12.4 BtoB・リード獲得サイトの活用事例
この章で学ぶこと
- BtoB・リード獲得サイトで見るべき KPI
- コンテンツ マーケティング(記事・資料)の効果を評価する方法
- 問い合わせ・資料請求のフォームを改善する方法
- 営業部門と連携して、リードの質を評価する方法
見るべき KPI
BtoB の企業のサイトや、不動産・教育・人材など、問い合わせや資料請求(リード)の獲得 を目的とするサイトでは、サイトの中で売上は発生しません。サイトの役割は、質の高い見込み顧客を、営業に引き渡すこと です。
リード獲得の KPI ツリー
[KGI]ウェブ経由の受注金額
= リード数 × 商談化率 × 受注率 × 平均受注単価
[サイトの KPI]
リード数 = セッション数 × リード獲得率
├ セッション数(チャネル別、コンテンツ別)
└ リード獲得率(ページ別、フォーム別)
キーイベントの設計
BtoB のサイトでは、成果の種類が複数あることが多いので、重要度に応じて 分けて計測します。
| 成果 | イベント名の例 | 重要度 | キーイベントにするか |
|---|---|---|---|
| 問い合わせ・見積もり依頼 | generate_lead(form_id = contact) | 高い | する |
| 無料相談・デモの申し込み | generate_lead(form_id = demo) | 高い | する |
| 資料のダウンロード | generate_lead(form_id = whitepaper) | 中程度 | する |
| セミナー・ウェビナーの申し込み | sign_up など | 中程度 | する |
| メールマガジンの登録 | sign_up など | 低い | 目的による |
| 料金ページの閲覧 | page_view(料金ページ) | 検討の兆候 | しない(オーディエンスに使う) |
ポイント 成果の種類ごとに、キーイベントの値(第 7 部)を、受注への近さに応じて設定しておくと、チャネルやコンテンツの評価のときに、「件数」だけでなく「価値」で比べられるようになります。
長い検討期間を考慮する
BtoB の商材は、最初の訪問から問い合わせまで、数週間〜数か月 かかることも珍しくありません。
| 考慮すること | 対応 |
|---|---|
| 1 回の訪問では成果に至らない | ユーザー単位の指標や、アトリビューションの経路で評価する |
| 複数の人が関わる | 担当者、上司、決裁者がそれぞれサイトを見る。会社単位での把握は GA4 では難しい |
| ルックバック ウィンドウ | アトリビューションのルックバック ウィンドウ(第 7 部)を長めに設定する |
| 評価の期間 | 施策の評価は、月単位ではなく、四半期単位など長めの期間で行う |
コンテンツ マーケティングの評価
BtoB のサイトでは、ブログの記事、導入事例、ホワイトペーパー(資料)、ウェビナーなどの コンテンツ で見込み顧客を集め、問い合わせにつなげる コンテンツ マーケティング がよく行われます。
コンテンツの役割ごとに評価する
| 役割 | コンテンツの例 | 評価の指標 |
|---|---|---|
| 認知(見つけてもらう) | ノウハウ記事、用語の解説 | 新規ユーザー数、検索の表示回数、エンゲージメント率 |
| 興味・検討(理解してもらう) | 比較記事、導入事例、ホワイトペーパー | 資料のダウンロード数、ほかのページへの回遊、再訪問 |
| 行動(問い合わせてもらう) | 料金ページ、サービスの紹介、無料相談の案内 | 問い合わせ数、問い合わせ率 |
すべての記事を「問い合わせ数」だけで評価すると、認知の役割の記事は低く評価されてしまいます。
記事の問い合わせへの貢献を測る
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| ランディング ページ別のキーイベント | 記事から訪問したセッションで、問い合わせがあったか(直接の貢献) |
| 経路データ探索 | 問い合わせの前に、どの記事が見られていたか |
| セグメントの比較 | 「記事を読んだユーザー」と「読んでいないユーザー」で、問い合わせ率を比べる |
| アトリビューション | データドリブン アトリビューションで、記事を含むチャネルの間接の貢献を見る |
| 問い合わせのフォームの項目 | 「当社を知ったきっかけ」を選んでもらう |
セグメントの比較の例
導入事例のページを見たユーザー:問い合わせ率 4.2%
導入事例のページを見ていないユーザー:問い合わせ率 0.6%
→ 導入事例は、問い合わせの前の検討の段階で、重要な役割を持っている可能性がある
(ただし、もともと検討度の高い人が導入事例を見ている可能性もある)
(数値は例)
注意 上の例のような比較は、相関 を示すだけで、「導入事例を見たから問い合わせが増えた」という 因果 を証明するものではありません。因果を確かめたい場合は、導入事例への導線を一部のユーザーにだけ表示する、などの A/B テスト(この部の第 7 章)を検討しましょう。
フォーム改善
問い合わせや資料請求の フォーム は、リード獲得の最後の関門です。フォームまで来たユーザーは、検討度が高いユーザーなので、フォームでの離脱を減らすことの効果は大きくなります。
フォームの計測
| 計測 | イベント名の例 | 内容 |
|---|---|---|
| フォームの表示 | page_view(フォームのページ)、form_view | フォームを見た人の数 |
| 入力の開始 | form_start(拡張計測機能) | 入力を始めた人の数 |
| 送信の完了 | generate_lead | 送信を完了した人の数 |
| 入力エラー | form_error(独自に計測) | どの項目で、エラーが起きているか |
フォームのファネル
フォームのページの表示 1,000 人
↓ 65%
入力の開始 650 人
↓ 46%
送信の完了 300 人
(数値は例)
| 段階 | 離脱が多い場合の原因の例 |
|---|---|
| 表示 → 入力の開始 | フォームが長く見える、入力の前に迷う(何を書けばいいかわからない) |
| 入力の開始 → 完了 | 入力の項目が多い、エラーがわかりにくい、スマホで入力しにくい |
フォーム改善のチェックポイント
- 項目を減らす:営業に本当に必要な項目だけにする(あとで聞ける項目は削る)
- 必須と任意を明確に:必須の項目をわかりやすく表示し、任意の項目は減らす
- エラーをその場で表示:送信のあとではなく、入力の途中でエラーを知らせる
- スマホへの対応:入力欄の大きさ、適切なキーボード(電話番号なら数字のキーボード)
- 住所の自動入力:郵便番号から住所を入力する
- 安心感:個人情報の扱い、送信の後の流れ(いつ連絡が来るか)を書く
- 確認画面をなくす:確認画面での離脱が多い場合は、入力画面での確認に置き換える
営業との連携
リード獲得サイトの本当の成果は、リードが商談になり、受注に至ること です。GA4 だけでは、リードの 質 はわかりません。
リードの質を評価する
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 営業の評価を集める | 営業の担当者に、リードを A(すぐに商談)・B(検討中)・C(情報収集)などで評価してもらう |
| CRM と結びつける | 問い合わせの受付番号や client_id で、GA4 のデータと CRM の商談・受注のデータを結びつける(第 10 部) |
| 流入元別の商談化率 | チャネル・キャンペーン・記事ごとに、商談化率と受注金額を比べる |
| 成約のデータを GA4・広告に戻す | オフラインのコンバージョンとして、Google 広告などに取り込み、広告の最適化に使う |
流入元別の評価の例
| 流入元 | リード数 | 商談化率 | 受注数 | 受注金額 |
|---|---|---|---|---|
| Organic Search | 60 | 35% | 6 | ¥7,200,000 |
| Paid Search | 50 | 30% | 4 | ¥4,800,000 |
| Paid Social | 40 | 10% | 1 | ¥1,000,000 |
| Referral(展示会のサイトなど) | 10 | 50% | 2 | ¥3,000,000 |
(数値は例)
GA4 の「リード数」だけを見ると、Paid Social は 40 件と多く見えますが、商談化率と受注金額まで見ると、評価が大きく変わります。
ポイント マーケティングと営業で、定期的な打ち合わせ(月 1 回など)を持ち、リードの質についての情報を交換しましょう。「どんなリードが受注につながったか」の情報は、コンテンツや広告の改善に直接役立ちます。
よくある質問
Q. 問い合わせの中に、営業の電話や売り込みが多く含まれています。
A. 問い合わせのフォームが、営業の売り込みや、採用の応募などにも使われていると、リード数が実際の見込み顧客より多く見えます。フォームの「お問い合わせの種類」で分けて計測する(inquiry_type パラメータ)、営業や採用の窓口を別のフォームにする、などで、見込み顧客の問い合わせだけを数えられるようにしましょう。
Q. 資料のダウンロードと、問い合わせのどちらを重視すべきですか。
A. 両方を計測し、役割を分けて 評価しましょう。資料のダウンロードは、検討の初期の段階のリードで、数は多いが受注までの距離は遠いことが多くなります。問い合わせは、数は少ないが、受注に近いリードです。キーイベントの値を変えておくと、両方をまとめて評価するときにも、重要度の違いを反映できます。
Q. 会社の名前で、どの会社がサイトに来ているかを知りたいです。
A. GA4 では、訪れた会社の名前はわかりません。IP アドレスから企業を推定する外部のサービスもありますが、利用するときは、プライバシーの観点や、外部送信の公表の必要性を確認しましょう(第 11 部)。GA4 では、フォームで取得した情報と、CRM で結びつけるのが基本です。
Q. 展示会やセミナーなど、オフラインの施策の効果は測れますか。
A. 展示会の配布物やセミナーの資料に、UTM 付きの URL や QR コードを載せると、そこからの流入を GA4 で計測できます。また、展示会の後に名刺の情報で送るメールに UTM を付けると、展示会からのフォローの効果もわかります。
実践ワーク
自社のリード獲得のファネルを、サイトの外まで含めて書き出してみましょう。
| 段階 | 件数 | 次の段階への移行率 | データの出どころ |
|---|---|---|---|
| サイトのセッション | GA4 | ||
| フォームの表示 | GA4 | ||
| リード(問い合わせ・資料請求) | GA4 | ||
| 商談 | CRM・営業 | ||
| 受注 | CRM・営業 |
すべての段階の数値をそろえるのは、最初は難しいかもしれません。まずは、営業の担当者に、直近 3 か月のリードのうち何件が商談になり、何件が受注したかを聞くところから始めましょう。流入元ごとに分けて聞ければ、この章の「流入元別の評価の例」と同じ表が作れます。
まとめ
- リード獲得サイトの KGI は受注金額。リード数 × 商談化率 × 受注率 × 平均受注単価に分解する
- 成果の種類ごとにキーイベントを分け、重要度に応じた値を設定し、長い検討期間を考慮して評価する
- コンテンツは、認知・検討・行動の役割ごとに、それぞれに合った指標で評価する
- フォームは、表示 → 入力の開始 → 完了のファネルで離脱の場所を特定し、項目の削減やスマホへの対応で改善する
- 営業の評価や CRM のデータと結びつけて、流入元別の商談化率と受注金額で、リードの質を評価する
次の章では、メディアやブログのサイトでの活用を紹介します。