6.7 コホートとユーザー生涯価値
この章で学ぶこと
- コホート データ探索の基本と、表の読み方
- コホートの条件(獲得の条件・リピートの条件・粒度)の設定
- ユーザー生涯価値の探索の使い方
- 実例:獲得チャネルごとの LTV を比べる
コホート データ探索
第 5 部の維持率レポートでは、コホート(同じ時期に初めて訪れたユーザーのグループ)の定着を、決まった条件で見ました。コホート データ探索 を使うと、コホートの条件を自由に設定して分析できます。
設定の手順
- 「探索」で、テンプレートの「コホート データ探索」を開く
- タブの設定パネルで、次の項目を設定する
- コホートへの登録条件
- リピートの条件
- コホートの粒度
- 計算
- 内訳
- 値
- キャンバスに、コホート表が表示される
コホート表の読み方の復習
0 週目 1 週目 2 週目 3 週目
10/1〜10/7(800 人) 800 144 96 80
10/8〜10/14(760 人) 760 152 106
10/15〜10/21(820 人)820 131
10/22〜10/28(790 人)790
(数値は例)
- 行:コホート(いつ獲得したユーザーか)
- 列:獲得からの経過期間
- セル:その期間に、条件を満たした(戻ってきた)ユーザーの数(または割合)
セルの色が濃いほど値が大きいことを表し、色の濃淡で傾向をつかめます。
コホートの条件設定
コホート データ探索の強みは、条件を自由に変えられることです。
コホートへの登録条件
ユーザーが、どの行動をしたときにコホートに入るかを決めます。
| 登録条件 | 意味 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 初回接触(獲得日) | 初めて訪れた日 | 新規ユーザーの定着を見る(既定) |
| 任意のイベント | 期間内に何らかのイベントを発生させた日 | すべてのアクティブなユーザーの再訪を見る |
| 任意の取引 | 購入をした日 | 購入者のリピート購入を見る |
| 任意のキーイベント | キーイベントを達成した日 | 成果を出したユーザーのその後を見る |
| その他(特定のイベント) | 会員登録など、特定のイベントの日 | 会員登録した人の定着を見る |
リピートの条件
コホートに入ったユーザーが、その後のどの行動をしたら「戻ってきた」と数えるかを決めます。
| リピートの条件 | 意味 |
|---|---|
| 任意のイベント | 何らかのイベントを発生させた(訪問した) |
| 任意の取引 | 購入した |
| 任意のキーイベント | キーイベントを達成した |
| その他(特定のイベント) | 特定の行動(ログインなど)をした |
たとえば、「登録条件 = 任意の取引、リピートの条件 = 任意の取引」にすると、「初めて購入した人が、その後また購入したか」(リピート購入率)を見られます。
コホートの粒度と計算
| 設定 | 選択肢 | 内容 |
|---|---|---|
| コホートの粒度 | 日別、週別、月別 | コホートの単位と、列の経過期間の単位 |
| 計算 | 標準、継続、累積 | セルの値の数え方 |
計算 の違いは、次のとおりです。
| 計算 | セルの値 |
|---|---|
| 標準 | その期間に条件を満たしたユーザー(前の期間に満たしたかは問わない) |
| 継続 | その期間 まで毎期間 条件を満たし続けたユーザー |
| 累積 | その期間までに、条件を満たした回数や値の合計 |
「継続」は、毎週利用し続けている「定着したユーザー」を見たいときに、「累積」は、購入額などの累計を見たいときに使います。
内訳と値
- 内訳:ディメンション(例:最初のユーザーのチャネル、デバイス カテゴリ)でコホートを分けて表示する
- 値:セルに表示する指標(アクティブ ユーザー数、トランザクション数、購入による収益、エンゲージメント時間など)
ポイント 内訳に「最初のユーザーのデフォルト チャネル グループ」を設定すると、「どのチャネルで獲得したユーザーが定着しやすいか」を比べられます。広告の評価で、獲得した人数だけでなく「獲得した人の質」を見るのに役立ちます。
ユーザー生涯価値
ユーザー生涯価値(ユーザーのライフタイム)の探索は、ユーザーが初めて訪れてから現在までに、どれくらいの価値(収益やエンゲージメントなど)をもたらしたかを分析する手法です。
設定の手順
- 「探索」で、テンプレートの「ユーザー生涯価値」を開く
- 行にディメンション(例:最初のユーザーのデフォルト チャネル グループ)を置く
- 値に、ライフタイムの指標を置く
ライフタイムの指標
ユーザー生涯価値の探索では、次のような「ライフタイム」の指標が使えます。
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| LTV:平均 | ユーザー 1 人あたりの、初回訪問から現在までの平均収益 |
| ライフタイムのエンゲージメント時間:平均 | ユーザー 1 人あたりの累計エンゲージメント時間 |
| ライフタイムのトランザクション:平均 | ユーザー 1 人あたりの累計購入回数 |
| ライフタイムのエンゲージメント セッション:平均 | ユーザー 1 人あたりの累計のエンゲージのあったセッション数 |
| 購入の可能性、予測収益 | 予測指標(一定のデータ量が必要) |
注意点
- ユーザー生涯価値の探索では、変数パネルで指定した期間は「その期間に 獲得した ユーザー」を選ぶ条件になる。収益などは、獲得から現在までの累計で集計される
- 期間の最初のほうに獲得したユーザーほど、累計の期間が長くなるため、LTV が大きくなりやすい。獲得時期の違うグループを比べるときは注意する
- データ保持期間(最大 14 か月)より前の行動は、集計に含まれない
実例:獲得チャネル別の LTV
最後に、ユーザー生涯価値の探索を使った分析の実例を紹介します。EC サイトで、「どの獲得チャネルのユーザーが、長期的に最も価値が高いか」を調べます。
設定
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| 期間 | 2026 年 4 月 1 日〜4 月 30 日(この期間に獲得したユーザー) |
| 行 | 最初のユーザーのデフォルト チャネル グループ |
| 値 | 総ユーザー数、LTV:平均、ライフタイムのトランザクション:平均 |
結果(例)
| 最初のユーザーのチャネル | 総ユーザー数 | LTV:平均 | ライフタイムのトランザクション:平均 |
|---|---|---|---|
| Organic Search | 6,000 | ¥820 | 0.15 |
| Paid Search | 2,500 | ¥1,350 | 0.24 |
| Paid Social | 3,800 | ¥310 | 0.06 |
| 400 | ¥2,900 | 0.52 | |
| Referral | 600 | ¥1,100 | 0.19 |
(数値は例)
読み取りと判断
- Email で獲得したユーザーの LTV が最も高い。メルマガ登録の経路を増やす価値がある
- Paid Search(検索広告)は、獲得したユーザーの LTV が Organic Search より高い。購入意欲の高いユーザーを獲得できている
- Paid Social(SNS 広告)は、多くのユーザーを獲得しているが、LTV は低い。1 人あたりの獲得費用が LTV に見合っているかを確認する必要がある
広告の投資判断への活用
LTV がわかると、「1 人の顧客を獲得するために、いくらまでかけてよいか」(許容 CPA)を考えられます。
例)
Paid Social の LTV:平均 310 円
Paid Social で 1 人のユーザーを獲得する費用:平均 150 円
→ 獲得費用は LTV の約半分。粗利率を考慮すると、利益が出ているかは微妙
Paid Search の LTV:平均 1,350 円
Paid Search で 1 人のユーザーを獲得する費用:平均 400 円
→ LTV に対して獲得費用が十分に低い。予算を増やす余地がある
(数値は例)
注意 GA4 の LTV は、GA4 で同じユーザーとして識別できる範囲の値です(第 4 部)。また、LTV は「利益」ではなく「収益」です。投資判断をするときは、商品の原価や配送費などを差し引いた利益で考えましょう(第 8 部)。
まとめ
- コホート データ探索では、コホートへの登録条件・リピートの条件・粒度・計算を自由に設定できる
- 「登録条件 = 取引、リピート = 取引」でリピート購入率など、目的に合わせた定着を見られる
- 内訳に獲得チャネルを設定すると、獲得したユーザーの質をチャネルごとに比べられる
- ユーザー生涯価値の探索では、期間に獲得したユーザーの、現在までの累計の価値を見られる
- 獲得チャネル別の LTV は、広告の投資判断(許容 CPA)の材料になる
次の章では、分析結果を広告配信や再分析に活かす、オーディエンスの作り方と活用法を学びます。