7.7 返品・サブスクリプションなど特殊な計測
この章で学ぶこと
- 返金(
refund)イベントで、返品やキャンセルを反映する方法 - サブスクリプション(定期購入・月額課金)の計測の考え方
- 店舗や電話などオフラインの売上を GA4 に取り込む方法
返金イベント
EC サイトでは、購入のあとに キャンセル や 返品 が発生することがあります。GA4 の purchase イベントは購入の時点で送られるため、何もしなければ、キャンセルされた注文も売上として残り続けます。
これを反映するのが、推奨イベントの refund(返金)です。
全額の返金
注文全体をキャンセル・返品した場合は、transaction_id だけを指定して refund を送ります。
gtag('event', 'refund', {
currency: 'JPY',
transaction_id: 'T-20261028-0012', // 返金する注文の ID
value: 6280, // 返金額
});
一部の返金
注文の中の一部の商品だけを返品した場合は、items で返品した商品と数量を指定します。
gtag('event', 'refund', {
currency: 'JPY',
transaction_id: 'T-20261028-0012',
value: 800,
items: [
{
item_id: 'SKU-105',
quantity: 1,
},
],
});
返金イベントの送り方
キャンセルや返品は、多くの場合、ユーザーがサイトを見ているときではなく、後日、管理者がシステムで処理する ときに発生します。そのため、ブラウザのタグからは送れないことがほとんどです。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| Measurement Protocol | EC システムのサーバーから、HTTP リクエストで refund を送る(第 9 部) |
| データのインポート | 返金のデータを CSV などで定期的にアップロードする(対応する場合) |
| マイページでのキャンセル | ユーザーが自分でキャンセルできる画面がある場合は、その完了時にタグから送る |
注意 返金イベントを送ると、レポートの「総収益」は返金を差し引いた値になります(「購入による収益」は差し引かれない場合があります)。どの指標に返金が反映されるかを確認し、社内のレポートで使う指標を決めておきましょう。返金を送っていない場合は、GA4 の売上が実際より多めに出ることを前提に扱います。
サブスクリプションの計測
月額課金の会員サービスや、定期購入(サブスクリプション)の商品では、最初の申し込み と 継続的な課金 をどう計測するかが課題になります。
何を計測するか
| 行動 | 計測の方法の例 | キーイベント |
|---|---|---|
| 無料トライアルの開始 | sign_up(method = trial)、または独自の trial_start | する |
| 有料プランへの申し込み(初回課金) | purchase(items に定期プランの商品) | する |
| 継続課金(2 回目以降) | サーバーから purchase を送る、または送らない(後述) | 方針による |
| プランの変更 | 独自の plan_change(plan_from、plan_to) | しない |
| 解約 | 独自の subscription_cancel | しない |
継続課金を GA4 に送るか
継続課金(毎月の自動課金)を GA4 に送るかどうかは、分析の目的によって判断します。
| 方針 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
送る(サーバーから毎月 purchase を送る) | GA4 の LTV やチャネル別の収益に、継続課金の収益が反映される | 実装が必要。継続課金のたびにユーザーがサイトに来るわけではないので、セッションやチャネルの情報が付かない |
| 送らない(初回の申し込みだけを計測) | 実装がシンプル | GA4 の収益は初回だけになり、LTV が実態より小さく見える |
継続課金の収益を含めた分析が必要な場合は、GA4 に送るより、BigQuery で課金システムのデータと GA4 のデータを結合する ほうが、柔軟に分析できることが多いです(第 10 部)。
ポイント サブスクリプションの事業では、「どのチャネルから来た人が、長く継続してくれるか」が重要です。初回の申し込みのイベントに、流入元の情報が付いていれば、課金システム側で申し込み時の流入元を保存しておき、継続期間や累計の課金額と結びつけて分析できます。
ユーザー プロパティでプランを持つ
会員のプランの種類(無料、ベーシック、プレミアムなど)を ユーザー プロパティ(第 3 部)として送っておくと、プランごとの使われ方の違いを分析できます。
gtag('set', 'user_properties', {
plan_type: 'premium',
subscription_status: 'active',
});
オフライン売上の取り込み
店舗での販売、電話での注文、営業担当者が受けた契約など、ウェブサイトの外(オフライン)で発生した売上 を、GA4 に取り込みたい場合があります。
オフラインの売上を取り込む方法
| 方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| Measurement Protocol | サーバーから、オフラインで発生したイベントを送る。送る際に、ウェブのユーザーの識別子(クライアント ID や User-ID)を指定する | ウェブでの行動とオフラインの成果を結びつけたい |
| データのインポート | CSV ファイルなどで、ユーザーのデータやオフラインのイベントをアップロードする | 定期的にまとめて取り込みたい |
| BigQuery での結合 | GA4 のデータと、基幹システムや CRM のデータを BigQuery で結合する | 柔軟な分析をしたい(GA4 の画面ではなく SQL で分析する) |
ウェブとオフラインを結びつける
オフラインの成果を、ウェブでの行動と結びつけるには、共通の識別子 が必要です。
1. ユーザーがウェブで資料請求する
→ フォームの隠し項目に、GA4 のクライアント ID(または User-ID)を入れて、CRM に保存する
2. 営業担当者が商談を進め、受注する
→ CRM に受注が記録される
3. CRM から、保存しておいたクライアント ID を指定して、Measurement Protocol で
受注のイベント(例:close_won)を GA4 に送る
4. GA4 で、受注のイベントを流入元などと結びつけて分析できる
注意 クライアント ID や User-ID を CRM に保存する場合は、プライバシー ポリシーへの記載など、個人情報の取り扱いのルールに従う必要があります。また、GA4 に送るイベントには、氏名やメールアドレスなどの個人情報を含めてはいけません(第 11 部)。
オフラインの取り込みの難易度
オフラインの売上の取り込みは、システムの連携が必要になるため、ほかの計測に比べて難易度が高い取り組みです。まずは、次のような簡単な方法から始めることを検討しましょう。
- フォームの種類ごとに想定価値を設定する(第 2 章):オフラインのデータを取り込まなくても、リードの価値で評価できる
- 流入元の情報を CRM に保存する:UTM の値などをフォームの隠し項目で CRM に保存し、CRM 側で受注と流入元を分析する
- 定期的に BigQuery で結合する:必要になったら、BigQuery を使った本格的な分析に進む(第 10 部)
まとめ
- キャンセルや返品は、
refundイベントで反映する。多くの場合、サーバーから Measurement Protocol で送る - サブスクリプションでは、トライアル・初回課金・解約などを計測し、継続課金を GA4 に送るかは目的で判断する
- プランの種類はユーザー プロパティにして、プランごとの使われ方を分析する
- オフラインの売上は、Measurement Protocol、データのインポート、BigQuery での結合で取り込める
- ウェブとオフラインを結びつけるには共通の識別子が必要。まずは想定価値や CRM での流入元の保存から始める
これで第 7 部は終わりです。理解度クイズ で確認してみましょう。次の第 8 部では、流入経路を正しく計測し、広告や SEO の効果を判断する方法を学びます。