5.6 維持率レポート
この章で学ぶこと
- 維持率レポートで、新規ユーザーとリピーターの推移を見る方法
- コホートの考え方と、コホート表の読み方
- ユーザー維持率の推移の読み方
- LTV(顧客生涯価値)のグラフの読み方
新規とリピーター
「レポート」→「ライフサイクル」→「維持率」(「リテンション」と表示されることもあります)は、ユーザーが戻ってきているか を確認するためのレポートです。
レポートの最初のカードには、新規ユーザー数とリピーター数の推移 が表示されます。
日別のユーザー数
■ 新規ユーザー
■ リピーター
│ ■■
│ ■■ ■■ ■■
│ ■■ ■■ ■■ ■■ ■■
│ ■■ ■■ ■■ ■■ ■■ ■■ ■■
└──────────────────────
月 火 水 木 金 土 日
新規とリピーターのバランス
新規ユーザーとリピーターのバランスは、サイトの性質によって異なります。
| サイトの種類 | 一般的なバランス | 理由 |
|---|---|---|
| 会員制のサービス、業務ツール | リピーターが多い | 繰り返し利用することが前提 |
| メディア、ブログ | 新規ユーザーが多め | 検索から新しい人が記事を読みに来る |
| EC サイト | 新規とリピーターの両方 | 新規獲得とリピート購入の両方が重要 |
| キャンペーン サイト | 新規ユーザーが大半 | 一度きりの訪問が中心 |
自社のサイトの目的に照らして、新規ユーザーを増やすべきか、リピーターを増やすべきかを考えましょう。たとえば、会員制のサービスでリピーターの割合が下がっている場合は、継続利用が減っているサインかもしれません。
注意 第 3 部で説明したとおり、Cookie の制限などで、リピーターが新規ユーザーとして数えられることがあります。リピーターの割合は、実際より低めに出ると考えておきましょう。
コホートの読み方
維持率レポートの中心となるのが、コホート の考え方です。コホートとは、同じ時期に同じ行動をしたユーザーのグループ のことです。維持率レポートでは、「同じ日(または週)に初めて訪れたユーザー」を 1 つのコホートとして扱います。
コホート表の例
初回訪問からの経過週
コホート(初回訪問の週) 0 週目 1 週目 2 週目 3 週目 4 週目
10/1〜10/7 (1,000 人) 100% 18% 12% 10% 8%
10/8〜10/14 (950 人) 100% 20% 14% 11%
10/15〜10/21 (1,100 人) 100% 15% 10%
10/22〜10/28 (1,050 人) 100% 16%
(数値は例)
この表は、次のように読みます。
- 横に読む:10 月 1〜7 日に初めて訪れた 1,000 人のうち、翌週(1 週目)にも訪れた人は 18%、2 週目は 12%、と減っていく
- 縦に読む:「1 週目」の列を縦に見ると、コホートごとの翌週の維持率を比べられる。10 月 8〜14 日のコホートは 20% と高く、10 月 15〜21 日のコホートは 15% と低い
- 斜めに読む:同じ時期(カレンダー上の同じ週)に、各コホートがどれくらい戻ってきたかがわかる。特定の週に全コホートの値が上がっていれば、その週に何か施策(メール配信、キャンペーンなど)があった可能性がある
コホートを比べてわかること
コホートごとの維持率の違いは、その時期に獲得したユーザーの質 や、その時期のサイトの体験 の違いを表していることがあります。
| 状況 | 考えられること |
|---|---|
| ある週のコホートだけ維持率が高い | その週の集客施策で、関心の高いユーザーを獲得できた |
| ある週のコホートだけ維持率が低い | その週の広告などで、関心の低いユーザーが大量に流入した |
| 最近のコホートほど維持率が下がっている | サイトの体験の悪化、競合の台頭、集客の質の低下など |
| 最近のコホートほど維持率が上がっている | 新機能の追加やオンボーディングの改善が効いている |
ユーザー維持率
維持率レポートには、ユーザー維持率 のグラフも表示されます。これは、新規ユーザーが初回訪問から何日後に戻ってきたかの割合を、日数の経過に沿って表したものです。
ユーザー維持率
100% │●
│
20% │ ●
│ ● ●
10% │ ● ● ● ●
│ ● ● ● ●
0% └────────────────────────
0 1 2 3 4 5 6 7 ... 42 日
一般的に、維持率は初日の翌日に大きく下がり、その後はゆるやかに下がっていきます。このグラフで注目するのは、どこで下げ止まるか です。
- 維持率がある程度の水準で下げ止まっている → 一定の割合のユーザーが定着している
- 維持率がどんどん 0 に近づいていく → ユーザーが定着していない
エンゲージメントの維持率
レポートには、「ユーザーのエンゲージメントの維持率」のように、戻ってきたユーザーのエンゲージメント時間を示すグラフが表示されることもあります。戻ってきたユーザーが、どれくらい深くサイトに関わっているかを確認できます。
ポイント 維持率レポートのグラフは、標準では決まった期間(過去 42 日間など)のデータで表示されます。コホートの期間や条件を自由に変えて分析したい場合は、探索の「コホート データ探索」(第 6 部)を使いましょう。
LTV グラフ
維持率レポートには、LTV(顧客生涯価値)のグラフも表示されます(収益を計測している場合)。これは、新規ユーザーが初回訪問から何日の間に、1 人あたり平均でどれくらいの収益をもたらしたかを、日数の経過に沿って累積で表したものです。
ユーザーの平均 LTV(累積)
¥600 │ ●
│ ●
¥400 │ ●
│ ●
¥200 │ ●
│●
¥0 └────────────────────────
0 7 14 21 28 35 42 日
(数値は例)
LTV グラフの読み方
- グラフの傾き:急なほど、ユーザーが短期間に多くの収益をもたらしている
- 伸び続けているか:日数がたっても LTV が伸び続けていれば、リピート購入が起きている
- 頭打ちになっているか:早い段階で LTV が横ばいになる場合は、初回の購入のあと、リピートが少ない
LTV を高めるには
LTV のグラフが早い段階で頭打ちになっているなら、リピートを促す施策を検討しましょう。
| 施策 | 狙い |
|---|---|
| 購入後のフォローメール | 2 回目の購入のきっかけを作る |
| 会員プログラム、ポイント | 継続して利用する動機を作る |
| 定期購入、サブスクリプション | 継続的な購入の仕組みを作る |
| 関連商品のおすすめ | 1 回あたりの購入額と、次の購入のきっかけを増やす |
施策を実施したら、施策の後に獲得したユーザーのコホートで、LTV の伸びが改善しているかを確認します。
よくある質問
Q. 維持率のレポートの「リピーター」は、どう定義されていますか。
A. GA4 の維持率のレポートでは、期間内に初めて訪れた 新規ユーザー と、以前にも訪れたことがある リピーター(再訪問したユーザー)を分けて表示します。ここでの「以前に訪れた」は、同じ Cookie(または識別子)で判定されるため、Cookie が消えると、同じ人でも新規ユーザーとして数えられます。
Q. 維持率が低いのですが、どのくらいが普通ですか。
A. サイトの性質で大きく違います。毎日使うサービスと、数年に一度しか使わないサービス(引っ越し、結婚式場など)では、適切な維持率がまったく違います。維持率は、自社の過去の推移 や、施策の前後で比べるのがおすすめです。
Q. LTV グラフの値は、どの期間の収益ですか。
A. 維持率のレポートの LTV は、新規ユーザーが最初に訪れてから、一定の日数の間に生んだ収益の 平均 です。期間の長さや、対象のユーザーの範囲によって値が変わるため、比べるときは同じ条件にそろえましょう。詳しく分析するには、探索の「ユーザーのライフタイム」を使います(第 6 部)。
Q. 維持率を上げるには、何をすればよいですか。
A. メールマガジンやプッシュ通知、会員の特典、新しいコンテンツの定期的な公開、お気に入りの機能など、また来る理由 を作る施策が中心です。施策を行ったら、施策の前後で獲得したユーザーのコホートを比べて、維持率が変わったかを確認しましょう。
実践ワーク
探索の「コホート データ探索」で、次の設定のコホート表を作ってみましょう。
| 設定 | 値 |
|---|---|
| コホートへの登録条件 | 初回の訪問(first_touch) |
| リピートの条件 | すべてのイベント(または、キーイベント) |
| コホートの粒度 | 週単位 |
| 計算 | 標準 |
表ができたら、次のことを確認します。
- 1 週間後に戻ってくるユーザーの割合は、どのくらいか
- 週ごとのコホートで、維持率が特に高い(または低い)週はあるか
- その週に、何があったか(キャンペーン、記事の公開、広告など)
特定の週のコホートの維持率が低い場合、その週に獲得したユーザーの流入元が、普段と違っていないかを確認しましょう。広告で一時的に多くのユーザーを集めた週は、維持率が低くなりやすい傾向があります。
まとめ
- 維持率レポートは、ユーザーが戻ってきているかを確認するためのレポートである
- 新規ユーザーとリピーターのバランスは、サイトの性質に照らして評価する
- コホート表は横(時間の経過)・縦(コホート間の比較)・斜め(同じ時期の施策の影響)に読む
- ユーザー維持率のグラフは、どこで下げ止まるかに注目する
- LTV グラフで、リピートによって収益が伸び続けているかを確認する
次の章では、どんな人が、どんな環境でサイトを見ているかを確認する、ユーザー属性とテクノロジーのレポートを見ていきます。