9.1 GTM の基本概念
この章で学ぶこと
- Google タグ マネージャー(GTM)を使う理由
- GTM の 3 つの部品「タグ・トリガー・変数」の関係
- コンテナとワークスペースの役割
- GTM で使う GA4 のタグの種類
なぜ GTM を使うのか
Google タグ マネージャー(GTM)は、ウェブサイトに設置するさまざまな タグ(計測や広告のためのコード)を、管理画面からまとめて管理できる Google の無料ツールです。
GTM を使わない場合、計測のコードを追加・変更するたびに、サイトの HTML を直接書き換える必要があります。
| 比べる点 | GTM を使わない場合 | GTM を使う場合 |
|---|---|---|
| タグの追加・変更 | サイトの HTML を編集し、サーバーに反映する | GTM の管理画面で設定して「公開」するだけ |
| 担当者 | 開発者やサイト制作会社に依頼することが多い | マーケティング担当者でも操作できる |
| 反映までの時間 | 依頼から数日〜数週間かかることもある | 数分〜数時間 |
| 変更の履歴 | HTML の差分を追う必要がある | バージョンごとに履歴が残り、元に戻せる |
| 動作の確認 | 本番に反映しないと確認しにくい | プレビュー モードで、公開前に確認できる |
| タグの一覧 | HTML のあちこちに散らばる | 1 つの画面で一覧できる |
GTM が向いているケース
- GA4 で、クリックやフォーム送信、スクロールなどのイベントを細かく計測したい
- Google 広告、Meta、LINE など、複数の広告のタグを設置する
- 計測の要件が頻繁に変わる
- サイトの HTML を直接編集するのに時間やコストがかかる
注意 GTM は便利な反面、誰でもサイトに JavaScript を追加できる ツールでもあります。誤ったタグを公開すると、サイトの表示が崩れたり、個人情報を外部に送ってしまったりする危険があります。権限の管理と公開前の確認が欠かせません(この部の第 6 章)。
タグ・トリガー・変数
GTM の設定は、タグ・トリガー・変数 という 3 つの部品の組み合わせでできています。
| 部品 | 役割 | たとえると | 例 |
|---|---|---|---|
| タグ | 実行する処理(何をするか) | 「行動」 | GA4 にイベントを送る、広告のコンバージョンを送る |
| トリガー | タグを実行する条件(いつするか) | 「きっかけ」 | すべてのページの表示、特定のボタンのクリック |
| 変数 | タグやトリガーで使う値(何の情報を使うか) | 「材料」 | ページの URL、クリックされたリンクのテキスト |
3 つの関係
[変数]ページの URL、クリックされた要素の ID ……
↓ 条件の判定に使う
[トリガー]「クリックされた要素の ID が cta-button なら」
↓ 条件を満たしたら発火させる
[タグ]「GA4 に cta_click イベントを送る」
↑ 送る値にも変数を使う(例:link_text = クリックされたリンクのテキスト)
タグは、トリガーの条件を満たしたときに 発火(実行)します。1 つのタグに複数のトリガーを設定することも、例外の条件(ブロック トリガー)を設定することもできます。
変数の種類
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 組み込み変数 | GTM があらかじめ用意している変数。有効にするだけで使える | Page URL、Page Path、Click ID、Click Text、Form ID |
| ユーザー定義変数 | 自分で作る変数 | データレイヤーの値、定数(測定 ID)、URL のクエリ パラメータ、JavaScript の値 |
ポイント 測定 ID(
G-XXXXXXXXXX)のように、何度も使う値は、定数 の変数にしておくと便利です。値を変えるときに 1 か所を直すだけで済みます。
コンテナとワークスペース
アカウントとコンテナ
GTM は、次のような階層で構成されています。
アカウント(会社・組織の単位)
└ コンテナ(サイト・アプリの単位)
└ ワークスペース(作業の単位)
└ タグ・トリガー・変数
| 階層 | 内容 |
|---|---|
| アカウント | 会社や組織ごとに作る。1 つのアカウントに複数のコンテナを作れる |
| コンテナ | サイト(またはアプリ)ごとに作る。コンテナごとに ID(GTM-XXXXXXX)が発行され、サイトに設置するコードに含まれる |
| ワークスペース | コンテナの中で、変更を作業する場所 |
ワークスペース
ワークスペース は、変更内容を、公開するまで 下書き として保存しておく場所です。
- コンテナを作ると、「Default Workspace」が 1 つ用意される
- 複数の人が別々の変更を同時に進めたい場合は、ワークスペースを分ける
- あるワークスペースを公開すると、ほかのワークスペースには「最新のバージョンの変更を取り込む」よう表示される
注意 無料版の GTM では、同時に使えるワークスペースの数に上限があります(有料版の Tag Manager 360 では上限が緩和されます)。多くのワークスペースを作りっぱなしにせず、使い終わったら公開するか削除しましょう。
バージョン
GTM でワークスペースの変更を公開すると、その時点の設定が バージョン として保存されます。問題が起きた場合は、以前のバージョンに戻せます(次の章)。
GA4 タグの種類
GTM で GA4 を計測するときに使うタグは、主に次の 2 種類です。
| タグの種類 | 役割 | 主な設定 |
|---|---|---|
| Google タグ | GA4 の計測の土台。ページの表示(page_view)や拡張計測機能のイベントを送る | タグ ID(測定 ID)、設定パラメータ |
| GA4 イベント | 個別のイベントを GA4 に送る | 測定 ID、イベント名、イベント パラメータ |
Google タグ
Google タグ は、GA4 の計測を始めるための基本のタグです。通常、すべてのページ(Initialization - All Pages または All Pages)のトリガーで発火させます。
- 測定 ID を設定するだけで、ページの表示と拡張計測機能のイベント(スクロール、外部リンクのクリックなど)が計測される
- 「設定パラメータ」に、すべてのイベントに共通の設定を入れられる
GA4 イベント タグ
GA4 イベント のタグは、Google タグとは別に、個別のイベント を送るためのタグです。
タグの種類:Google アナリティクス:GA4 イベント
測定 ID:{{GA4 測定 ID}}(定数の変数)
イベント名:cta_click
イベント パラメータ:
link_text = {{Click Text}}
link_url = {{Click URL}}
トリガー:CTA ボタンのクリック
イベント名とパラメータの付け方は、第 3 部で学んだ命名のルールに従います。推奨イベント(generate_lead、purchase など)がある場合は、その名前とパラメータを使いましょう。
よくある質問
Q. GTM を使うと、サイトの表示は遅くなりませんか。
A. GTM のコンテナそのものは、非同期で読み込まれるため、ページの表示を大きく遅らせることは通常ありません。ただし、GTM で配信する タグの数や中身 によっては、ページが重くなります。特に、カスタム HTML のタグで大きなスクリプトを読み込む場合や、不要なタグを放置している場合は注意が必要です(この部の第 6 章)。
Q. GTM と gtag.js(Google タグの直接の設置)は、どちらを選ぶべきですか。
| 状況 | おすすめ |
|---|---|
| GA4 の基本の計測だけで、今後もイベントを追加する予定がない | gtag.js の直接の設置でも十分 |
| クリックやフォームなど、イベントを追加していきたい | GTM |
| 広告や外部のツールのタグを、複数設置する | GTM |
| サイトの HTML を、マーケティングの担当者が編集できない | GTM |
迷ったら、GTM を選んでおくと、あとから計測を増やしやすくなります。
Q. 1 つのサイトに、GTM のコンテナを複数設置してもよいですか。
A. 技術的には可能ですが、どのコンテナにどのタグがあるかがわかりにくくなり、二重計測の原因になりがちです。原則は 1 つのサイトに 1 つのコンテナ にしましょう。代理店などが別のコンテナを使いたいと言った場合も、権限を付与して同じコンテナで作業してもらうのが安全です。
Q. GTM のアカウントは、制作会社や代理店のアカウントの中に作ってもらってもよいですか。
A. おすすめしません。契約が終わったときに、コンテナの管理者の権限が自社にないと、設定を引き継げなくなることがあります。GTM のアカウントは 自社の組織で作り、外部の会社にはユーザーとして権限を付与しましょう(GA4 のアカウントと同じ考え方です。第 2 部)。
実践ワーク
自社のサイトで、GTM で管理したいタグを洗い出してみましょう。
| タグ | 目的 | 発火のタイミング(トリガー) | 使う値(変数) |
|---|---|---|---|
| GA4 Google タグ | GA4 の基本の計測 | すべてのページ | 測定 ID |
| GA4 イベント:問い合わせ | 問い合わせの成果の計測 | 問い合わせの完了 | フォームの種類 |
| Google 広告 コンバージョン | 広告の成果の計測 | 問い合わせの完了 | コンバージョン ID |
| (自社のタグを書き足す) |
表を埋めることで、「タグ・トリガー・変数」の考え方で、自社の計測を整理できます。この表は、次の章以降で、実際に GTM を設定するときの設計書として使えます。
まとめ
- GTM を使うと、サイトの HTML を直接編集せずに、管理画面からタグを追加・変更・確認・公開できる
- GTM の設定は、タグ(何をするか)・トリガー(いつするか)・変数(何の情報を使うか)の組み合わせでできている
- アカウント → コンテナ → ワークスペースの階層で管理し、公開した設定はバージョンとして残る
- GA4 では、計測の土台になる Google タグと、個別のイベントを送る GA4 イベント タグを使う
- GTM は誰でも JavaScript を追加できるため、権限と公開前の確認が重要
次の章では、GTM のコンテナを作ってサイトに設置し、GA4 の Google タグを配信する手順を学びます。