7.6 アトリビューション

成果への貢献をチャネルにどう割り振るかを学びます。
実践書籍換算 約 12 ページ

この章で学ぶこと

  • アトリビューションとは何か、なぜ必要なのか
  • GA4 の既定のモデル「データドリブン アトリビューション」
  • ラストクリックのモデルとの違い
  • コンバージョン経路レポートの読み方
  • ルックバック ウィンドウ(貢献を数える期間)の設定

アトリビューションとは

ユーザーは、1 回の訪問で購入や問い合わせをするとは限りません。広告で知り、検索で調べ、SNS で評判を見て、メールのリンクから戻ってきて購入する——というように、複数のチャネルに接触してから成果に至る ことがよくあります。

1 回目:Paid Social(SNS 広告)で知る
2 回目:Organic Search(自然検索)で調べる
3 回目:Email(メルマガ)から戻ってきて購入

このとき、「購入の成果は、どのチャネルのおかげなのか」をどう考えればよいでしょうか。

  • 最後のメールのおかげ?
  • 最初に知るきっかけになった SNS 広告のおかげ?
  • 3 つのチャネルが少しずつ貢献した?

アトリビューション とは、このように 成果への貢献を、接触したチャネルにどう割り振るか を決める考え方です。割り振りのルールを アトリビューション モデル と呼びます。

アトリビューションが重要な理由

アトリビューションの考え方によって、チャネルの評価は大きく変わります。

チャネルラストクリック(最後に 100%)均等に割り振る場合
Paid Social0 件0.33 件
Organic Search0 件0.33 件
Email1 件0.33 件

ラストクリックで評価すると、SNS 広告は「成果ゼロ」に見えます。その結果、SNS 広告の予算を削ってしまうと、そもそもサイトを知る人が減り、メールの登録者も減って、最終的に購入が減るかもしれません。

ポイント アトリビューションは、「どのチャネルにどれだけ投資するか」という予算配分の判断に直結します。特に、広告やコンテンツなど、複数のチャネルに投資している場合は、アトリビューションの考え方を理解しておくことが欠かせません。

データドリブン アトリビューション

GA4 の既定のアトリビューション モデルは、データドリブン アトリビューション(DDA)です。

データドリブン アトリビューションは、機械学習 を使って、各チャネルの貢献度を計算するモデルです。成果に至ったユーザーの経路と、成果に至らなかったユーザーの経路を比べ、「このチャネルに接触すると、成果に至る確率がどれくらい上がるか」をもとに、貢献を割り振ります。

観点内容
割り振りの方法機械学習で、各接点の貢献度を計算する
考慮すること接触したチャネル、接触の順番、接触から成果までの時間、デバイスなど
長所サイトの実際のデータに基づいて、成果への影響を反映できる
短所計算の中身が見えにくく(ブラック ボックス)、なぜその割り振りになったかを説明しにくい

選べるアトリビューション モデル

GA4 で選べるアトリビューション モデルは、執筆時点で次のとおりです(かつてあった「線形」「減衰」「接点ベース」「ファースト クリック」などのモデルは、2023 年に廃止されました)。

モデル貢献の割り振り
データドリブン(既定)機械学習で、各接点に割り振る
有料チャネルとオーガニック チャネル(ラストクリック)成果の直前の接点(直接の流入を除く)に 100% を割り振る
Google 有料チャネル(ラストクリック)Google 広告の接点があれば、最後の Google 広告に 100% を割り振る(なければ有料・オーガニックのラストクリック)

モデルの設定

アトリビューション モデルは、管理画面の「データの表示」→「アトリビューション設定」(またはプロパティの設定の中のアトリビューション設定)で変更できます。

注意 アトリビューション モデルの変更は、過去のデータにも反映 されます(集計の方法を変える設定なので)。変更すると、レポートのキーイベント数のチャネル別の内訳などが変わるため、社内のレポートに影響しないか確認してから変更しましょう。

ラストクリックとの比較

ラストクリックとは

ラストクリック は、成果の 直前 にユーザーが接触したチャネルに、貢献のすべて(100%)を割り振るモデルです。単純でわかりやすいため、長く使われてきました。

GA4 のラストクリックのモデルでは、直接の流入(Direct)は除外 されます。ユーザーが最後にブックマークから訪れて購入した場合でも、その前に接触したチャネル(検索、広告など)に貢献が割り振られます。直接の流入に貢献が割り振られるのは、経路のすべてが直接の流入だった場合だけです。

データドリブンとラストクリックの違い

観点データドリブンラストクリック
評価が高くなりやすいチャネル認知や検討の段階で接触するチャネル(SNS、ディスプレイ広告、動画など)も評価される成果の直前に接触するチャネル(指名検索、メール、リマーケティングなど)
わかりやすさ低い(計算が複雑)高い
必要なデータ量多い(データが少ないと精度が下がる)少なくてよい
向いている使い方複数のチャネルに投資していて、全体の最適化をしたいときシンプルに評価したいとき、ほかのツールと数値を合わせたいとき

ポイント どのモデルが「正しい」ということはありません。大切なのは、社内で使うモデルを決めて、一貫して使う ことです。そのうえで、ときどきモデルを切り替えて比べ、「ラストクリックでは評価されにくいが、データドリブンでは評価されるチャネル」を把握しておくと、予算配分の判断に役立ちます。

コンバージョン経路

コンバージョン経路 レポートでは、ユーザーが成果に至るまでに接触したチャネルの 順番 を確認できます。左メニューの「広告」→「アトリビューション」→「アトリビューション パス」(コンバージョン経路)から開けます。

レポートの見方

レポートの上部には、経路を 3 つの段階に分けて、各段階で貢献したチャネルが表示されます。

段階意味
早期のタッチポイント経路の最初の 25% の接点
中間のタッチポイント経路の中間 50% の接点
後期のタッチポイント経路の最後の 25% の接点
例)
早期のタッチポイント:Organic Search 45%、Paid Social 30%、Referral 15% …
中間のタッチポイント:Organic Search 40%、Email 25%、Direct 20% …
後期のタッチポイント:Email 35%、Paid Search 30%、Organic Search 25% …

(数値は例)

この例からは、SNS 広告は 早期(知るきっかけ)に多く貢献し、メールや検索広告は 後期(最後のひと押し)に多く貢献していることがわかります。

レポートの下部の表には、具体的な経路(「Paid Social > Organic Search > Email」など)ごとに、キーイベント数、収益、成果までの日数や接点の数が表示されます。

コンバージョン経路の活用

発見活用の例
SNS 広告は早期の接点として多いSNS 広告をラストクリックだけで評価しない。認知の指標(新規ユーザー数など)でも評価する
成果までの平均日数が長い検討期間中のフォロー(メール、リマーケティング)を強化する
成果までの接点の数が多い複数のチャネルを組み合わせた施策を設計する

ルックバック ウィンドウ

ルックバック ウィンドウ は、成果から どれくらいさかのぼって 接点を貢献の対象にするかを決める期間です。

キーイベントの種類選べる期間既定
獲得のキーイベント(first_open、first_visit)7 日、30 日30 日
それ以外のキーイベント30 日、60 日、90 日90 日

たとえば、ルックバック ウィンドウが 30 日の場合、成果の 31 日前に接触したチャネルは、貢献の対象になりません。

ルックバック ウィンドウの選び方

商材の特徴考え方
検討期間が短い(日用品、低価格の商品)30 日でも十分
検討期間が長い(BtoB、高額商品、不動産など)90 日にして、初期の接点も評価する

ルックバック ウィンドウは、アトリビューション モデルと同じ「アトリビューション設定」の画面で変更できます。変更は、変更した時点以降 のデータに反映されます。

注意 GA4 のアトリビューションは、GA4 が同じユーザーとして識別できる範囲の接点だけを対象にしています。Cookie の制限やデバイスの切り替えで、途中の接点が別のユーザーとして記録されると、経路は短く見えます。また、広告の「表示されただけ」の接点(ビュースルー)は、一部の Google の広告を除いて含まれません。アトリビューションの数値は「完全な真実」ではなく、判断の材料の一つとして扱いましょう。

よくある質問

Q. アトリビューション モデルを変えると、過去のレポートの数値も変わりますか。

A. プロパティのアトリビューション モデルを変更すると、変更は 過去のデータにも反映されて レポートが表示されます(モデルの変更は、データの見せ方の変更であり、計測したデータそのものは変わりません)。変更すると、以前に作った資料の数値と、画面の数値が合わなくなるため、変更する日と理由を記録し、関係者に知らせましょう。

Q. キーイベントの数が「12.6」のように小数になっています。

A. データドリブン アトリビューションなど、複数のチャネルに成果を割り振るモデルでは、1 つのキーイベントが、複数のチャネルに 0.3、0.7 のように分けて配分されます。そのため、チャネル別の値は小数になることがあります。合計すると、実際のキーイベントの数になります。

Q. データドリブン アトリビューションの割り振りの根拠を、社内に説明できません。

A. データドリブン アトリビューションは、成果に至ったユーザーと至らなかったユーザーの経路を、機械学習で比べて、各接点の貢献を推定します。個々の割り振りの計算を、手で再現することはできません。社内に説明するときは、「ラストクリックだけでは、最後の接点しか評価されない」という問題を示し、モデル比較で、チャネルごとの評価の違いを並べて見せると伝わりやすくなります。

Q. ルックバック ウィンドウは、どれくらいにすればよいですか。

A. 自社の商材の 検討期間 に合わせます。購入までが数日の商材なら既定の値で十分なことが多く、BtoB の高額な商材のように数か月かかる場合は、長めに設定することを検討します。コンバージョン経路のレポートで、「最初の接点から成果までの日数」を確認すると、判断の材料になります。

実践ワーク

モデル比較(または広告のアトリビューションのレポート)を使って、次の表を作ってみましょう。

チャネルラストクリックのキーイベントデータドリブンのキーイベント変化率考えられる役割
Organic Search
Paid Search
Paid Social
Email
Direct

データドリブンで評価が 上がる チャネルは、成果の前の段階(認知や検討)で貢献している可能性があります。評価が 下がる チャネルは、最後のひと押しの役割が中心の可能性があります。表をもとに、「各チャネルの役割」を 1 行ずつ書き、広告の予算配分(第 8 部)の議論の材料にしましょう。

まとめ

  • アトリビューションは、成果への貢献を、接触したチャネルにどう割り振るかを決める考え方である
  • GA4 の既定はデータドリブン アトリビューションで、機械学習で各接点の貢献を割り振る
  • ラストクリックは成果の直前の接点(直接の流入を除く)に 100% を割り振る、わかりやすいモデル
  • コンバージョン経路レポートで、チャネルが早期・中間・後期のどこで貢献しているかがわかる
  • ルックバック ウィンドウは、商材の検討期間に合わせて設定する

次の章では、返金や定期購入など、一般的でない収益を正しく計測する方法を学びます。