(「おすすめ」「ランキング」など)ごとの成果 |
| プロモーション名別のアイテム | バナーなどのプロモーションごとの成果 |
| 注文クーポン別の購入数 | クーポンごとの利用状況 |
概要で確認すること
- 収益の推移:前の期間や前年と比べて増えているか、減っているか
- 購入者数と初回購入者数:新しいお客様がどれくらい増えているか。初回購入者の割合が下がっている場合は、新規顧客の獲得が弱くなっている可能性がある
- よく売れている商品:売れ筋の商品が想定どおりか
第 4 部で学んだように、売上の変化は「購入者数」と「購入者 1 人あたりの収益」に分解して考えるのが基本です。
総収益 = 購入者数 × 購入者あたりの平均収益(ARPPU)
購入者数 = アクティブ ユーザー数 × 購入者の割合
e コマース購入数
e コマース購入数 レポートは、商品(アイテム)ごとの閲覧から購入までの動きを表示します。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| 閲覧されたアイテム数 | 商品の詳細ページが表示された回数(view_item) |
| カートに追加されたアイテム数 | 商品がカートに追加された回数(add_to_cart) |
| 閲覧後カートに追加された商品の割合 | 閲覧のうち、カートに追加された割合 |
| 購入されたアイテム数 | 商品が購入された数(purchase の quantity の合計) |
| 閲覧後購入された商品の割合 | 閲覧のうち、購入された割合 |
| アイテムの収益 | その商品の売上 |
商品の分析の観点
| 状況 | 考えられること | 改善の例 |
|---|---|---|
| 閲覧は多いが、カート追加率が低い | 商品ページで購入の決め手に欠ける(価格、写真、説明、レビュー、在庫など) | 商品ページの写真や説明を充実させる、レビューを表示する |
| カート追加率は高いが、購入率が低い | カートに入れたものの、購入に至っていない(送料、決済方法、比較検討など) | 送料の表示を早める、カゴ落ちのリマインドメールを送る |
| 閲覧が少ないが、購入率が高い | 見てもらえれば売れる商品 | トップページや一覧での露出を増やす、広告で集客する |
| 閲覧も購入率も低い | 関心を持たれていない | 商品ラインナップや見せ方を見直す |
ポイント 表の左上のディメンションを「アイテム カテゴリ」や「アイテムのブランド」に切り替えると、カテゴリやブランドごとの傾向を確認できます。商品数が多いサイトでは、まずカテゴリ単位で傾向をつかんでから、個別の商品を見るのが効率的です。
アプリ内購入と広告収益
アプリを計測している場合、収益化のセクションには次のようなレポートも表示されます。
アプリ内購入
アプリ内課金(アプリ ストアを通じた購入)のデータを表示します。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| 数量 | 購入された数 |
| 商品の収益 | アプリ内購入による収益 |
アプリ内購入のデータは、Google Play や App Store との連携、または SDK による in_app_purchase イベントの計測によって取得されます。
パブリッシャー広告
アプリやサイトに広告を表示して収益を得ている場合(AdMob などとの連携が必要)、広告の表示回数、クリック数、広告収益などを表示します。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| パブリッシャー広告の表示回数 | 広告が表示された回数 |
| 広告ユニットの露出 | 広告ユニットが表示された回数 |
| 広告のクリック数 | 広告がクリックされた回数 |
| 広告収益の合計 | 広告によって得られた収益 |
ユーザーの購入経路
ユーザーの購入経路(購入ジャーニー)レポートは、ユーザーがセッションを開始してから購入に至るまでの各段階で、どれくらいのユーザーが残っているかを表示します。
セッションの開始 10,000 人 100%
↓
商品の閲覧 4,500 人 45.0%
↓
カートへの追加 1,200 人 12.0%
↓
購入手続きの開始 600 人 6.0%
↓
購入 300 人 3.0%
(数値は例)
各段階の間の「離脱率」を見ると、どこで多くのユーザーが離れているかがわかります。
| 段階の間 | 離脱の割合(上の例) | 考えられる原因 |
|---|---|---|
| セッションの開始 → 商品の閲覧 | 55% | トップや一覧から商品ページに進めていない |
| 商品の閲覧 → カートへの追加 | 73% | 商品ページで購入の決め手に欠ける |
| カートへの追加 → 購入手続きの開始 | 50% | カートで送料などを見て離脱、比較検討中 |
| 購入手続きの開始 → 購入 | 50% | 入力フォームが長い、決済方法が少ない、会員登録が必須 |
デバイス別に比べる
購入経路は、デバイス別に比べると改善のヒントが見つかりやすくなります。レポートの上部の「比較を追加」で、「デバイス カテゴリ = mobile」と「デバイス カテゴリ = desktop」の比較を作ってみましょう。
たとえば、「購入手続きの開始 → 購入」の離脱が、パソコンでは 30%、スマホでは 60% だった場合、スマホの決済フォームに使いにくさがある可能性が高くなります。
注意 ユーザーの購入経路レポートは、推奨イベント(
view_item、add_to_cart、begin_checkout、purchase)を前提にしています。独自のイベント名で計測している場合は表示されないため、探索の「ファネル データ探索」(第 6 部)で独自のステップを定義しましょう。
収益化レポートを見るときの注意
収益は基幹システムと一致しない
第 4 部で説明したとおり、GA4 の収益は基幹システムの売上と一致しないのが普通です。収益化レポートは、「どの商品が、どの段階で、どのデバイスで売れているか・売れていないか」を把握するために使い、正式な売上の報告には基幹システムの数値を使いましょう。
計測の不具合に気づく
収益化レポートで、次のような状況が見られたら、計測の不具合を疑いましょう。
| 状況 | 考えられる不具合 |
|---|---|
| 購入数が急に 0 になった | 購入完了ページのタグが外れた、決済システムの変更でページの構成が変わった |
| 購入数が急に 2 倍になった | purchase が二重に送られている(ページの再読み込み、タグの重複など) |
| 収益が極端に大きい・小さい | value の単位の誤り(税込・税抜、円・銭など)、currency の指定漏れ |
アイテム名が (not set) | items 配列のパラメータが送られていない |
よくある質問
Q. 収益化のレポートが表示されません。
A. 収益化のレポートは、EC のイベント(purchase など)や、アプリ内購入、広告収益のデータがあるときに意味を持ちます。EC の計測をしていないサイトでは、レポートに何も表示されないか、0 が並びます。また、ライブラリの設定で、収益化のコレクションやトピックが非公開になっている場合もあります(この部の第 9 章)。
Q. 「総収益」と「購入による収益」は、どちらを見ればよいですか。
A. ウェブの EC サイトで、商品の販売だけが収益であれば、ほとんどの場合は同じになります。アプリ内購入、定期購入、広告収益などがあると、総収益のほうが大きくなります。報告に使うときは、どちらの指標かを明記 しましょう(第 4 部)。
Q. 返金があった場合、収益は減りますか。
A. refund イベントを送ると、返金の金額が記録され、収益の指標から差し引かれる指標もあります。返金を計測していない場合、GA4 の収益は返金の前の金額のままです。返金が多い商材では、GA4 の収益と、実際の売上の差が大きくなる点に注意しましょう。
Q. 通貨が混ざっていて、収益が正しく表示されません。
A. イベントの currency パラメータで送った通貨は、プロパティの通貨の設定に換算されて表示されます。currency を送り忘れると、収益が正しく集計されないことがあります。value と currency は、必ずセットで送りましょう(第 7 部)。
実践ワーク
収益化のレポートを使って、次の問いに答えてみましょう。
- 先月、収益が最も多かった商品はどれか。その商品の購入数と、平均の単価はいくらか
- 前年同月と比べて、収益が最も増えた商品と、最も減った商品はどれか
- 「閲覧後カートに追加された率」が最も高い商品と、最も低い商品はどれか
- 購入したユーザーのうち、新規ユーザーの割合はどれくらいか
答えを出したら、「収益が最も減った商品」について、原因の仮説を立ててみましょう。在庫切れ、価格の変更、広告の停止、季節の影響など、サイトの外の出来事も含めて考えるのがポイントです。社内の販売の担当者に確認すると、GA4 だけではわからない理由が見つかることもあります。
まとめ
- 収益化レポートは、e コマースやアプリの課金・広告収益を計測している場合に使える
- 収益化の概要で、収益・購入者数・初回購入者数の推移を確認する
- e コマース購入数レポートで、商品ごとの「閲覧 → カート追加 → 購入」の割合を比べる
- ユーザーの購入経路レポートで、購入までのどの段階で離脱が多いかを確認し、デバイス別に比べる
- 収益は基幹システムと一致しない参考値として扱い、急な変化は計測の不具合も疑う
次の章では、ユーザーが戻ってきているかを確認する、維持率レポートの使い方を学びます。