7.5 購入ファネルの改善
この章で学ぶこと
- 購入ファネルのステップの定義のしかた
- 離脱ポイントを特定する方法
- デバイス別にファネルを比べる方法
- 離脱ポイントごとの改善施策の例
購入ファネルの定義
購入ファネル は、ユーザーが商品を見てから購入を完了するまでの段階を表したものです。e コマースの推奨イベントを使うと、次のようなファネルを作れます。
| ステップ | イベント | 意味 |
|---|---|---|
| 1. セッション開始 | session_start | サイトに来た |
| 2. 商品の閲覧 | view_item | 商品の詳細を見た |
| 3. カートに追加 | add_to_cart | 買いたい商品を選んだ |
| 4. 購入手続きの開始 | begin_checkout | 買う意思を示した |
| 5. 支払い情報の入力 | add_payment_info | 購入の直前まで進んだ |
| 6. 購入 | purchase | 購入を完了した |
2 つのファネル
購入ファネルは、目的に応じて 2 つに分けて見ると、課題を見つけやすくなります。
| ファネル | ステップ | 主な課題 |
|---|---|---|
| 商品選びのファネル | セッション開始 → 商品閲覧 → カート追加 | 集客の質、商品の見つけやすさ、商品ページの魅力 |
| 購入手続きのファネル | カート追加 → 手続き開始 → 支払い入力 → 購入 | 送料・手数料、入力フォームの使いやすさ、決済方法 |
第 5 部の「ユーザーの購入経路」レポートで全体を確認し、探索の「ファネル データ探索」(第 6 部)で細かく分析しましょう。
ポイント 購入手続きのファネルは、ユーザーが必ず順番に進む流れなので、クローズ ファネル で見ます。一方、商品選びのファネルは、検索から商品ページに直接来る人も多いので、オープン ファネル で見ると実態に近くなります(第 6 部)。
離脱ポイントの特定
ファネルを作ったら、どのステップの間で、最も多くのユーザーが離脱しているか を確認します。
ファネルの例
ステップ ユーザー数 前のステップからの通過率
1. セッション開始 50,000 —
2. 商品の閲覧 22,000 44.0%
3. カートに追加 4,400 20.0%
4. 購入手続きの開始 2,640 60.0%
5. 支払い情報の入力 1,850 70.1%
6. 購入 1,500 81.1%
(数値は例)
改善の優先順位の考え方
離脱が多いステップがわかったら、次の 2 つの観点で改善の優先順位を決めます。
- 離脱の人数が多いか:通過率が低いステップの中でも、離脱する人数の多いステップは、改善したときの効果が大きい
- 購入に近いステップか:購入に近いステップで離脱する人は、購入の意思が強い。ここを改善すると、効率よく購入を増やせる
上の例では、「商品の閲覧 → カートに追加」の通過率が 20% と最も低く、17,600 人が離脱しています。一方、「カートに追加 → 購入手続きの開始」では 1,760 人が離脱しています。後者は人数こそ少ないものの、カートに入れるほど購入の意思がある人なので、改善の効果が出やすい箇所です。
ポイント 購入手続きの改善(カート以降)は、すでに「買いたい」と思っている人を逃さないための改善です。多くの場合、商品ページの改善より実施しやすく、効果も早く出るため、最初に取り組む候補になります。
改善の効果を試算する
各ステップの通過率を改善したときに、購入がどれくらい増えるかを試算すると、優先順位を決めやすくなります。
例)「カートに追加 → 購入手続きの開始」の通過率を 60% → 70% に改善した場合
購入手続きの開始:4,400 × 70% = 3,080 人(+440 人)
購入:3,080 × 70.1% × 81.1% ≒ 1,751 人(+251 人、約 17% 増)
(数値は例)
デバイス別の比較
購入ファネルは、デバイス別に比べる と課題が見つかりやすくなります。スマホとパソコンでは、画面の大きさや入力のしやすさが大きく違うからです。
| ステップの間 | desktop の通過率 | mobile の通過率 | 差 |
|---|---|---|---|
| セッション → 商品閲覧 | 48% | 42% | -6 |
| 商品閲覧 → カート追加 | 22% | 19% | -3 |
| カート追加 → 手続き開始 | 68% | 55% | -13 |
| 手続き開始 → 支払い入力 | 82% | 62% | -20 |
| 支払い入力 → 購入 | 88% | 76% | -12 |
(数値は例)
この例では、購入手続きの中(カート以降)で、スマホの通過率が大きく下がっています。スマホでの入力フォームや決済の手順に、使いにくさがある可能性が高いと考えられます。
デバイス以外の比較
| 比較の切り口 | わかること |
|---|---|
| 新規 / 既存 | 初めての人は会員登録や情報の入力で離脱していないか |
| チャネル | 広告から来た人は、どのステップで離脱しやすいか |
| ブラウザ | 特定のブラウザで決済に不具合がないか |
| 国・地域 | 海外からの購入で、配送や決済の問題がないか |
改善施策の例
最後に、離脱ポイントごとの改善施策の例を紹介します。
セッション開始 → 商品の閲覧
| 原因の仮説 | 改善施策の例 |
|---|---|
| 目的の商品が見つからない | サイト内検索の改善、カテゴリの見直し、トップページの導線の整理 |
| 集客の質が低い(関心のない人が来ている) | 広告のターゲットや訴求の見直し |
| ランディング ページと商品が合っていない | 広告やメールのリンク先を、関連する商品ページにする |
商品の閲覧 → カートに追加
| 原因の仮説 | 改善施策の例 |
|---|---|
| 商品の情報が足りない | 写真、サイズ表、素材、使い方の説明を充実させる |
| 価格や送料がわかりにくい | 送料や配送日を商品ページに表示する |
| 不安がある | レビュー、返品の条件、保証の表示 |
| カートのボタンが見つけにくい | ボタンの位置・色・大きさの見直し(特にスマホ) |
カートに追加 → 購入手続きの開始
| 原因の仮説 | 改善施策の例 |
|---|---|
| 送料や手数料を見て驚いた | 送料を早い段階で表示する、送料無料の条件を明示する |
| 会員登録が必須で面倒 | ゲスト購入(会員登録なしでの購入)を用意する |
| とりあえずカートに入れただけ | カゴ落ちのリマインド メール、カゴ落ちユーザーへの広告(第 6 部のオーディエンス) |
購入手続きの開始 → 購入
| 原因の仮説 | 改善施策の例 |
|---|---|
| 入力項目が多い | 必須項目を減らす、住所の自動入力 |
| 入力エラーがわかりにくい | エラーをその場で表示する、何が間違っているかを具体的に示す |
| 希望の決済方法がない | ID 決済、後払い、コンビニ払いなどの追加 |
| スマホで入力しにくい | 入力欄の大きさ、キーボードの種類(数字の欄で数字キーボードを出す)の調整 |
| 決済ページの表示が遅い・エラーが出る | 決済システムの不具合の確認 |
注意 外部の決済サービスを使っている場合、決済ページから戻ってきたときに、参照元が決済サービスとして記録されることがあります。第 2 部の「除外する参照のリスト」に決済サービスのドメインを登録しておかないと、購入の流入元が正しく計測されません。
改善の効果を確かめる
施策を実施したら、次の方法で効果を確かめます。
- ファネルの傾向 を見て、改善したステップの通過率が上がったかを確認する(第 6 部)
- 改善の前後で、同じ長さ・同じ曜日の並びの期間を比べる
- 季節やセールなど、ほかの要因の影響がないかを確認する
- 可能であれば、A/B テストで比べる(第 12 部)
よくある質問
Q. ファネルの途中のステップの数値が、前のステップより多くなっています。
A. 「オープン」のファネルにしている場合は、途中のステップから始めたユーザーも数えられるため、後のステップの数が多くなることがあります。また、begin_checkout などのイベントが、ページの再読み込みや戻る操作で 重複して 送られている場合や、計測の漏れがある場合も、数値の逆転が起きます。まず「クローズ」のファネルで確認し、それでも逆転している場合は、イベントの計測を確認しましょう。
Q. 外部の決済サービスに移動したあと、購入が計測されません。
A. 決済の画面が外部のドメインにある場合、決済の完了後に自社のサイトに 戻ってくるページ(完了ページ)で purchase を送る必要があります。ユーザーが完了ページに戻る前にブラウザを閉じると、購入が計測されません。決済サービスによっては、サーバーから購入の通知を受け取れるので、Measurement Protocol で送る方法も検討しましょう(第 9 部)。また、決済サービスのドメインを、除外する参照のリストに追加しておきます(第 2 部)。
Q. カゴ落ちの率は、どのくらいが普通ですか。
A. 業種や商品の価格、送料の設定などで大きく変わるため、一律の基準はありません。他社の平均より、自社の デバイス別・新規とリピート別・期間別 の差に注目しましょう。たとえば、スマホだけカゴ落ちが多いなら、スマホの購入手続きに問題がある可能性が高くなります。
Q. ファネルを改善したら、購入率は上がったのに売上が増えません。
A. 平均購入単価が下がっていないか、確認しましょう。たとえば、クーポンを目立たせて購入率を上げると、単価が下がることがあります。ファネルの改善は、購入率 × 平均購入単価 の両方で評価することが大切です。
実践ワーク
自社の購入ファネル(またはフォームのファネル)について、次の表を埋めてみましょう。
| ステップ | 人数 | 次のステップへの移行率 | スマホの移行率 | パソコンの移行率 | 改善の仮説 |
|---|---|---|---|---|---|
| 商品の閲覧 | |||||
| カートに追加 | |||||
| 購入手続きの開始 | |||||
| 配送情報の入力 | |||||
| 購入の完了 |
表を埋めたら、移行率が最も低いステップ と、スマホとパソコンの差が最も大きいステップ に印を付けます。その 2 つのステップについて、実際に自分のスマホで購入の手続きを試し、迷ったところや面倒に感じたところを書き出しましょう。数値と実際の体験を合わせると、改善の施策が具体的になります。
まとめ
- 購入ファネルは「商品選び」と「購入手続き」の 2 つに分けて見ると、課題を見つけやすい
- 離脱の人数が多いステップと、購入に近いステップを優先して改善する
- 通過率を改善したときの購入の増加を試算すると、優先順位を決めやすい
- デバイス別に比べると、スマホの入力や決済の使いにくさが見つかりやすい
- ステップごとの原因の仮説に合わせて施策を選び、ファネルの傾向で効果を確かめる
次の章では、成果への貢献をチャネルにどう割り振るかを決める、アトリビューションの考え方を学びます。